第17回杉野十佐一賞
  • 第17回杉野十佐一賞ホーム
  • 徳永政二 選
  • なかはられいこ 選
  • 樋口由紀子 選
  • 広瀬ちえみ 選
  • 内田真理子 選
  • む さ し 選
【大賞(13点)】
(特)れいこ・由紀子(秀)ちえみ
ササキサンを軽くあやしてから眠る
榊 陽子(兵庫県)
 思いがけず大賞をいただき、さらにこの句でいただいたということに驚いています。
 というのも、投句した後に「なんでササキサン?」という思いが自分の中でおこり、しまったなあと思っていたのです。2か月後に再会したササキサンをしげしげと観察すると、血のつながった他人のようであり、見ず知らずのわたしのようでもありました。ササキサンはあのツンとした菊の匂いをかがせたり、耳を触らせてあげるとまもなく寝息が聞こえます。そして私は夜を揺らさないようそっと部屋を抜け出すのです。
 川柳は形のない思いに輪郭をつけ、自分を発見していく遊びだと思います。
 杉野十佐一賞は泥んこになっても叱られないこのうえない遊び場です。
 本当にありがとうございました。
【準賞(13点)】
(特)ちえみ(秀)政二・真理子(佳)れいこ・由紀子
うつせみのかるさ 芒のひかりかた     吉田 州花(青森県)
【12点】
(秀)政二・れいこ・ちえみ(佳)由紀子・真理子・むさし
バッグには折り畳式水平線 西田雅子 京都府
 
【11点】
(特)政二(秀)由紀子(佳)れいこ・ちえみ・真理子
 軽っ!と言ってみる青いあさがお 井上せい子 愛媛県
 
【9点】
(秀)ちえみ・真理子(佳)政二・れいこ・由紀子
しあわせなことにするめになれました 笹田かなえ 青森県
 
【8点】
(特)むさし(佳)政二・れいこ・ちえみ
雲になる練習ながいひとり言 北村幸子 滋賀県
 
【7点】
(秀)政二・真理子(佳)れいこ
わたくしの軽さに気付くとき 花火 木暮健一 北海道
 
【6点】
(秀)れいこ(佳)由紀子・ちえみ・真理子
モッツァレラチーズに軽く絡まれる 廣田千恵子 愛知県
(秀)政二(佳)れいこ・由紀子・ちえみ
蒟蒻は噛めば噛むほどコメディアン 岡  順 大阪府
(秀)れいこ(佳)政二・由紀子・真理子
持ち替えた時だけ軽くなる荷物 森田律子 京都府
 
【5点】
(特)真理子
アマポーラふたり一対の羽うまれ 辻嬉久子 京都府
(秀)政二(佳)ちえみ・真理子
軍艦はあらら発砲スチロール 守田啓子 青森県
(秀)むさし(佳)政二・真理子
コトンと軽い音 終ったのですね 谷口 文 京都府
(秀)むさし(佳)政二・れいこ
軽そうな方をうっかり持ち上げる 遠山あきら 滋賀県
(秀)真理子(佳)れいこ・ちえみ
座布団の下でさざ波盛り上がる 辻井 洋子 青森県
(秀)むさし(佳)れいこ・真理子
軽くなるコピーペーストされるたび 徳長怜子 徳島県
(秀)由紀子(佳)ちえみ・むさし
ポッキーが折れて軽水炉暴走 石橋芳山 島根県
(秀)むさし(佳)れいこ・ちえみ
少しずつ捨てれば羽が生えるはず きさらぎ彼句吾 青森県
 
【4点】
(秀)由紀子(佳)政二
病室のプラスチックの散蓮華 八上桐子 兵庫県
(秀)由紀子(佳)政二
にんげんの頭部にしては軽すぎる 斉藤幸男 兵庫県
(秀)むさし(佳)れいこ
ふたりだけだったねなにもなかったね 坂井冬子 新潟県
(秀)ちえみ(佳)むさし
当店では「軽い」しか置いてません 須川柊子 宮城県
(秀)れいこ(佳)政二
シーソーの片方吐息載せてみる 相田みちる 山形県
(秀)ちえみ(佳)むさし
たましいは影絵の中にいるのです 赤松ますみ 大阪府
(佳)れいこ・由紀子・真理子・むさし
浮かんでるあいだに父になりました 前 輝 青森県
(佳)れいこ・由紀子・真理子・むさし
躓いたついでに空に触れてきた 森田律子 京都府
(佳)政二・れいこ・真理子・むさし
まだ軽く昨日のしっぽ噛んでいる 谷口 文 京都府
(佳)政二・れいこ・由紀子・ちえみ
軽く雫切って 使い捨ての傘 宗村政己 北海道
 
【3点】
(秀)真理子
並木道のポストの軽い発赤 重森恒雄 滋賀県
(秀)れいこ
きくらげは軽音楽に濡れとおる 澤野優美子 北海道
(秀)由紀子
あぁふたりレタス三枚ほどの鬱 北村幸子 滋賀県
(佳)れいこ・ちえみ・真理子
お気軽にどうぞ妄想時間です 吉松澄子 愛媛県
(佳)政二・れいこ・むさし
むかしならたぶんここらで髪を切る 米山明日歌 静岡県
(佳)由紀子・真理子・むさし
軽妙なヒッチコックの二重あご 小野善江 高知県
(佳)政二・真理子・むさし
カランコロン 頭の中を歩く下駄 やまもとじろう 東京都
(佳)政二・れいこ・真理子
父という軽い借景もたされる 西田雅子 京都府
(佳)政二・れいこ・ちえみ
文鎮がいるねきっとという軽さ ひとり静 奈良県
(佳)政二・ちえみ・むさし
「ガレキ」って書いたら軽くなるのかな 斎藤早苗 青森県
(佳)政二・由紀子・むさし
天井に浮いているのはお父さん 句ノ一 静岡県
(佳)政二・れいこ・むさし
飛ばされぬように私に刺す画鋲 若山かん菜 神奈川県
(佳)政二・ちえみ・真理子
法螺貝の中でうたた寝しています 和田洋子 京都府
(佳)由紀子・ちえみ・むさし
「トンボですか」「いいえオスプレイですね」 中野敦子 福島県
(佳)政二・れいこ・ちえみ
僕はここに居るよと軽くせきをする 三上玉夫 青森県
(佳)政二・れいこ・むさし
いなくなる 葉脈だけが手に残る 藤田めぐみ 東京都
(佳)由紀子・真理子・むさし
麒麟の死かあるい句点だけ残り 西村みなみ 岡山県
(佳)政二・れいこ・真理子
泣ききって首から軽くなるあじさい 伊藤寿子 北海道
(佳)れいこ・ちえみ・むさし
軽々に踏まないでくれ僕の影 岩間啓子 北海道
(佳)れいこ・ちえみ・むさし
葉がおちてしまってからの私です 米山明日歌 静岡県
(佳)由紀子・ちえみ・むさし
軽率な白は逮捕する 石橋芳山 島根県
(佳)政二・由紀子・むさし
「ドブらしいドブでしたねェ」サラリとね 奈良一艘 青森県
(佳)由紀子・ちえみ・むさし
テーブルの上にいつもの軽い舌 悠 とし子 北海道
(佳)れいこ・ちえみ・真理子
蔓のびる軽犯罪に問いますか 鳴海賢治 青森県
 
