第18回杉野十佐一賞
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【大賞(12点)】
(秀)れいこ・ちえみ・むさし(佳)政二・由紀子・陽子
こんにゃくの素質も少しおありです
竹内 ゆみこ(京都府)

 この度は、立派な賞をいただきありがとうございました。

 杉野十佐一賞に挑戦することは、私にとって勇気のいることでした。過去の作品を拝見するたびに、はたして自分はこのレベルに達することができるのだろうかと不安になりました。しかし、その一方で、挑戦することにより、多くのことを学べるだろうとも感じていました。

 とにかく背伸びせず、自分のできることに集中するよう心がけました。

 最高の形でこの作品に再会できたことを幸せに思います。

 貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。

【準賞(10点)】
(特)由紀子(秀)政二(佳)れいこ・陽子
重しをつけるとおもながになってゆく素  江口ちかる(京都府)

【8点】
(特)陽子(佳)由紀子・ちえみ・むさし
素っ気ない足で無花果をくれる 愛媛県 高橋こう子
 
【7点】
(特)れいこ(佳)ちえみ・陽子
丁寧に素足をしまう格納庫 福島県 中野敦子
(秀)陽子・むさし(佳)由紀子
素揚げして蜂須賀小六は別冊 大阪府 谷口義
(秀)政二・由紀子(佳)ちえみ
スッピンでひょうたん島へ渡ります 愛知県 中川喜代子
(秀)れいこ(佳)由紀子・ちえみ・陽子・むさし
素うどんになるまで脱いでみましたが 大阪府 久保田 紺
(秀)れいこ(佳)政二・由紀子・ちえみ・陽子
三度目は素っ頓狂を前に出す 青森県 熊谷 冬鼓
(秀)ちえみ(佳)れいこ・由紀子・陽子・むさし
夕焼けの元素記号も覚えたね 滋賀県 北村幸子
(秀)陽子(佳)政二・れいこ・由紀子・むさし
飛び降りるときは素直な棒になる 滋賀県 重森恒雄
 
【6点】
(特)むさし(佳)陽子
二の腕のプツプツ今日は玉子の特売日 青森県 奈良一艘
(特)政二(佳)由紀子
「あなったて素ね」「そう わたしラが好きよ」 愛知県 丸山 進
(秀)政二(佳)由紀子・ちえみ・陽子
そそそそそすすすすすすす曼珠沙華 愛媛県 中西亜
(秀)由紀子(佳)政二・れいこ・陽子
素っぴんは表へ別っぴんは奥へ 高知県 萩原良子
(秀)由紀子(佳)れいこ・ちえみ・陽子
水曜になると素顔がぐらぐらする 大阪府 小池正博
 
【5点】
(特)ちえみ
みてごらん増殖中のボクたちを 岩手県 徳田ひろ子
(秀)むさし(佳)ちえみ・陽子
アリバイは無い茹で卵むいていた 青森県 小野五郎
(秀)政二(佳)れいこ・ちえみ
もういまは素っぴんのまま飛ぶやかん 東京都 伊藤こうか
(秀)陽子(佳)政二・れいこ
素朴だが銭の匂いも少しする 岡山県 福力明良
(秀)ちえみ(佳)れいこ・由紀子
笑って笑って笑って笑って素粒子 岩手県 はるひ
(秀)ちえみ(佳)政二・むさし
素顔には礼儀正しくお辞儀する 兵庫県 河内谷恵
(佳)政二・れいこ・由紀子・ちえみ・陽子
お素麺らしく真っすぐ湯につかる 青森県 真美
 
【4点】
(秀)ちえみ(佳)むさし
すっぴんでミサイルだってはねかえす 北海道 木暮健一
(秀)陽子(佳)れいこ
素うどんを食って素敵なアホになる 北海道 松木 秀
(秀)むさし(佳)由紀子
ザラザラ凸凹ニョロニョロぼそり 俺 青森県 岩崎雪洲
(秀)陽子(佳)むさし
素人が一人おぎゃあと名乗り出る 東京都 山田こいし
(秀)政二(佳)れいこ
消えそうなことばを素手でぎゅっとする 京都府 山本知佳子
(佳)政二・ちえみ・陽子・むさし
そうですね素数のようなひとかしら 愛媛県 吉松澄子
(佳)れいこ・由紀子・ちえみ・陽子
とても素直な中央分離帯 福井県 天谷由紀子
(佳)政二・ちえみ・陽子・むさし
三枚に下ろし素直にしてしまう 京都府 高島啓子
(佳)れいこ・由紀子・ちえみ・むさし
すりおろしりんごになってから 化ける 大阪府 赤松ますみ
 
