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第12回杉野十佐一賞/題「兵」
受賞者:中村みのり 第12回杉野十佐一賞大賞作品

【12点】
(天)由紀子/(人)れいこ・みのり/(佳)明・ちえみ・岸柳
兵隊が降ってきそうな曇天だ
相田みちる(山形県城西町)
 杉野十佐一賞は難しいという思いが、いつも私の頭の中にありました。しかも入選句は斬新でハッとさせられる作品ばかり。私など、とても太刀打ちできないと思いつつも毎年投句を続けてきました。しかし今年の題にはホトホト頭をかかえて、これまでで一番と言っていい程の苦吟でした。そこで先生方が、よく言われる様に題はあくまでもヒントであり、きっかけに過ぎないという言葉を思い出し、思いっきりイメージを膨らませて作句しました。今回の受賞は今でも信じられない出来事なのですが、これを機会に又、新たな気持で作句に取り組んでいきたいと思います。本当にありがとうございました。
★準賞(11点)
(地)ちえみ・岸柳/(人)明/(佳)由紀子・みのり
志願兵続く一旦コマーシャル 鳴海賢治 青森県
 
【9点】
(天)ちえみ/(秀)岸柳/(佳)明・れいこ・由紀子・みのり
環境に優しい芋で出来た兵 丸山 進 愛知県
 
【8点】
(天)明/(地)由紀子/(佳)ちえみ・岸柳
水芭蕉のしらじらしさが兵である 中西 亜 愛媛県
(地)明・みのり/(佳)れいこ・由紀子
蝉ないてうすべに色の朝の兵 岩崎眞里子 青森県
(人)ちえみ/(秀)れいこ・岸柳/(佳)由紀子
マッチ棒の先にいるのが兵隊さん 前田まえてる 青森県
 
【7点】
(天)岸柳/(秀)れいこ/(佳)由紀子・ちえみ
八月の兵隊さんをよく洗う 佐々木ええ一 香川県
(天)みのり/(秀)岸柳/(佳)明・由紀子
棒はいかがそれとも兵がいいですか ひとり静 奈良県
(人)由紀子/(佳)明・れいこ・みのり・岸柳
兵役があった時代のいぼがえる 滋野さち 青森県
(秀)明・れいこ/(佳)由紀子・ちえみ
縁側で爪を飛ばしている兵士 草地豊子 岡山県
 
【6点】
(秀)ちえみ・みのり/(佳)明・れいこ
爪楊枝たとえば兵になりなさい 草地豊子 岡山県
(秀)明・由紀子/(佳)れいこ・ちえみ
兵が見ている兵の滑り方 天谷由紀子 福井県
 
【5点】
(天)れいこ/(佳)由紀子・ちえみ
切花のように佇んでいる兵士 山本忠次郎 東京都
(人)岸柳/(佳)明・由紀子
戦場の朝に分別ゴミを出す 小島百惠 大阪府
(秀)明・由紀子/(佳)れいこ
本当の兵はやさしい水たまり 吉平一岳 長野県
(秀)岸柳/(佳)明・由紀子・ちえみ
兵隊さんのヘ ヘップバーンのヘ 中山恵子 愛知県
(秀)明/(佳)れいこ・由紀子・ちえみ
罌粟畑ここから兵士生まれます ひとり静 奈良県
 
【4点】
(地)れいこ/(佳)ちえみ
号令で兵はおのおの葉桜に 中西 亜 愛媛県
(秀)みのり/(佳)明・由紀子
ソーダ水グラスに注ぐ兵士の死 田畑 宏 和歌山県
(秀)ちえみ/(佳)れいこ・由紀子
機嫌よく立っているのは藁の兵 久場征子 富山県
(秀)由紀子/(佳)明・ちえみ
兵器庫をぐるり静かな顎の列 ひとり静 奈良県
(秀)ちえみ/(佳)れいこ・みのり
頷くと皆兵隊にされちまう 相田みちる 山形県
(佳)れいこ・ちえみ・みのり・岸柳
丘を描くって言ったじゃないの兵じゃなく ひとり静 奈良県
(佳)明・れいこ・由紀子・みのり
軍服の僕には遠い桃の村 沢田百合子 青森県
(佳)れいこ・由紀子・ちえみ・みのり
真後ろの伏兵が肩揉んでくる 高橋 樟 青森県
(佳)明・れいこ・由紀子・ちえみ
欲しいのは埴輪の兵の耳飾り 内田真理子 京都府
(佳)明・れいこ・由紀子・岸柳
落下傘すずなりなれば明日も晴れ 市川 周 東京都
 