【2点】
(佳)政二・真理子
月光が軽い順とはかぎらない 中西 亜 愛媛県
(佳)れいこ・真理子
高速を降りて暫く浮いている 句ノ一 静岡県
(佳)真理子・むさし
さよならをポストイットで告げられる 青砥和子 愛知県
(佳)れいこ・由紀子
軽はずみでしたと8Bが折れる 田岡 弘 香川県
(佳)真理子・むさし
気の利かぬ多面体です浮いてます 熊谷冬鼓 青森県
(佳)ちえみ・むさし
濁点を取ってあげるよ飛べますよ 徳長怜子 徳島県
(佳)ちえみ・むさし
軽トラで運ばれてくる懺悔室 榊 陽子 兵庫県
(佳)政二・由紀子
軽くして浮いております池の月 中川喜代子 愛知県
(佳)ちえみ・むさし
ひまわりの影が揺れてる軽い嘘 太田尚介 青森県
(佳)ちえみ・むさし
軽トラの助手席にいるアベ・マリア 木下草風 岡山県
(佳)れいこ・ちえみ
軽くめし食おうかなんて誘われる 小田原千秋 青森県
(佳)由紀子・真理子
定刻に背骨をかじる軽業師 板垣孝志 奈良県
(佳)れいこ・真理子
浮草の根っこのあたりみな野心 中村誠子 青森県
(佳)真理子・むさし
からっぽになるまで吹いているラッパ 大谷のり子 滋賀県
(佳)政二・真理子
自前です音符のような軽さです 伊藤こうか 東京都
(佳)由紀子・ちえみ
気軽に買って気楽に捨てる空気入れ 斉藤幸男 兵庫県
(佳)れいこ・真理子
国境も仔猫も軽く踏んじゃって 瀧村小奈生 愛知県
(佳)れいこ・ちえみ
笑ってはいけない事も笑っちゃう 前 輝 青森県
(佳)れいこ・ちえみ
使い勝手いいです 紙コップもぼくも �����汰暙� 青森県
(佳)れいこ・むさし
包丁を軽く握って明日のこと 田村初江 京都府
(佳)政二・むさし
さよならと軽く言わなきゃ迷っちゃう ひとは 青森県
(佳)政二・れいこ
吹かれてる軽く水気をきってから 瀧村小奈生 愛知県
(佳)政二・ちえみ
口笛を吹いて男を投げ飛ばす 須藤しんのすけ 青森県
(佳)ちえみ・真理子
軽口を叩いて月にかえります 則田 椿 青森県
(佳)真理子・むさし
呆けるってすごく軽くなるんだなあ 赤平くみこ 青森県
(佳)政二・ちえみ
軽がると言えぬ言葉を軽がると 加差野静浪 岩手県
(佳)政二・由紀子
軽そうに這っているのが私です 中野敦子 福島県
(佳)れいこ・真理子
四つ折にするには軽い氏素姓 安黒登貴枝 島根県
(佳)由紀子・むさし
いつ風になるのよ貨車の最後尾 坂井冬子 新潟県
(佳)由紀子・真理子
秋色のケサランパサランがふわり 佐々木ええ一 香川県
(佳)政二・由紀子
ストローで吸い取りきれぬ津軽弁 中山恵子 愛知県
(佳)れいこ・真理子
フェザータッチで悲しみが舞い降りる 加藤ゆみ子 神奈川県
 
【1点】
(佳)由紀子
剽軽な言葉にいっときの平和 鈴木紀子 滋賀県
(佳)政二
積み上げて充分軽くなってゆく 街中 悠 大阪府
(佳)ちえみ
軽くジャブ入れ合うふたり繋がった 伊藤寿子 北海道
(佳)由紀子
フランケンシュタインに羽毛の包帯を 中西 亜 愛媛県
(佳)由紀子
帰る日が来るまで浮いていますから 滋野さち 青森県
(佳)ちえみ
神さまも軽く夏季講習受ける 谷口 義 大阪府
(佳)由紀子
ナイロンが軽い男にしてしまう 山之内さち枝 愛媛県
(佳)政二
またいつかなんてすてきなさようなら まみどり 青森県
(佳)由紀子
軽い軽い持ち上げてみろ たかが空 須川柊子 宮城県
(佳)政二
つんつんと絡み合ってるアキアカネ 坂本トシ 青森県
(佳)由紀子
ステテコとシャツ一枚で詠む軽み 北原おさむ 愛知県
(佳)真理子
全身をゆすって軽くする命 安黒登貴枝 島根県
(佳)由紀子
軽水炉サルは一日歯をみがく 板垣孝志 奈良県
(佳)ちえみ
王様も恋もノンアルコール気分 長谷川久美子 京都府
(佳)ちえみ
ハイハイとこっちへホイホイとあっちへ 能田勝利 愛媛県
(佳)真理子
マカロンの軽さ私の小宇宙 渡邊こあき 青森県
(佳)むさし
軽卒と言われてハイと立ち上がる 角田古錐 青森県
(佳)由紀子
空を飛ぶ神さまよりもわたしが軽い 寺川弘一 大阪府
(佳)れいこ
一族の軽くはずれる秋のバス 澤野優美子 北海道
(佳)真理子
足軽の血筋 取れない藪虱 ���橋星湖 青森県
(佳)むさし
軽く手を振って逝ったね夏帽子 長谷川久美子 京都府
(佳)由紀子
軽薄な男も混じる作戦図 今村美根子 愛知県
(佳)ちえみ
軽々と担いでゆけるほどの月 久保田 紺 大阪府
(佳)真理子
凪の海身のない話打ち寄せる 中道文子 青森県
(佳)むさし
この先は未だ闇だからスキップで 則田 椿 青森県
(佳)由紀子
生きる意味三十グラム秘匿する 小野五郎 青森県
(佳)政二
適当な居場所をさがす竹の椅子 久場征子 富山県
(佳)むさし
自画像の軽い部分をマスキング まきこ 青森県
(佳)れいこ
魂を網で捕える老齢期 後藤 順 岐阜県
(佳)ちえみ
助かってみれば3gの命 藤田めぐみ 東京都
(佳)政二
明るさと軽さを産んだのはカモメ 岩崎眞里子 青森県
(佳)むさし
根拠のない軽さで段差越えてきた 熊谷冬鼓 青森県
(佳)政二
空がそらになって軽くなっている 街中 悠 大阪府
(佳)むさし
紙ヒコーキひらりと秋が着地した 木本朱夏 和歌山県
(佳)真理子
軽騎兵駈ける傘寿の走馬灯 棧 舜吉 宮崎県
(佳)れいこ
消えてゆく雲のかるさをおとがいに 辻嬉久子 京都府
(佳)むさし
徘徊の影を踏めない隠れん坊 阪井一夫 大阪府
(佳)由紀子
ほら空気入ったでしょう玉子ふりかけ 真 美 青森県
(佳)真理子
軽くなったらなったで壺の狭さかな 松本宗和 愛媛県
(佳)由紀子
核燃料プールを渡る軽業師 廣田千恵子 愛知県
(佳)むさし
雁首揃えてもまだ軽いですか 西村みなみ 岡山県
(佳)由紀子
バッタがぴょん 我が結界の鱗かな 岩崎眞里子 青森県
(佳)れいこ
よろこびごとが身近にあって浮く体 畑山美幸 滋賀県
(佳)由紀子
線香の軽さになりしうらもまた 船越洋行 岡山県
(佳)政二
軽そうに棺の中を出るあなた 丸山健三 長野県
(佳)れいこ
軽い気で幽霊になることにする 阿部治幸 青森県
(佳)むさし
バツ一の傷跡もない鼻ピアス 除田六朗 愛媛県
(佳)政二
こんなにも軽かったのねお母さん 片山美津子 滋賀県
(佳)真理子
おにやんまベッドの母を背に乗せて 滋野さち 青森県
(佳)むさし
なんだその慣れた口調のサヨナラは 斎藤早苗 青森県
(佳)政二
サクラサクラ笑った後の軽い咳 坂本清乃 青森県
(佳)むさし
軽かった赤子ムカつくことを言う 吉原信子 岡山県
(佳)由紀子
身軽になる前がソプラノの出番 安藤なみ 愛知県
(佳)政二
着飾った喋々風に飛ばされる 鈴木良二 埼玉県
(佳)れいこ
軽々と畳持つのはママの方 稲毛 寛 宮崎県
(佳)ちえみ
本気です真面目ですってぬらりひょん 井上せい子 愛媛県
(佳)ちえみ
さあお手を ここからが真空地帯 小池孝一 長野県
(佳)真理子
大方は風袋軽過ぎる柩 伊藤三十六 東京都
(佳)真理子
とっぴんしゃん指ではじいてさようなら 笹田かなえ 青森県
(佳)むさし
自己破産しました後はヨロシクネ 三浦蒼鬼 青森県
(佳)由紀子
駅ナカでキリンとゾウに軽いハグ 守田啓子 青森県
(佳)れいこ
方翼をはずして少し浮くからだ ながたまみ 愛知県
(佳)ちえみ
他事ながら年金受給者義父死亡 鳴海賢治 青森県
(佳)由紀子
軽くなれ砂糖をまぶす塩まぶす 浜 純子 京都府
(佳)政二
愛されるそれが私の軽い罪 長峯福太郎 東京都
(佳)ちえみ
笑顔ならお届けしますお気軽に 朝日弘茂 兵庫県
(佳)真理子
その雲の上にいるのは母だろう 大黒谷サチエ 青森県
(佳)由紀子
軽量を突かれた星の物語 月波与生 秋田県
(佳)政二
もう旅は終わりにしたい綿帽子 若山かん菜 神奈川県
(佳)ちえみ
トンネルを抜けたら軽い立ち眩み 小林茂子 岡山県
(佳)真理子
美しい焼け具合です仏さま 木暮健一 北海道
(佳)政二
軽快にひびく音色も大切に 田島沙和 福岡県
(佳)真理子
軽率な男が好きよ難破船 竹井紫乙 大阪府
(佳)由紀子
かろやかになってちっともこぼれない 伊藤こうか 東京都
(佳)ちえみ
ひょいとつまんであげるあなたの自尊心 相田みちる 山形県
(佳)ちえみ
おとうとの骨壷抱いて帰郷する �����汰暙� 青森県
(佳)由紀子
軽便鉄道義経も弁慶もいたロマン 棧 舜吉 宮崎県