【3点】
(秀)由紀子
素っぴんの月下美人の横で寝る 東京都 山田こいし
(秀)むさし
消えかけたドキドキ色にきっとなる 青森県 林紫苑
(秀)由紀子
雑貨屋にオペラの素が売れ残る 香川県 田岡 弘
(秀)れいこ
置いてきた弟味の素かけて 大阪府 久保田 紺
(秀)れいこ
太陽もわたしも素足ひかりあう 長野県 丸山健三
(佳)政二・れいこ・ちえみ
ふんわりとスーダラ節になる素足 兵庫県 河内谷恵
(佳)政二・れいこ・ちえみ
アイロンで伸ばす素直な時間帯 青森県 辻井洋子
(佳)由紀子・陽子・むさし
ニンニクの従弟は素揚げできません 愛知県 明名蝶
(佳)由紀子・陽子・むさし
素肌より白くなろうと思ったの 北海道 木暮健一
(佳)れいこ・由紀子・むさし
素手素足になったら鳥語はなせそう 青森県 中村誠子
(佳)れいこ・由紀子・ちえみ
憲法を素読してから炊くごはん 愛知県 瀧村小奈生
(佳)由紀子・ちえみ・むさし
混ぜないで素がゆっくりと浮いてくる 愛媛県 郷田みや
(佳)由紀子・陽子・むさし
素うどんを敵に回してから辛い 滋賀県 重森恒雄
(佳)れいこ・ちえみ・陽子
素っ気ないひとのサンマを焼いている 兵庫県 田村 ひろ子
(佳)政二・れいこ・陽子
ボランティアで素うどんになっています 青森県 野沢省悟
(佳)由紀子・ちえみ・むさし
素数コロコロ寂しがり屋だと思う 青森県 岩崎雪洲
(佳)政二・れいこ・ちえみ
浅漬けの素で応急措置をする 北海道 浪越 靖政
(佳)政二・ちえみ・陽子
木箱入り素麺秘密っぽくないか 青森県 笹田かなえ
 
【2点】
(佳)ちえみ・むさし
泣かへんで素の俺なんか見せへんで 島根県 石橋芳山
(佳)陽子・むさし
耳貸してもう素数には房れない 奈良県 ひとり静
(佳)政二・陽子
ジャンケンポン何て素直なパーなんだ  滋賀県 徳田孝子
(佳)由紀子・むさし
えいやっとでんぐり返り素に戻る 滋賀県 大谷のり子
(佳)政二・由紀子
素うどんツルリ詫びたい人はみな芒 青森県 角田古錐
(佳)れいこ・むさし
夕焼け小焼けめんどうだけど素に戻る 兵庫県 妹尾 凛
(佳)由紀子・むさし
九月産れの九月を素にもどす 兵庫県 前田芙巳代
(佳)由紀子・陽子
素麺の姉と言い張るカペリーニ 京都府 高島啓子
(佳)れいこ・むさし
故郷の酸素ときどき出して嗅ぐ 愛媛県 松本宗和
(佳)れいこ・むさし
十月にうふふの素をふりかける 京都府 江口ちかる
(佳)政二・ちえみ
ふっと死と思ういっぽんの素麺 兵庫県 八上桐子
(佳)政二・むさし
ごめんねが上手になったのね素顔 愛媛県 郷田みや
(佳)政二・むさし
母ちゃんの素顔どんどこ鼓笛隊 青森県 坂本勝子
(佳)陽子・むさし
素っぴんを恥らうのっぺらぼーである 岡山県 木下草風
(佳)政二・由紀子
髪なんか切ったりしないと立つ素足 岡山県 近藤朋子
(佳)政二・むさし
素うどんに溶かすワタシの濃いところ 青森県 須藤しんのすけ
(佳)れいこ・ちえみ
デイケアの素数みたいなおじいさん 滋賀県 峯 裕見子
(佳)政二・陽子
素うどんのスープは疲れ切っている 愛媛県 中西亜
(佳)政二・由紀子
玉葱の芯に預けた私の素 神奈川県 加藤ゆみ子
(佳)政二・ちえみ
声上げるまでをひたすら泡立てる 北海道 酒井麗水
(佳)れいこ・陽子
父を素通りする朝昼夜朝 兵庫県 八上桐子
(佳)政二・れいこ
素がいっぽん遠い顔して立つ秋野 京都府 西田雅子
(佳)陽子・むさし
すっぴんのさてどの辺り見せようか 青森県 辻井洋子
(佳)陽子・むさし
素っ気ない臍のあたりにローン組む 愛知県 川崎敏明
(佳)ちえみ・陽子
素手二本たぶん翼になるのでしょ 福島県 中野敦子
(佳)ちえみ・むさし
泣きごとは言うな素麺ツルツルと 宮城県 須川柊子
(佳)由紀子・ちえみ
脱原発素うどん食べている 北海道 田村あすか
(佳)れいこ・むさし
素っぴんになってただ今発酵中 福井県 奥村 美枝子
(佳)れいこ・むさし
素麺を独りで食べて夏終わる 高知県 大野 早苗
 