【3点】
(秀)みのり/(佳)由紀子
ぽつぽつと兵士が消えるおもちゃ箱 斎藤早苗 青森県
(秀)みのり/(佳)岸柳
牛蛙 兵のその後を知らないか 草地豊子 岡山県
(秀)明/(佳)由紀子
三日月と芒の中を逃げる兵 小暮健一 北海道
(秀)由紀子(佳)明
散兵戦の予感じゃがいも煮え焦げる 成田 勲 青森県
(秀)れいこ/(佳)由紀子
巣つばめと徴兵制の話など 宮本夢実 長野県
(秀)岸柳/(佳)ちえみ
尊大な兵だ 梯子を降りなさい 佐藤美枝子 埼玉県
(秀)由紀子/(佳)明
腹這えば大地は兵の日の匂い 藤井北灯 福岡県
(秀)ちえみ/(佳)れいこ
兵隊の絵に顔はあっただろうか 原田否可立 愛媛県
(佳)明・由紀子・みのり
ソムリエの頭痛 歩兵がやって来る 山本忠次郎 東京都
(佳)明・由紀子・ちえみ
それは兵の静電気だつた 天谷由紀子 福井県
(佳)由紀子・ちえみ・岸柳
のらくろは戦死したって犬である 滋野さち 青森県
(佳)明・れいこ・岸柳
ほらみんな匍匐前進しています 濱山哲也 青森県
(佳)れいこ・みのり・岸柳
めし茶碗わたしの中の兵が死ぬ 普川素床 千葉県
(佳)ちえみ・みのり・岸柳
ロボットが兵になる気はないと言う 遠山あきら 滋賀県
(佳)明・れいこ・みのり
稲光わたしのなかの兵が起つ 悠とし子 北海道
(佳)明・由紀子・ちえみ
九条を彷徨うペンギンと兵士 北里深雪 青森県
(佳)ちえみ・みのり・岸柳
手を洗う戦のあとが消えるまで 戸田美佐緒 埼玉県
(佳)明・由紀子・ちえみ
代走に出たまま兵は帰らない 山本トラ夫 静岡県
(佳)れいこ・ちえみ・岸柳
台所の隅に置いてる核兵器 たなかまきこ 青森県
(佳)明・れいこ・みのり
兵に水筒 フロッピー・ディスクに蝉 中山恵子 愛知県
(佳)れいこ・みのり・岸柳
兵は生き延びて公孫樹になった 佐藤幸子 東京都
(佳)明・由紀子・岸柳
満月にひそんだ兵よ出てきなさい 鈴木逸志 宮城県
 
【2点】
エプロンをすると兵士になるわたし 守田啓子 青森県
地団駄を踏む安売りの兵の首 高橋岳水 青森県
嗚呼戦死兵の代りはすぐ来ます 畠山軍子 岩手県
「兵に告ぐ」返事はハイと言いなさい 角田古錐 青森県
ごくたまに兵士と判る人がいる 南野耕平 埼玉県
シャム猫にからまれている兵隊さん 柳 圭 愛知県
だるまさんがころんだ みんな兵隊だ 斎藤早苗 青森県
ママチャリが偵察に出て戻らない 小野五郎 青森県
胃の中で息を殺していたゲリラ 佐々木ええ一 香川県
空欄に歪んで飛んで来た兵士 柳 圭 愛知県
行進の兵のひとりが銃落す 久場征子 富山県
残る電池でドミノ倒しの兵になる 墨崎洋介 福井県
生卵脇に挟んでいる兵士 天谷由紀子 福井県
戦争に行った人には聞けぬこと 斎藤早苗 青森県
戦地でも敬老パスは使えます 浪越靖政 北海道
朝市で生兵法を買ってくる 山本トラ夫 静岡県
独裁者の口からぞろり兵が出る 小河柳女 三重県
突然の嵐はいつも兵に降る 小田原千秋 青森県
内緒だが僕にも欲しい核兵器 福士てつお 青森県
年金が消えて兵士になっていた 丸山進 愛知県
白い歯の兵は黄蝶に撃ち抜かれ 小池正博 大阪府
鼻ピアス兵隊さんのお陰です 正信寺尚邦 大阪府
伏兵はただいっしんに穴を掘る 山田ゆみ葉 京都府
兵、兵と呼ばれて枇杷はたわわなり 酒井暁美 福井県
兵だった頑ななペンだこだった 水品団石 静岡県
兵として水もボトルに詰められる 大野たけお 三重県
兵の歯が底なし沼に落ちてゆく 福力明良 岡山県
万歳の蟹を撃つのは止めなさい 鈴木逸志 宮城県
落ちてゆく椿よ兵よ顔上げよ 坂井冬子 新潟県
卵管をつぎつぎ通る兵士達 櫛引八千代 青森県
老兵は第二体操パスにする 川崎敏明 愛知県
朧月あおぐ弱卒ばかりだな 関埜艸太郎 青森県
籠城の2階の兵を持て余す 小島百惠 大阪府
 