応募者ご芳名

【北海道】
新井笑葉・伊藤寿子・岩間啓子・木暮健一・澤野優美子・進藤一車・春口倭文子・松木秀・宗村政己・悠とし子
【青森】
赤平くみこ・阿部治幸・石澤はる子・岩崎眞里子・岩淵黙人・太田尚介・小田原千秋・小野五郎・角田古錐・きさらぎ彼句吾・熊谷冬鼓・斎藤早苗・坂本勝子・坂本清乃・坂本トシ・笹田かなえ・笹田隆志・佐藤允昭・滋野さち・須藤しんのすけ・大黒谷サチエ・高杉靖女・�����汰暙弌����橋星湖・千葉かほる・辻井洋子・鶴賀一声・中道文子・中村誠子・奈良一艘・成田勲・鳴海賢治・則田椿・野呂呑舟・濱山哲也・ひとは・ひらく・前輝・松山芳生・真美・まみどり・三浦蒼鬼・三上玉夫・みつこ・南山藤花・村井規子・守田啓子・葉閑女・吉川ひとし・吉田州花・渡邊こあき・渡邊寂隆・まきこ
【岩手】
加差野静浪
【秋田】
月波与生
【宮城】
浮千草・小島文子・須川柊子・賊沢御免・武川影法師
【山形】
相田みちる・伊東マコ・片倉卯月・舟山智恵
【福島】
中野敦子
【埼玉】
小澤誠邦・鈴木良二
【千葉】
老沼正一
【東京】
飯島章友・伊藤こうか・伊藤三十六・上原稔・甲斐千春・川名洋子・船岡五郎・長峯福太郎・藤田めぐみ・右田俊郎・やまもとじろう
【神奈川】
青砥近士・阿部闘句朗・加藤ゆみ子・杉山太郎・土屋久昭・若山かん菜
【長野】
興津幸代・小池孝一・樹萄らき・中嶋安子・丸山健三
【新潟】
坂井冬子・谷沢けい子
【富山】
久場征子
【石川】
石倉多美子・藤村容子
【福井】
天谷由紀子
【岐阜】
金子秀重・後藤順
【静岡】
句ノ一・高橋正義・柳谷益弘・米山明日歌
【愛知】
青砥和子・安藤なみ・今村美根子・北原おさむ・高田桂子・瀧村小奈生・中川喜代子・中島崇子・ながたまみ・中山恵子・廣田千恵子・松長進・丸山進・水谷克行・三好光明
【三重】
小河柳女
【滋賀】
大谷のり子・片山美津子・北村幸子・重森恒雄・嶌清五郎・鈴木紀子・竹内歌子・遠山あきら・中村はるゑ・畑山美幸
【京都】
岩根彰子・北原照子・行田秀生・谷口文・田村初江・辻嬉久子・中林典子・西田雅子・長谷川久美子・浜純子・森田律子・山本知佳子・和田洋子
【大阪】
赤松ますみ・岡順・久保田・紺・阪井一夫・竹井紫乙・谷口義・寺川弘一・平井美智子・街中悠
【兵庫】
朝日弘茂・河内谷恵・木田さらん・斉藤幸男・榊陽子・東馬場美和子・前田芙巳代・三坂守・八上桐子・柳口テルヨ
【奈良】
板垣孝志・ひとり静
【和歌山】
木本朱夏・三宅保州
【島根】
安黒登貴枝・石橋芳山
【岡山】
木下草風・小林茂子・西村みなみ・福力明良・藤井智史・船越洋行・馬屋原弘万・宮崎かおる・吉原信子
【山口】
兼行幸枝
【香川】
佐々木ええ一・田岡弘
【愛媛】
井上せい子・門田澄江・中西亜・西村寛子・能田勝利・松本宗和・山之内さち枝・山本毅・除田六朗・吉松澄子
【徳島】
徳長怜子・森ヨシ子
【高知】
小野善江・桑名知華子・桑名正雄
【福岡】
大庭堅司・田島沙和・友岡由紀子
【宮崎】
稲毛寛・桟舜吉
【沖縄】
渡嘉敷唯正