【1点】
(佳)政二
おはようと味の素ふる婆ちゃんに 静岡県 米山明日歌
(佳)陽子
酸素不足の海にも月は出る きっと 青森県 中村誠子
(佳)由紀子
素を良しとする全自動洗濯機 滋賀県 峯 裕見子
(佳)ちえみ
素姓ならきゃりーぱみゅぱみゅの流れです 北海道 進藤一車
(佳)むさし
カラスが山へ帰って素足はひとりぼっち 愛媛県 村山浩吉
(佳)むさし
あのキズもこのキズも良い出汁が出る 青森県 きさらぎ彼句吾
(佳)由紀子
止むを得ず素手で掬うた汚染水 岡山県 馬屋原弘万
(佳)陽子
素粒子がどうのこうのと言う胎児 和歌山県 三宅保州
(佳)由紀子
蒟蒻の素顔くす玉割れている 岡山県 畑佳余子
(佳)れいこ
きれいきれい言われましても素描中 滋賀県 竹内歌子
(佳)ちえみ
声を眠らせて素っけない木の箱 京都府 辻嬉久子
(佳)政二
ほらごらん夕日はいつもすってんてん 京都府 岩根 彰子
(佳)れいこ
素にもどる月の光をこぼしつつ 徳島県 徳長 怜
(佳)ちえみ
呼び止める澱は素通りすることに 青森県 熊谷 冬鼓
(佳)陽子
素朴でもいいさ鳩には胸がある 長野県 丸山健三
(佳)ちえみ
月光の照らすところが人の肌 東京都 飯島章友
(佳)政二
素に戻るやっと一人前らしい 青森県 まみどり
(佳)由紀子
素には素のまたその先に素なる素が 愛知県 松長一歩
(佳)由紀子
七日目の神素人のようですね 青森県 月波与生
(佳)ちえみ
素直になれたしグラジオラスららら 東京都 伊藤こうか
(佳)政二
赤とんぼ素焼きの孫をよろしくね 香川県 佐々木ええ一
(佳)れいこ
素うどんを分解するとボクになる 愛媛県 松本宗和
(佳)ちえみ
素通りの花屋魚屋明日がくる 青森県 吉田州花
(佳)政二
素に戻る私の寝顔見たいでしょ 青森県 林紫苑
(佳)政二
相槌を打つたび溶けていく素顔 愛知県 青砥和子
(佳)むさし
ポロポロと落ちる素顔という仮面 青森県 須藤しんのすけ
(佳)陽子
素顔なら素顔良品店で選る 徳島県 徳長 怜
(佳)由紀子
くちびるはCO2を吸うところ 静岡県 句ノ一
(佳)れいこ
素顔です脱皮はたまにしますけど 青森県 真美
(佳)政二
薄氷を渡るとひまわりの素顔 青森県 松山芳生
(佳)陽子
食欲のないタコだから明石焼き 愛知県 明名蝶
(佳)政二
素っぴんの花魁だから月だから 青森県 吉田州花
(佳)陽子
いい意味で質素と言われ壊れだす 愛知県 丸山 進
(佳)由紀子
気の向いた時は素顔のヒルの月 新潟県 星井五郎
(佳)由紀子
秋のパレット レディ・ガガしてシャガールして 北海道 進藤一車
(佳)れいこ
五・七・五きみも誰かの素数です 長野県 川合大祐
(佳)政二
娼婦は素足 手帖の裏はいつも晴れ 兵庫県 前田芙巳代
(佳)むさし
素っ気ない男に渡すスペアキー 愛知県 今村美根子
(佳)由紀子
粛々と祝詞を聴いている素数 奈良県 板垣孝志
(佳)ちえみ
今日というカード差し出す太い素手 大阪府 街中悠
(佳)むさし
クチビルはちょっと素直じゃない果実 東京都 長峯 福太郎
(佳)陽子
くちびるのあたりを素潜りで探る 島根県 石橋芳山
(佳)由紀子
ぴかぴかの一年生は皆素顔 滋賀県 遠山あきら
(佳)れいこ
富士仰ぐ素行よからぬワタクシも 京都府 谷口文
(佳)むさし
わたくしがぽろぽろはがれおちてゆく 滋賀県 大谷のり子