【1点】
「月はどっち」義足の兵に聞く都会 大黒谷サチエ 青森県
アスファルトざっくり その他の兵 岩崎雪洲 青森県
いのち累累平家蛍となり果てぬ 坂本トシ 青森県
おもちゃ箱兵隊さんの骨の笛 小野善江 兵庫県
お遊戯の水兵さんはママが好き 杉山蝶子 青森県
きれいな目だった 兵隊さんの目だった 坂井冬子 新潟県
ここ職場 ワに従えよ ナは兵じゃ 井上鯛心 東京都
すすきの穂おやお隣りも兵ですか 高杉靖女 青森県
ドアからドアへ兵士は今日も透明に 岩崎眞里子 青森県
なんぼでもアメリカにある核兵器 中前棋人 静岡県
フリーター様 徴兵検査ですどうぞ 遠山あきら 滋賀県
まないたで朝の戦場切り裁く 福士富栄 青森県
ルピナスや手勢にまぜる二、三本 内田真理子 京都府
ロボットの兵に握手を教え込む 八戸むさし 青森県
一人ずつ兵士を送る朝御飯 斎藤あまね 青森県
一銭五厘が突然僕でないボクに 岩淵黙人 青森県
引き出しに親衛隊を隠し持つ 三浦ひとは 青森県
横になりたいと呟く兵の墓 高橋双葉 北海道
沖に菜の花 きみも敗残兵なのだ 葉閑女 青森県
何が何でも勝たねばならぬ 兵士です 福士富栄 青森県
夏蝶が脱走兵を追い越して 市川周 東京都
怪獣と戦う兵はアルバイト 山田侃太 和歌山県
寒昴仰ぎ老兵語らない 藤井北灯 福岡県
九条よあの少年兵は日本人 原田否可立 愛媛県
栗の花匂う 兵士は戻らない 熊谷冬鼓 青森県
勲章の私語へ老兵眼を閉じる 八嶋静波 宮城
君だって国民服はすぐ慣染む 墨崎洋介 福井県
軍服を着ると四角い肩になる 小田原千秋 青森県
敬礼は砂漠の時差にずれながら 野村辰秋 埼玉県
芸術の森に隠れた兵がいる 丸山健三 長野県
撃ち方を覚えた文字は読めないが 杉山太郎 神奈川県
国旗掲揚だんだん兵が欲しくなる 熊谷岳朗 岩手県
雑兵の手首の輪ゴムよく伸びる 熊谷冬鼓 青森県
雑兵の帽子のなかの銀やんま 北里深雪 青森県
雑兵を肥やしに赤いそばの茎 沢田百合子 青森県
私の親衛隊はポチだけで 三浦ひとは 青森県
紙おむつの母を選んだ二等兵 横山キミヱ 青森県
自衛隊か兵かあの日の蝉しぐれ 谷沢けい子 新潟県
銃に花挿して迷彩服を脱ぐ 関埜艸太郎 青森県
少年兵降り立ったのは銀河駅 大野たけお 三重
心療内科兵隊さんであふれてる 中野敦子 福島県
真相を月と兵士に問うてみよ 小暮健一 北海道
人型ロボットそのうち銃を持たされる 田鎖晴天 青森県
青きもの青きままなり兵の墓 熊谷岳朗 岩手県
先祖から兵士のままさ団子虫 斉藤幸男 兵庫県
戦って帰る女の傘の色 堤文月 青森県
戦地でも君は泣き虫だったなあ 水品団石 静岡県
戦友になろう指輪をあげるから 小野五郎 青森県
善玉と悪玉さあ い・く・さ 鳴海賢治 青森県
狙撃兵の指にさくらが降っている 中西亜 愛媛県
側溝の穴を数えてゆく兵士 大友逸星 宮城県
台所ここは兵営かも知れぬ 斎藤あまね 青森県
脱走兵が握りしめてる青い釘 八戸むさし 青森県
弾丸除けに並べる貌のない兵士 高橋岳水 青森県
敵兵を撃つため鉛筆を捨てた 杉山太郎 神奈川県
頭蓋骨骨折青い兵士です 鳴海賢治 青森県
麦を踏む兵であろうとなかろうと 斎藤あまね 青森県
八月のガラスの兵が暮れのこる 小野善江 兵庫県
美しい兵隊の足並み怖い 相川政喜 福岡県
風を吸い流れを呑んで兵になる 岩崎雪洲 青森県
復員をしたかのごとく犬迎え 濱山哲也 青森県
復員兵戦闘帽からハトを出す 墨崎洋介 福井県
兵の墓さくらは逡巡しつつ散る 進藤一車 北海道
兵士にも黄色い花は咲いたかな 前田かつ子 福井県
兵士死すテトラポッドに名を刻み 斉藤幸男 兵庫県
兵隊がずっとみて来た空の青 中野敦子 福島県
兵隊を呑みこんでから固い喉 堤文月 青森県
兵包むために国旗は大判に 畠山軍子 岩手県
平和論兵士の胸から芽がでない 佐々木かもめ 青森県
迷彩服ところどころにある疑問 たなかまきこ 青森県
夕焼けを汚した兵の手が渇く 若林柳一 新潟県
蝙蝠が飛ぶ兵隊だったこともある 酒井暁美 福井県
鮟鱇の口が女の古戦場 さざき蓬石 青森県