計209名

徳永 政二 選(とくながせいじ・滋賀県・びわこ番傘川柳会所属)
佳作44 いなくなる 葉脈だけが手に残る 藤田めぐみ 東京都
佳作43 軽そうに這っているのが私です 中野敦子 福島県
佳作42 軽がると言えぬ言葉を軽がると 加差野静浪 岩手県
佳作41 軽快にひびく音色も大切に 田島沙和 福岡県
佳作40 もう旅は終わりにしたい綿帽子 若山かん菜 神奈川県
佳作39 愛されるそれが私の軽い罪 長峯 福太郎 東京都
佳作38 泣ききって首から軽くなるあじさい 伊藤寿子 北海道
佳作37 軽く雫切って 使い捨ての傘 宗村政己 北海道
佳作36 持ち替えた時だけ軽くなる荷物 森田律子 京都府
佳作35 さよならと軽く言わなきゃ迷っちゃう ひとは 青森県
佳作34 着飾った喋々風に飛ばされる 鈴木 良二 埼玉県
佳作33 サクラサクラ笑った後の軽い咳 坂本清乃 青森県
佳作32 こんなにも軽かったのねお母さん 片山美津子 滋賀県
佳作31 にんげんの頭部にしては軽すぎる 斉藤幸男 兵庫県
佳作30 軽そうに棺の中を出るあなた 丸山健三 長野県
佳作29 僕はここに居るよと軽くせきをする 三上玉夫 青森県
佳作28 まだ軽く昨日のしっぽ噛んでいる 谷口文 京都府
佳作27 吹かれてる軽く水気をきってから 瀧村小奈生 愛知県
佳作26 ストローで吸い取りきれぬ津軽弁 中山恵子 愛知県
佳作25 「ドブらしいドブでしたねェ」サラリとね 奈良一艘 青森県
佳作24 空がそらになって軽くなっている 街中悠 大阪府
佳作23 明るさと軽さを産んだのはカモメ 岩崎眞里子 青森県
佳作22 しあわせなことにするめになれました 笹田かなえ 青森県
佳作21 軽そうな方をうっかり持ち上げる 遠山あきら 滋賀県
佳作20 適当な居場所をさがす竹の椅子 久場征子 富山県
佳作19 文鎮がいるねきっとという軽さ ひとり静 奈良県
佳作18 「ガレキ」って書いたら軽くなるのかな 斎藤早苗 青森県
佳作17 シーソーの片方吐息載せてみる 相田みちる 山形県
佳作16 自前です音符のような軽さです 伊藤こうか 東京都
佳作15 口笛を吹いて男を投げ飛ばす 須藤しんのすけ 青森県
佳作14 病室のプラスチックの散蓮華 八上桐子 兵庫県
佳作13 父という軽い借景もたされる 西田雅子 京都府
佳作12 法螺貝の中でうたた寝しています 和田洋子 京都府
佳作11 つんつんと絡み合ってるアキアカネ 坂本トシ 青森県
佳作10 天井に浮いているのはお父さん 句ノ一 静岡県
佳作9 またいつかなんてすてきなさようなら まみどり 青森県
佳作8 雲になる練習ながいひとり言 北村幸子 滋賀県
佳作7 むかしならたぶんここらで髪を切る 米山明日歌 静岡県
佳作6 飛ばされぬように私に刺す画鋲 若山かん菜 神奈川県
佳作5 軽くして浮いております池の月 中川喜代子 愛知県
佳作4 カランコロン 頭の中を歩く下駄 やまもとじろう 東京都
佳作3 コトンと軽い音 終ったのですね 谷口文 京都府
佳作2 月光が軽い順とはかぎらない 中西亜 愛媛県
佳作1 積み上げて充分軽くなってゆく 街中悠 大阪府
       
秀逸5 バッグには折り畳式水平線 西田雅子 京都府
秀逸4 うつせみのかるさ 芒のひかりかた 吉田州花 青森県
秀逸3 蒟蒻は噛めば噛むほどコメディアン 岡  順 大阪府
秀逸2 わたくしの軽さに気付くとき 花火 木暮健一 北海道
秀逸1 軍艦はあらら発砲スチロール 守田啓子 青森県
       
特選  軽っ!と言ってみる青いあさがお 井上 せい子 愛媛県

選評

 今回、題が「軽い」ではなく「軽」であったためか、題を詠み込まない句がたくさんあった。それぞれの工夫があってのことなので、題をこなしているかどうかはあまりこだわらない方がいいのではないか、新鮮でいい句であればそれでいいのではないかと思いながら選をさせていただいた。
 誌上句会の選は当日句会の選とは少し違うようだ。誌上句会は何度も読むことになるので、作りすぎた句を外したり、見落としそうな味わいのある句を拾ったりする。当日句会の句がどうかと問われている現在、いい句を残す方法として、誌上句会の役割は大きいと思う。
 尚、欲を言えば、題詠より雑詠、二句よりも三句と出句数の多い方が、より新鮮で自由な表現が生まれるのではないかと思う。

軽っ!と言ってみる青いあさがお
 あさがおの重さ軽さをテーマに書かれているところが新鮮でおもしろい。また「青い」がいい。そして「言ってみる」をあさがお自身の言葉とすると、その軽さを肯定しているように読め、書き方も含めて心地よい。