(佳)政二
ヒロシマや白き素足のジョン・レノン 香川県 佐々木ええ一
(佳)由紀子
これがかの冥王という元素 愛知県 廣田千恵子
(佳)れいこ
岬まで素足で月を踏みながら 愛知県 瀧村小奈生
(佳)ちえみ
極上の愛と泪で出来てます 私 石川県 藤村容子
(佳)政二
いつか素に戻った時に聞くつづき 青森県 斎藤早苗
(佳)むさし
わたくしの元素はきっとかさぶただ 青森県 村井規子
(佳)陽子
鱧素麺は骨粗鬆になりました 大阪府 谷口義
(佳)むさし
ふらんすを素焼きのままで凍らせる 北海道 澤野 優美子
(佳)れいこ
バラバラの鏡に映る素のわたし 神奈川県 青砥英規
(佳)陽子
素麺と散歩できない%(ぱーせんと) 高知県 小野 善江
(佳)由紀子
カメレオン素雑ミシンを買わされる 青森県 坂本トシ
(佳)れいこ
素っぴんの朝日を買いにゆく夜明け 大阪府 平井美智子
(佳)由紀子
虫めがね探しあぐねてしまった素。 青森県 小田原千秋
(佳)れいこ
君だけに素直になれぬガスレンジ 青森県 渡邊こあき
(佳)ちえみ
素うどん一杯分の男ですが 秋田県 田久保亜蘭
(佳)政二
ふるさとに素顔を洗う川がある 新潟県 塩田悦子
(佳)ちえみ
横断歩道すっくと立っている素直 青森県 まきこ
(佳)むさし
いい月だねえと毒素をふりかける 愛媛県 井上せい子
(佳)政二
素直にはなれぬひまわりまだ枯れぬ 山形県 舟山智恵
(佳)政二
涙腺が素直になってから勝負 広島県 笹重耕三
(佳)むさし
マスクからはみ出てしまう氏素性 青森県 石澤はる子
(佳)陽子
指折って素数かぞえる弥勒菩薩 高知県 小野 善江
(佳)れいこ
できたての素麺喉を通過中 青森県 アッコ
(佳)政二
つぶやきに触れたくなって素に戻る 島根県 安黒登貴枝
(佳)由紀子
花びらを探す旅なのほら素足 青森県 坂本勝子
(佳)政二
青空へ素手で描いた感謝状 福井県 奥村 美枝子
(佳)陽子
素っぴんのきゅうりもなすも原始人 北海道 新井笑葉
(佳)由紀子
二十九の元素記号に阿弥陀経 奈良県 板垣孝志
(佳)れいこ
素粒子になってあなたの胸の中 山形県 舟山智恵
(佳)ちえみ
恥数多ぼくの色素は赤らしい 青森県 濱山哲也
(佳)政二
素で生きる羽衣枝に掛けたまま 奈良県 中村せつこ
(佳)れいこ
こんがりと彼岸団子の素案かな 青森県 守田啓子
(佳)ちえみ
素うどんという温かいおもてなし 茨城県 岡本恵
(佳)政二
障害を抱え生まれてきた天使 青森県 汰石
(佳)由紀子
描きかさね素描ますます匂い立つ 愛知県 岡嶋義幸
(佳)れいこ
私の素数に君をかけてみる 京都府 和田洋子
(佳)ちえみ
月の夜ああ素粒子になってゆく 青森県 小野五郎
(佳)むさし
御用だ御用だ因幡の素兎 長野県 樹萄らき
(佳)政二
「飽きるほど生きた」と言う元気の素 新潟県 谷沢けい子
(佳)陽子
素直には伸びてくれない足の爪 青森県 中道文子
(佳)れいこ
趣味のない素数のような人といる 愛知県 高田 桂子
(佳)陽子
曼珠沙華走ってきたか素手素足 高知県 桑名知華子
(佳)ちえみ
もっともっと素になれ野ざらしのオブジェ 滋賀県 徳田孝子
(佳)むさし
歳ですと味も素気もない答 岡山県 藏内明子
(佳)れいこ
妥協などしない素焼きの飯茶椀 京都府 和田洋子
(佳)ちえみ
素っけない返事ばかりをする鏡 静岡県 米山明日歌

