第13回杉野十佐一賞
あいだみちる/第12回杉野十佐一賞大賞受賞者
相田みちる 選
佳作 地下街で風を知りたいバラを買う 青森県 高橋 星湖
佳作 途中下車まだ人臭い尾x押X鋓/td> 青森県 沢田百合子
佳作 太陽の真下大きな夢を組む 兵庫県 牧野 和子
佳作 下書きに沁みてる熱い日のドラマ 山形県 舟山 智恵
佳作 母さんを叱る未熟な樹の下で 青森県 横山キミヱ
佳作 傘の下ほどの自由を貰い受け 岡山県 福力 明良
佳作 ボーダーライン真下に僕の首がある 福島県 山村 綾子
佳作 ブランコを漕ぐ下界から逃げたくて 青森県 岩淵 黙人
佳作 受粉して以下同文というかたち 大阪府 井上しのぶ
佳作 ボリュームを下げてわたしを曝けだす 宮城県 八嶋 静波
佳作 下草と語り合ってる老いた牛 青森県 中道 文子
佳作 家族愛下絵に書いてある鎖 青森県 三浦ひとは
佳作 青空がポロリと見せた下心 青森県 三浦ひとは
佳作 肩書きを一つ私に下さいな 東京都 播本 充子
佳作 下がります素顔になれるところまで 奈良県 ひとり静
佳作 立たされた廊下に長い長い陰 福岡県 大庭 堅司
佳作 山積みの下の一体目を開ける 宮城県 広瀬ちえみ
佳作 焦がれ死にしたのは雪の下の蝶 青森県 滋野 さち
佳作 青空の下で干される公文書 青森県 船水 柳平
佳作 風下で噂が絡み合っている 福島県 江尻 麦秋
佳作 さよならの割符が眠る雪の下 大阪府 平井美智子
佳作 点滴の下で神の掌探してる 青森県 大黒谷サチエ
佳作 軸足が地下のマグマに気づかない 青森県 高橋 紅雨
佳作 花の下鬼も仏も座らせる 岡山県 蔵内 明子
佳作 食べごろの明日は漬物石の下 埼玉県 南野 耕平
佳作 かさぶたの下に新作落語かな 愛媛県 原田否可立
佳作 下方修正したまま秋の絵の中へ 北海道 浪越 靖政
佳作 蒸発のない足下の水溜り 神奈川県 闘句朗
佳作 少年の翼の下にあるいくさ 北海道 引地紀代子
佳作 下積みの椅子からのびる導火線 北海道 嶺岸 柳舟
佳作 脱出の縄が月から下りてくる 北海道 悠とし子
佳作 下駄の音昭和の風を連れて去り 福島県 渡辺フミ子
佳作 口下手な男泣くなと北の風 福島県 渡辺フミ子
佳作 水面下少し力んでいませんか 岡山県 福力 明良
佳作 下書きが見事で父を超えられぬ 青森県 三浦 蒼鬼
佳作 この坂を下ると地動説に着く 和歌山県 田畑 宏
佳作 地下金庫開ける 煙か風なのか 岡山県 岡崎 一也
佳作 風下で天然記念物になる 青森県 北里 深雪
佳作 下心見え隠れするボタン穴 青森県 石澤はる子
佳作 一ランク下げてゆっくり呼吸する 東京都 川名 洋子
佳作 球根を地下工場に山と積み 東京都 佐竹 観光
佳作 青空の芯をつまんで下りてゆく 和歌山県 田畑 宏
佳作 タンポポよ地雷隠していませんか 青森県 斎藤 早苗
佳作 テーブルの下に半端な闇がある 埼玉県 南野 耕平
       
秀逸1 這い上がるホッと一息つきたくて 福島県 山口チイ子
秀逸2 地下道で虹の欠けらを持て余す 青森県 大澤 香
秀逸3 忘れたい喪服は下の下の段 青森県 如月烏兎羽
秀逸4 本棚の下に隠してある淫雨 青森県 横山キミヱ
秀逸5 待ちましょう下の方から咲いてくる 滋賀県 遠山あきら
       
特選 ガラガラポン老いの判決下される 青森県 遥たまみ

『選後感』/相田みちる

 これまでは投句者の立場で杉野十佐一賞に挑んできたが今回は一転、選者として551句と対峙することとなった。「下」の題は意外に拡がりにくかったように思われた。今まで課題とどう取り組むかが自身の問題点であったが沢山の句の中からピカッと光を放つ句を向き合うかを考えてゆくと結局は広い視野を養い、日常に転がっている事柄を思慮深く非日常的な眼で見ることだと教えられた。素晴らしい作品群と出会えたことに感謝したい。

本棚の下に隠してある淫雨
 作者の深い心の底にあるものが表現されている。それを知りたくもありまた触れてはならない部分である様にも感じた。人は皆そうしたものを持ちながら生きているのだと思う。表現の巧みさに引き込まれた。

待ちましょう下の方から咲いてくる
 下の方から咲いてくるのは一体なんなのだろう。小さな希望めいた雰囲気が全体に漂っている。咲くと表現しただけで、それを具体的にしないことで、より読み手の想像力を掻き立てることとなった。

ガラガラポン老いの判決下される
 ガラガラポンと、いとも簡単に老いの判決が下される?そんなものなのか老いって・・・。今まで抱いていた老いのイメージが肩透かしを食らった様に軽いものとなった。人生もまたそんなもんだよと言っている作者の顔が浮かんでくるようだ。