軍艦はあらら発砲スチロール
 なんと言っても「あらら」である。つなぐ役割として絶妙である。川柳としての言葉の力を噛みしめている。

わたくしの軽さに気付くとき 花火
 自分自身の大きさ、はかなさを「花火」で見事に表現している。

蒟蒻は噛めば噛むほどコメディアン
 コメディアンを感じるほど蒟蒻を噛んだことはないが、納得するニュアンスである。

うつせみのかるさ 芒のひかりかた
 芒にこだわっている僕にとっては「ひかりかた」に作者の客観を感じうれしくなる。

バッグには折り畳式水平線
 「水平線」にはやはり震災を思うが、折り畳むという発想に文句なしである。

なかはら れいこ 選(なかはられいこ・岐阜県・ねじまき句会所属)
佳作44 蒟蒻は噛めば噛むほどコメディアン 岡  順 大阪府
佳作43 躓いたついでに空に触れてきた 森田律子 京都府
佳作42 蔓のびる軽犯罪に問いますか 鳴海賢治 青森県
佳作41 ふたりだけだったねなにもなかったね 坂井冬子 新潟県
佳作40 葉がおちてしまってからの私です 米山明日歌 静岡県
佳作39 少しずつ捨てれば羽が生えるはず きさらぎ彼句吾 青森県
佳作38 まだ軽く昨日のしっぽ噛んでいる 谷口文 京都府
佳作37 方翼をはずして少し浮くからだ ながた まみ 愛知県
佳作36 軽そうな方をうっかり持ち上げる 遠山あきら 滋賀県
佳作35 しあわせなことにするめになれました 笹田かなえ 青森県
佳作34 軽々と畳持つのはママの方 稲毛寛 宮崎県
佳作33 フェザータッチで悲しみが舞い降りる 加藤ゆみ子 神奈川県
佳作32 四つ折にするには軽い氏素姓 安黒登貴枝 島根県
佳作31 軽い気で幽霊になることにする 阿部治幸 青森県
佳作30 飛ばされぬように私に刺す画鋲 若山かん菜 神奈川県
佳作29 よろこびごとが身近にあって浮く体 畑山美幸 滋賀県
佳作28 泣ききって首から軽くなるあじさい 伊藤寿子 北海道
佳作27 包丁を軽く握って明日のこと 田村初江 京都府
佳作26 僕はここに居るよと軽くせきをする 三上玉夫 青森県
佳作25 消えてゆく雲のかるさをおとがいに 辻嬉久子 京都府
佳作24 軽く雫切って 使い捨ての傘 宗村政己 北海道
佳作23 笑ってはいけない事も笑っちゃう 前輝 青森県
佳作22 父という軽い借景もたされる 西田雅子 京都府
佳作21 魂を網で捕える老齢期 後藤 順 岐阜県
佳作20 吹かれてる軽く水気をきってから 瀧村小奈生 愛知県
佳作19 わたくしの軽さに気付くとき 花火 木暮健一 北海道
佳作18 浮草の根っこのあたりみな野心 中村誠子 青森県
佳作17 一族の軽くはずれる秋のバス 澤野 優美子 北海道
佳作16 うつせみのかるさ 芒のひかりかた 吉田州花 青森県
佳作15 軽々に踏まないでくれ僕の影 岩間啓子 北海道
佳作14 いなくなる 葉脈だけが手に残る 藤田めぐみ 東京都
佳作13 浮かんでるあいだに父になりました 前輝 青森県
佳作12 軽くなるコピーペーストされるたび 徳長怜子 徳島県
佳作11 国境も仔猫も軽く踏んじゃって 瀧村小奈生 愛知県
佳作10  軽っ!と言ってみる青いあさがお 井上 せい子 愛媛県
佳作9 文鎮がいるねきっとという軽さ ひとり静 奈良県
佳作8 軽くめし食おうかなんて誘われる 小田原千秋 青森県
佳作7 むかしならたぶんここらで髪を切る 米山明日歌 静岡県
佳作6 高速を降りて暫く浮いている 句ノ一 静岡県
佳作5 雲になる練習ながいひとり言 北村幸子 滋賀県
佳作4 使い勝手いいです 紙コップもぼくも �����汰暙� 青森県
佳作3 座布団の下でさざ波盛り上がる 辻井 洋子 青森県
佳作2 軽はずみでしたと8Bが折れる 田岡 弘 香川県
佳作1 お気軽にどうぞ妄想時間です 吉松澄子 愛媛県
       
秀逸5 シーソーの片方吐息載せてみる 相田みちる 山形県
秀逸4 持ち替えた時だけ軽くなる荷物 森田律子 京都府
秀逸3 バッグには折り畳式水平線 西田雅子 京都府
秀逸2 きくらげは軽音楽に濡れとおる 澤野 優美子 北海道
秀逸1 モッツァレラチーズに軽く絡まれる 廣田千恵子 愛知県
       
特選 ササキサンを軽くあやしてから眠る 榊 陽子 兵庫県

選評

 ササキサンを軽くあやしてから眠る

 文句なしで特選でいただいた。
 しょっぱなから「ササキサン」という上五に瞬殺された。だってササキサンだよ、ササキサン! なんだこれは。
 人名か、薬の名前か? 人名であれば、佐々木家の妻が夫を「軽くあやして眠る」のか?作者にはササキサンと呼ばれる日常があって、人様向けのササキサンを「軽くあやしてから眠る」のか?
 安らかに眠るために、あやさねばならぬものが気持ちの中に存在する日は誰にでもある。それは黒々とした悪意だったり、叶わぬ望みだったり、底知れぬ悲しみだったり、いったん暴れだすと手に負えないもの。理性では御しきれぬ感情に対する不安のようなもの。そうした名づけようのない、モヤモヤした気持ちのしこりのようなものを作者は「ササキサン」と名づけたのではないだろうか。個人的にはこの解釈がいちばん気に入っている。作者がササキさんであろうがなかろうが。「軽くあやす」という処し方も小粋で素敵。
 秀句5句については「モッツァレラチーズ」の、いかにも絡んできそうな音の面白さ。「きくらげ」と「軽音楽」の詩的な出会い。「折り折り畳式水平線」の時代感覚。「荷物」の良質な地味さ。「吐息」の感覚の繊細さ。といったそれぞれの良さが十分に生かされた作品だと思う。

樋口 由紀子 選(ひぐちゆきこ・兵庫県・MANO所属)
佳作44 軽便鉄道義経も弁慶もいたロマン 棧 舜吉 宮崎県
佳作43 テーブルの上にいつもの軽い舌 悠 とし子 北海道
佳作42 かろやかになってちっともこぼれない 伊藤こうか 東京都
佳作41 持ち替えた時だけ軽くなる荷物 森田律子 京都府
佳作40 軽量を突かれた星の物語 月波与生 秋田県
佳作39 軽くなれ砂糖をまぶす塩まぶす 浜 純子 京都府
佳作38 天井に浮いているのはお父さん 句ノ一 静岡県
佳作37 駅ナカでキリンとゾウに軽いハグ 守田啓子 青森県
佳作36 ストローで吸い取りきれぬ津軽弁 中山恵子 愛知県
佳作35 定刻に背骨をかじる軽業師 板垣孝志 奈良県
佳作34 身軽になる前がソプラノの出番 安藤なみ 愛知県
佳作33 いつ風になるのよ貨車の最後尾 坂井冬子 新潟県
佳作32 気軽に買って気楽に捨てる空気入れ 斉藤幸男 兵庫県
佳作31 「ドブらしいドブでしたねェ」サラリとね 奈良一艘 青森県
佳作30 線香の軽さになりしうらもまた 船越洋行 岡山県
佳作29 バッタがぴょん 我が結界の鱗かな 岩崎眞里子 青森県
佳作28 核燃料プールを渡る軽業師 廣田千恵子 愛知県
佳作27 軽くして浮いております池の月 中川喜代子 愛知県
佳作26 ほら空気入ったでしょう玉子ふりかけ 真 美 青森県
佳作25 バッグには折り畳式水平線 西田雅子 京都府
佳作24 麒麟の死かあるい句点だけ残り 西村みなみ 岡山県
佳作23 軽く雫切って 使い捨ての傘 宗村政己 北海道
佳作22 うつせみのかるさ 芒のひかりかた 吉田州花 青森県
佳作21 軽率な白は逮捕する 石橋芳山 島根県
佳作20 生きる意味三十グラム秘匿する 小野五郎 青森県
佳作19 軽はずみでしたと8Bが折れる 田岡 弘 香川県
佳作18 軽薄な男も混じる作戦図 今村美根子 愛知県
佳作17 空を飛ぶ神さまよりもわたしが軽い 寺川弘一 大阪府
佳作16 秋色のケサランパサランがふわり 佐々木ええ一 香川県
佳作15 躓いたついでに空に触れてきた 森田律子 京都府
佳作14 軽妙なヒッチコックの二重あご 小野善江 高知県
佳作13 軽水炉サルは一日歯をみがく 板垣孝志 奈良県
佳作12 ステテコとシャツ一枚で詠む軽み 北原おさむ 愛知県
佳作11 軽そうに這っているのが私です 中野敦子 福島県
佳作10 軽い軽い持ち上げてみろ たかが空 須川柊子 宮城県
佳作9 浮かんでるあいだに父になりました 前 輝 青森県
佳作8 ナイロンが軽い男にしてしまう 山之内さち枝 愛媛県
佳作7 帰る日が来るまで浮いていますから 滋野さち 青森県
佳作6 モッツァレラチーズに軽く絡まれる 廣田千恵子 愛知県
佳作5 フランケンシュタインに羽毛の包帯を 中西亜 愛媛県
佳作4 「トンボですか」「いいえオスプレイですね」 中野敦子 福島県
佳作3 蒟蒻は噛めば噛むほどコメディアン 岡  順 大阪府
佳作2 しあわせなことにするめになれました 笹田かなえ 青森県
佳作1 剽軽な言葉にいっときの平和 鈴木紀子 滋賀県
       