応募者ご芳名

【北海道】
新井笑葉・伊藤寿子・岩間啓子・木暮健一・酒井麗水・澤野優美子・進藤一車・田村あすか・浪越靖政・松木秀・宗村政己・悠とし子
【青森】
赤平くみこ・アッコ・阿部治幸・石澤はる子・岩崎雪洲・岩崎眞里子・岩淵黙人・奥崎倭子・小田原千秋・小野五郎・角田古錐・かほる・きさらぎ彼句吾・草野力丸・熊谷冬鼓・斎藤早苗・坂本勝子・坂本清乃・坂本トシ・櫻庭聡・笹田かなえ・笹田隆志・滋野さち・白戸まつ子・須藤しんのすけ・大黒谷サチエ・高杉靖女・汰石・高田幸柳・橋星湖・月波与生・辻井洋子・土田雅子・中道文子・中村誠子・奈良一艘・成田勲・野沢省悟・則田椿・濱山哲也・林紫苑・ひらく・前田厚兵・まきこ・松山芳生・真美・まみどり・三上玉夫・南山藤花・村井規子・守田啓子・山本弘志・吉川ひとし・吉田州花・渡邊こあき
【岩手】
加差野静浪・徳田ひろ子・はるひ
【秋田】
一帆・田久保亜蘭
【宮城】
木立慈雨・須川柊子・賊沢御免
【山形】
相田みちる・伊東マコ・舟山智恵
【福島】
坪内照光・中野敦子・府中三三男・山口艸花
【茨城】
岡本恵
【埼玉】
小澤誠邦・鈴木良二・てじま晩秋
【千葉】
老沼正一・潮田春雄・普川素床
【東京】
飯島章友・泉明日香・伊藤こうか・伊藤三十六・上原稔・佐藤仲由・長峯福太郎・山田こいし
【神奈川】
青砥英規・アズスン安須・岡田弘子・加藤ゆみ子・無無・杉山太郎
【新潟】
梅沢きく恵・坂井冬子・塩田悦子・谷沢けい子・星井五郎
【石川】
石倉多美子・岡本聡・藤村容子
【福井】
天谷由紀子・奥村美枝子
【長野】
川合大祐・樹萄らき・丸山健三
【静岡】
句ノ一・米山明日歌
【愛知】
青砥和子・明名蝶・浅見和彦・安藤なみ・今村美根子・岡嶋義幸・川崎敏明・北原おさむ・高田桂子・瀧村小奈生・中川喜代子・廣田千恵子・松長一歩・丸山進・水谷克行・三好光明
【三重】
小河柳女
【滋賀】
大谷のり子・片山美津子・北村幸子・重森恒雄・鈴木紀子・高野久美子・竹内歌子・嶌清五郎・遠山あきら・徳田孝子・峯裕見子
【京都】
岩根彰子・内田真理子・江口ちかる・高島啓子・竹内ゆみこ・谷口文・辻嬉久子・西田雅子・浜純子・森田律子・山本知佳子・和田洋子
【大阪】
赤松ますみ・上野のひろ・久保田紺・小池正博・阪井一夫・谷口義・寺川弘一・平井美智子・街中悠
【兵庫】
宇津慶子・河内谷恵・斉藤幸男・妹尾凛・田村ひろ子・東馬場美和子・藤田令子・前田芙巳代・三坂守・八上桐子・柳口テルヨ
【奈良】
板垣孝志・中村せつこ・ひとり静
【和歌山】
木本朱夏・三宅保州
【鳥取】
斉尾くにこ・安黒登貴枝・石橋芳山
【岡山】
木下草風・藏内明子・近藤朋子・畑佳余子・福力明良・馬屋原弘万・山本美枝・吉原信子
【広島】
笹重耕三
【徳島】
徳長 怜・森ヨシ子
【香川】
佐々木ええ一・田岡弘
【愛媛】
井上せい子・門田澄江・郷田みや・高橋こう子・中西亜・西村寛子・能田勝利・原田否可立・松本宗和・村山浩吉・山之内さち枝・除田六朗・吉松澄子
【高知】
大野早苗・小野善江・鍵山佳代・桑名知華子・桑名正雄・萩原良子・森野敬子
【福岡】
大庭堅司・城後朱美
【大分】
野田清博
【宮崎】
稲毛寛・桟舜吉
【沖縄】
渡嘉敷唯正