第12回杉野十佐一賞応募者名簿
【北海道】
大橋政良・小暮健一・進藤一車・高橋双葉・浪越靖政・引地紀代子・嶺岸柳舟・宮川芒野・悠とし子
【青森】
阿部治幸・阿保まつ・石澤はる子・石田礼子・岩崎雪洲・岩崎眞里子・岩淵黙人・内山孤遊・小田原千秋・小野公樹・小野五郎・柿崎わか子・角田古錐・風小僧・鎌田玲子・北里深雪・草野翔太・櫛引八千代・熊谷冬鼓・小寺花峯・斎藤あまね・斎藤早苗・坂本トシ・櫻庭聡・佐々木あすなろ・佐々木かもめ・さざき蓬石・沢田百合子・滋野さち・杉山蝶子・関埜艸太郎・相馬銀波・相馬豊柳・大黒谷サチエ・高杉靖女・高瀬霜石・高橋岳水・高橋けん一・高橋紅雨・高橋 樟・高橋星湖・高屋信雪・田鎖晴天・竹中偉和夫・たなかまきこ・堤 文月・鶴賀一声・傳法けい・中道文子・成田 勲・鳴海賢治・野呂呑舟・波多野五楽庵・むさし・濱山哲也・福士てつお・福士富栄・前田厚兵・前田まえてる・松山芳生・三浦蒼鬼・三浦ひとは・南山藤花・守田啓子・山本弘志・雪田如水・葉 閑女・横山キミヱ・渡邊こあき
【岩手】
加差野静浪・熊谷岳朗・鈴木南水・畠山軍子・伊藤たづ子
【宮城】
伊藤我流・大塚徳子・大友逸星・新藤孝廣・鈴木逸志・田口文世・武川影法師・ちば幸子・堤 余尽・長谷川文子・畠山惠・本村靖弘・八嶋静波・安田二郎
【山形】
相田みちる
【福島】
浦井 隆・坪内照光・中野敦子・早野昭三・山口艸花・山田寛二
【栃木】
三上博史
【埼玉】
佐藤美枝子・戸田美佐緒・野村辰秋・南野耕平
【千葉】
老沼正一・普川素床・山西酸吸
【東京】
市川周・井上鯛心・佐竹観光・佐藤幸子・播本充子・山本忠次郎
【神奈川】
荻原鹿声・杉山太郎・土屋久昭
【長野】
興津幸代・丸山健三・宮本夢実・吉平一岳
【新潟】
坂井冬子・長沼春雷・谷沢けい子・若林柳一
【富山】
久場征子
【石川】
越村智彦・藤村容子
【福井】
天谷由紀子・酒井暁美・墨崎洋介・前田かつ子
【静岡】
伊藤泰史・川路泰山・西条俊生・中前棋人・水品団石・山本トラ夫
【愛知】
神谷三八朗・川崎敏明・小嶋テル子・下田郁夫・中山恵子・袴田 華・舟橋 伸・丸山 進・柳 圭・吉川美保子
【三重】
大野たけお・小河柳女
【滋賀】
遠山あきら
【京都】
内田真理子・衣川登代・木村彦二・山田ゆみ葉
【大阪】
小池正博・小島百惠・正信寺尚邦・辻部さと子・宮前秀子
【兵庫】
植田眞佐美・小野善江・北詰とし子・頃安邦雄・斉藤幸男・西端康孝・箱木つとむ・東馬場美和子・牧野和子・松岡義満
【奈良】
田中秀貴・ひとり静・森野政利
【和歌山】
木本朱夏・田畑 宏・山田侃太
【岡山】
岡崎一也・岡田文子・木下草風・草地豊子・小林妻子・福力明良・馬屋原弘万・村木糸平
【香川】
佐々木ええ一
【愛媛】
中西亜・原田否可立・平尾忠文・除田六朗
【高知】
なみひろき
【福岡】
相川政喜・江藤一市・大庭堅司・桜井義和・城後朱美・藤井北灯
【大分】
野田清博
【宮崎】
棧 舜吉