秀逸5 あぁふたりレタス三枚ほどの鬱 北村幸子 滋賀県
秀逸4 ポッキーが折れて軽水炉暴走 石橋芳山 島根県
秀逸3 軽っ!と言ってみる青いあさがお 井上せい子 愛媛県
秀逸2 にんげんの頭部にしては軽すぎる 斉藤幸男 兵庫県
秀逸1 病室のプラスチックの散蓮華 八上桐子 兵庫県
       
特選 ササキサンを軽くあやしてから眠る 榊 陽子 兵庫県

選評

 「わかり急ぐ」のが日本人の悪い癖だと言ったのは精神科医で作家のなだいなださんだっただろうか。書き急ぐのは川柳人の癖なのかもしれないと、集句を読んでそう思った。手っ取り早くわかってもらおう、共感してもらうおうと、そこにある言葉がそこにあるままに使っているものが多かった。しかし、急ぐ必要などはないはずである。だって、川柳は文芸である。急いでしまうと言葉の持っているおもしろさが逃げていってしまう。皮肉にも「軽」という兼題で作品が少々軽くなってしまったような印象を受けた。

ササキサンを軽くあやしてから眠る

 「ササキサン」が謎である。名字は普通は漢字で書く。それをわざとカタカナ表記にしている。一体誰なのだ。身内なのだろうか。他人なのだろうか。それとももう一人の自分なのだろうか、といろいろと考えてみた。だれを当てはめてみても話は通じて、生きているということの物語は成立する。人と人との関係の微妙なアヤをついている。「軽くあやしてから眠る」と組み合わせられることによって、カタカナ表記の「ササキサン」にエッジが利いた。

病室のプラスチックの散蓮華

 「散蓮華」とは散った蓮華の花弁に似た形の匙である。もともとは陶製である。しかし、病室では実用的にプラスチックのものが使われる。茶碗もお皿もコップもである。人間がだんだんと軽く扱われていくと作者は思ったのだろう。「散蓮華」というたいそうな名前がついているにも関わらず、その匙は軽い。

にんげんの頭部にしては軽すぎる

 これも人について考えさせられる一句。それでは一体どれくらいの重さだったら妥当なのだろうか。虚の状況設置がうまい。
 特選、秀逸に選んだ句はそれぞれに諧謔味がある。
広瀬 ちえみ 選(ひろせちえみ・宮城県・杜人 所属)
佳作44 葉がおちてしまってからの私です 米山明日歌 静岡県
佳作43 おとうとの骨壷抱いて帰郷する �����汰暙� 青森県
佳作42 ひょいとつまんであげるあなたの自尊心 相田みちる 山形県
佳作41 使い勝手いいです 紙コップもぼくも �����汰暙� 青森県
佳作40 トンネルを抜けたら軽い立ち眩み 小林茂子 岡山県
佳作39 笑顔ならお届けしますお気軽に 朝日弘茂 兵庫県
佳作38 他事ながら年金受給者義父死亡 鳴海賢治 青森県
佳作37 軽率な白は逮捕する 石橋芳山 島根県
佳作36 軽く雫切って 使い捨ての傘 宗村政己 北海道
佳作35 さあお手を ここからが真空地帯 小池孝一 長野県
佳作34 本気です真面目ですってぬらりひょん 井上せい子 愛媛県
佳作33 モッツァレラチーズに軽く絡まれる 廣田千恵子 愛知県
佳作32 口笛を吹いて男を投げ飛ばす 須藤しんのすけ 青森県
佳作31 少しずつ捨てれば羽が生えるはず きさらぎ彼句吾 青森県
佳作30 軽々に踏まないでくれ僕の影 岩間啓子 北海道
佳作29 蔓のびる軽犯罪に問いますか 鳴海賢治 青森県
佳作28 軽くめし食おうかなんて誘われる 小田原千秋 青森県
佳作27 濁点を取ってあげるよ飛べますよ 徳長怜子 徳島県
佳作26 法螺貝の中でうたた寝しています 和田洋子 京都府
佳作25 「トンボですか」「いいえオスプレイですね」 中野敦子 福島県
佳作24 「ガレキ」って書いたら軽くなるのかな 斎藤早苗 青森県
佳作23 雲になる練習ながいひとり言 北村幸子 滋賀県
佳作22 助かってみれば3gの命 藤田めぐみ 東京都
佳作21 テーブルの上にいつもの軽い舌 悠 とし子 北海道
佳作20 笑ってはいけない事も笑っちゃう 前 輝 青森県
佳作19 蒟蒻は噛めば噛むほどコメディアン 岡 順 大阪府
佳作18 軽々と担いでゆけるほどの月 久保田紺 大阪府
佳作17 ひまわりの影が揺れてる軽い嘘 太田尚介 青森県
佳作16 お気軽にどうぞ妄想時間です 吉松澄子 愛媛県
佳作15 ハイハイとこっちへホイホイとあっちへ 能田勝利 愛媛県
佳作14 王様も恋もノンアルコール気分 長谷川久美子 京都府
佳作13  軽っ!と言ってみる青いあさがお 井上 せい子 愛媛県
佳作12 文鎮がいるねきっとという軽さ ひとり静 奈良県
佳作11 僕はここに居るよと軽くせきをする 三上玉夫 青森県
佳作10 軽がると言えぬ言葉を軽がると 加差野静浪 岩手県
佳作9 気軽に買って気楽に捨てる空気入れ 斉藤幸男 兵庫県
佳作8 軽トラの助手席にいるアベ・マリア 木下草風 岡山県
佳作7 神さまも軽く夏季講習受ける 谷口義 大阪府
佳作6 軽口を叩いて月にかえります 則田椿 青森県
佳作5 ポッキーが折れて軽水炉暴走 石橋芳山 島根県
佳作4 軍艦はあらら発砲スチロール 守田啓子 青森県
佳作3 軽トラで運ばれてくる懺悔室 榊 陽子 兵庫県
佳作2 軽くジャブ入れ合うふたり繋がった 伊藤寿子 北海道
佳作1 座布団の下でさざ波盛り上がる 辻井洋子 青森県
       
秀逸5 たましいは影絵の中にいるのです 赤松ますみ 大阪府
秀逸4 しあわせなことにするめになれました 笹田かなえ 青森県
秀逸3 当店では「軽い」しか置いてません 須川柊子 宮城県
秀逸2 ササキサンを軽くあやしてから眠る 榊 陽子 兵庫県
秀逸1 バッグには折り畳式水平線 西田雅子 京都府
       
特選 うつせみのかるさ 芒のひかりかた 吉田州花 青森県

選評

 題のとおり軽い作品が多かったように思う。では、重い作品がいいのかというとそうでもない。軽いなかに重いものが沈んでいる作品、を期待していたのである。

バッグには折り畳式水平線
ササキサンを軽くあやしてから眠る
当店では「軽い」しか置いてません
しあわせなことにするめになれました
たましいは影絵の中にいるのです

 秀逸に選んだ作品は、偶然にも「コト」から発想したものになった。出来事や行為のなかに「軽い」を見つけ、「折り畳式水平線」「ササキサン」「『軽い』しか」と少しひねってみる。
それに反して特選は

うつせみのかるさ 芒のひかりかた

 情景やモノをそっと置いたような作品である。
 落ち葉を掃いていたら、うす茶色のプラスチックのような半透明の蝉の抜け殻を見つけた。この中にどうやって羽をたたんで入っていたのだろう。晩秋の芒は晴れやかに白く光っている。
 この作品を読んで、情景やモノはただ黙ってそこにあるのではなく、多くのものを語るのだと思った。生命の激しさを含んだ静けさがある。しかし、作者は「人間も同じ軽いものですよ」などと言わない。「ひかりかた」にかすかに気持ちが揺らめいている。

内田 真理子 選(うちだ まりこ・京都府・第16回杉野十佐一賞受賞)
佳作44 秋色のケサランパサランがふわり 佐々木ええ一 香川県
佳作43 軽口を叩いて月にかえります 則田椿 青森県
佳作42 軽率な男が好きよ難破船 竹井 紫乙 大阪府
佳作41 美しい焼け具合です仏さま 木暮健一 北海道
佳作40 その雲の上にいるのは母だろう 大黒谷サチエ 青森県
佳作39 呆けるってすごく軽くなるんだなあ 赤平くみこ 青森県
佳作38 フェザータッチで悲しみが舞い降りる 加藤ゆみ子 神奈川県
佳作37 とっぴんしゃん指ではじいてさようなら 笹田かなえ 青森県
佳作36 大方は風袋軽過ぎる柩 伊藤三十六 東京都
佳作35 蔓のびる軽犯罪に問いますか 鳴海賢治 青森県
佳作34 浮かんでるあいだに父になりました 前輝 青森県
佳作33 おにやんまベッドの母を背に乗せて 滋野さち 青森県
佳作32 国境も仔猫も軽く踏んじゃって 瀧村小奈生 愛知県
佳作31  軽っ!と言ってみる青いあさがお 井上 せい子 愛媛県
佳作30 バッグには折り畳式水平線 西田雅子 京都府
佳作29 からっぽになるまで吹いているラッパ 大谷のり子 滋賀県
佳作28 軽くなったらなったで壺の狭さかな 松本宗和 愛媛県
佳作27 持ち替えた時だけ軽くなる荷物 森田律子 京都府
佳作26 気の利かぬ多面体です浮いてます 熊谷冬鼓 青森県
佳作25 軽騎兵駈ける傘寿の走馬灯 棧舜吉 宮崎県
佳作24 自前です音符のような軽さです 伊藤こうか 東京都
佳作23 四つ折にするには軽い氏素姓 安黒登貴枝 島根県
佳作22 モッツァレラチーズに軽く絡まれる 廣田千恵子 愛知県
佳作21 カランコロン 頭の中を歩く下駄 やまもとじろう 東京都
佳作20 凪の海身のない話打ち寄せる 中道文子 青森県
佳作19 浮草の根っこのあたりみな野心 中村誠子 青森県
佳作18 足軽の血筋 取れない藪虱 ���橋星湖 青森県
佳作17 法螺貝の中でうたた寝しています 和田洋子 京都府
佳作16 マカロンの軽さ私の小宇宙 渡邊こあき 青森県
佳作15 さよならをポストイットで告げられる 青砥和子 愛知県
佳作14 躓いたついでに空に触れてきた 森田律子 京都府
佳作13 全身をゆすって軽くする命 安黒登貴枝 島根県
佳作12 コトンと軽い音 終ったのですね 谷口文 京都府
佳作11 泣ききって首から軽くなるあじさい 伊藤寿子 北海道
佳作10 お気軽にどうぞ妄想時間です 吉松澄子 愛媛県
佳作9 まだ軽く昨日のしっぽ噛んでいる 谷口文 京都府
佳作8 軽妙なヒッチコックの二重あご 小野 善江 高知県
佳作7 軍艦はあらら発砲スチロール 守田啓子 青森県
佳作6 麒麟の死かあるい句点だけ残り 西村みなみ 岡山県
佳作5 高速を降りて暫く浮いている 句ノ一 静岡県
佳作4 軽くなるコピーペーストされるたび 徳長怜子 徳島県
佳作3 月光が軽い順とはかぎらない 中西亜 愛媛県
佳作2 定刻に背骨をかじる軽業師 板垣孝志 奈良県
佳作1 父という軽い借景もたされる 西田雅子 京都府
       
秀逸5 しあわせなことにするめになれました 笹田かなえ 青森県
秀逸4 座布団の下でさざ波盛り上がる 辻井 洋子 青森県
秀逸3 わたくしの軽さに気付くとき 花火 木暮健一 北海道
秀逸2 並木道のポストの軽い発赤 重森恒雄 滋賀県
秀逸1 うつせみのかるさ 芒のひかりかた 吉田州花 青森県
       
特選 アマポーラふたり一対の羽うまれ 辻嬉久子 京都府

選評

アマポーラふたり一対の羽うまれ

 映画やCMでよく耳にする、甘くせつない 旋律の「アマポーラ」。
 アマポーラとはスペイン語のひなげしの花、歌詞の雛罌粟は恋人を意味するという。花びらのように薄い一対の羽に、シャガールの空に抱き合う恋人たちの絵が重なった。かろやかな羽のように浮かんでいられる恋人たちの時間は短い。そのふたりの刹那を美しいと思った。

うつせみのかるさ 芒のひかりかた

 夏果ての空蝉、秋の終わりの芒原。からから風に転がる抜殻も秋風になびく芒もやがては風に散り、地に還る。
 折しも旅先の信州で一面の芒原を観た。
 白く波打つ芒原は突き抜けて明るく、終焉のなかの新たな息吹の輪廻を感じた。
ひらがな表記中の「芒」が光る。

並木道のポストの軽い発赤

 通常ポストは赤い。その赤いポストの軽い発赤とは。並木道は歩いてきた過去、これからの未来。並木道の一本に置かれたポストにぽっと点る、発熱にも似た一通の手紙。

わたくしの軽さに気付くとき 花火

 自身の存在の軽さを意識した瞬間の心もとなさ。それは夜空にひろがる花火のように儚く、そのあとの深い闇を思わせる。心象風景としての花火が切なく伝わってきた。
 
 座布団の下のさざ波の軽い悪意、するめになれたことをしあわせだと被虐的に言い切るするめのノーテンキさ。なぜなぜ、の疑問符びっしりの句にこころ惹かれた。
 軽いという題に反して、多かった棺や骨などの重い句語もしらじら軽さを帯び、父や母も追憶の彼方でゆっくり軽くなってゆく。
 精一杯の選をさせて頂きました。このような機会を貰えたことのしあわせを思います。

む さ し 選(むさし・青森県・おかじょうき川柳社代表)
佳作44 まだ軽く昨日のしっぽ噛んでいる 谷口 文 京都府
佳作43 軽々に踏まないでくれ僕の影 岩間啓子 北海道
佳作42 麒麟の死かあるい句点だけ残り 西村みなみ 岡山県
佳作41 たましいは影絵の中にいるのです 赤松ますみ 大阪府
佳作40 テーブルの上にいつもの軽い舌 悠 とし子 北海道
佳作39 バッグには折り畳式水平線 西田雅子 京都府
佳作38 当店では「軽い」しか置いてません 須川柊子 宮城県
佳作37 自己破産しました後はヨロシクネ 三浦蒼鬼 青森県
佳作36 「ドブらしいドブでしたねェ」サラリとね 奈良一艘 青森県
佳作35 ポッキーが折れて軽水炉暴走 石橋芳山 島根県
佳作34 軽かった赤子ムカつくことを言う 吉原信子 岡山県
佳作33 なんだその慣れた口調のサヨナラは 斎藤早苗 青森県
佳作32 バツ一の傷跡もない鼻ピアス 除田六朗 愛媛県
佳作31 軽率な白は逮捕する 石橋芳山 島根県
佳作30 「トンボですか」「いいえオスプレイですね」 中野敦子 福島県
佳作29 雁首揃えてもまだ軽いですか 西村みなみ 岡山県
佳作28 軽トラで運ばれてくる懺悔室 榊 陽子 兵庫県
佳作27 軽トラの助手席にいるアベ・マリア 木下草風 岡山県
佳作26 徘徊の影を踏めない隠れん坊 阪井一夫 大阪府
佳作25 紙ヒコーキひらりと秋が着地した 木本朱夏 和歌山県
佳作24 根拠のない軽さで段差越えてきた 熊谷冬鼓 青森県
佳作23 いつ風になるのよ貨車の最後尾 坂井冬子 新潟県
佳作22 浮かんでるあいだに父になりました 前 輝 青森県
佳作21 自画像の軽い部分をマスキング まきこ 青森県
佳作20 この先は未だ闇だからスキップで 則田 椿 青森県
佳作19 包丁を軽く握って明日のこと 田村初江 京都府
佳作18 軽く手を振って逝ったね夏帽子 長谷川久美子 京都府
佳作17 軽卒と言われてハイと立ち上がる 角田古錐 青森県
佳作16 ひまわりの影が揺れてる軽い嘘 太田尚介 青森県
佳作15 飛ばされぬように私に刺す画鋲 若山かん菜 神奈川県
佳作14 むかしならたぶんここらで髪を切る 米山明日歌 静岡県
佳作13 呆けるってすごく軽くなるんだなあ 赤平くみこ 青森県
佳作12 さよならと軽く言わなきゃ迷っちゃう ひとは 青森県
佳作11 いなくなる 葉脈だけが手に残る 藤田めぐみ 東京都
佳作10 からっぽになるまで吹いているラッパ 大谷のり子 滋賀県
佳作9 躓いたついでに空に触れてきた 森田律子 京都府
佳作8 軽妙なヒッチコックの二重あご 小野善江 高知県
佳作7 カランコロン 頭の中を歩く下駄 やまもとじろう 東京都
佳作6 「ガレキ」って書いたら軽くなるのかな 斎藤早苗 青森県
佳作5 さよならをポストイットで告げられる 青砥和子 愛知県
佳作4 葉がおちてしまってからの私です 米山明日歌 静岡県
佳作3 濁点を取ってあげるよ飛べますよ 徳長怜子 徳島県
佳作2 天井に浮いているのはお父さん 句ノ一 静岡県
佳作1 気の利かぬ多面体です浮いてます 熊谷冬鼓 青森県
       
秀逸5 少しずつ捨てれば羽が生えるはず きさらぎ彼句吾 青森県
秀逸4 軽くなるコピーペーストされるたび 徳長怜子 徳島県
秀逸3 軽そうな方をうっかり持ち上げる 遠山あきら 滋賀県
秀逸2 ふたりだけだったねなにもなかったね 坂井冬子 新潟県
秀逸1 コトンと軽い音 終ったのですね 谷口 文 京都府
       
特選 雲になる練習ながいひとり言 北村幸子 滋賀県

選評

 杉野十佐一賞はこれまで1人3句の応募で続けて来ましたが、今回から1人2句とさせていただきました。
 応募総数418句、209人という多くの方々にご応募いただき深く感謝しています。

 選は選者が試される苦しいものであるが、ある意味では楽しい。
 作者がどんな考え方を持っているかにそれとなく触れることができるし、上質のドラマを自分なりに見つけ出すことができる。
 そんなことを思いながら応募句と向き合い、最終的に次の6句を特選候補とした。

1 コトンと軽い音 終ったのですね
2 軽くなるコピーペーストされるたび
3 軽そうな方をうっかり持ち上げる
4 ふたりだけだったねなにもなかったね
5 雲になる練習ながいひとり言
6 少しずつ捨てれば羽が生えるはず

1 何が終わったのか分からないところが問題だが、読者を惹きつけるものがある。誰かの人生とか手術とかが終わったのかも。
2 「コピ-ペースト」というパソコンの作業をうまく人生に重ねているおもしろさがあり、尚かつ読者にストレスを感じさせない。
3 どこかで見たことがありそうでもあるが単純な構造ながら人間の心理をうまく掴んでいる。
4 題との関連が希薄な感じがする軽いタッチの自由詠だが不思議なドラマを作り上げている。
5 応募句の中で発想が飛び抜けておもしろい。
6 「捨てる」というマイナスを「生える」のプラスに転じる構成と題を読み込まない作りに惹かれる。

 特選 雲になる練習ながいひとり言

 作者はたぶん青空にぽっかり浮かぶ白い雲にきっといつかはなってやろうと思っている。上5の「雲になる」は特異なフレーズではないが、それを 「雲になる練習」まで引き上げるのは簡単でなかったはず。雲になる練習方法を後半に掲げているが、まさか「ながい」「ひとり言」だとは思わなかっ た。意表を突かれてしまった。平易な言葉で見事なドラマを作りあげる力量に感服である。