計225名

徳永 政二 選(とくながせいじ・滋賀県・びわこ番傘川柳会所属)
佳作44 浅漬けの素で応急措置をする 北海道 浪越靖政
佳作43 ボランティアで素うどんになっています 青森県 野沢省悟
佳作42 「飽きるほど生きた」と言う元気の素 新潟県 谷沢けい子
佳作41 障害を抱え生まれてきた天使 青森県 汰石
佳作40 素で生きる羽衣枝に掛けたまま 奈良県 中村せつこ
佳作39 青空へ素手で描いた感謝状 福井県 奥村美枝子
佳作38 つぶやきに触れたくなって素に戻る 島根県 安黒登貴枝
佳作37 素朴だが銭の匂いも少しする 岡山県 福力明良
佳作36 涙腺が素直になってから勝負 広島県 笹重耕三
佳作35 玉葱の芯に預けた私の素 神奈川県 加藤ゆみ子
佳作34 素直にはなれぬひまわりまだ枯れぬ 山形県 舟山智恵
佳作33 ふるさとに素顔を洗う川がある 新潟県 塩田悦子
佳作32 三枚に下ろし素直にしてしまう 京都府 高島啓子
佳作31 素うどんに溶かすワタシの濃いところ 青森県 須藤しんのすけ
佳作30 髪なんか切ったりしないと立つ素足 岡山県 近藤朋子
佳作29 いつか素に戻った時に聞くつづき 青森県 斎藤早苗
佳作28 ヒロシマや白き素足のジョン・レノン 香川県 佐々木ええ一
佳作27 木箱入り素麺秘密っぽくないか 青森県 笹田かなえ
佳作26 素がいっぽん遠い顔して立つ秋野 京都府 西田雅子
佳作25 素うどんツルリ詫びたい人はみな芒 青森県 角田古錐
佳作24 そうですね素数のようなひとかしら 愛媛県 吉松澄子
佳作23 娼婦は素足 手帖の裏はいつも晴れ 兵庫県 前田芙巳代
佳作22 ふっと死と思ういっぽんの素麺 兵庫県 八上桐子
佳作21 素っぴんの花魁だから月だから 青森県 吉田州花
佳作20 薄氷を渡るとひまわりの素顔 青森県 松山芳生
佳作19 声上げるまでをひたすら泡立てる 北海道 酒井麗水
佳作18 相槌を打つたび溶けていく素顔 愛知県 青砥和子
佳作17 素に戻る私の寝顔見たいでしょ 青森県 林紫苑
佳作16 素うどんのスープは疲れ切っている 愛媛県 中西亜
佳作15 ジャンケンポン何て素直なパーなんだ  滋賀県 徳田孝子
佳作14 赤とんぼ素焼きの孫をよろしくね 香川県 佐々木ええ一
佳作13 素っぴんは表へ別っぴんは奥へ 高知県 萩原良子
佳作12 アイロンで伸ばす素直な時間帯 青森県 辻井洋子
佳作11 ごめんねが上手になったのね素顔 愛媛県 郷田みや
佳作10 素に戻るやっと一人前らしい 青森県 まみどり
佳作9 飛び降りるときは素直な棒になる 滋賀県 重森恒雄
佳作8 ほらごらん夕日はいつもすってんてん 京都府 岩根彰子
佳作7 ふんわりとスーダラ節になる素足 兵庫県 河内谷恵
佳作6 三度目は素っ頓狂を前に出す 青森県 熊谷冬鼓
佳作5 素顔には礼儀正しくお辞儀する 兵庫県 河内谷恵
佳作4 こんにゃくの素質も少しおありです 京都府 竹内ゆみこ
佳作3 お素麺らしく真っすぐ湯につかる 青森県 真美
佳作2 おはようと味の素ふる婆ちゃんに 静岡県 米山明日歌
佳作1 母ちゃんの素顔どんどこ鼓笛隊 青森県 坂本勝子
       
秀逸5 消えそうなことばを素手でぎゅっとする 京都府 山本知佳子
秀逸4 スッピンでひょうたん島へ渡ります 愛知県 中川喜代子
秀逸3 そそそそそすすすすすすす曼珠沙華 愛媛県 中西 亜
秀逸2 もういまは素っぴんのまま飛ぶやかん 東京都 伊藤こうか
秀逸1 重しをつけるとおもながになってゆく素 京都府 江口ちかる
       
特選 「あなったて素ね」「そう わたしラが好きよ」 愛知県 丸山 進

選評

 題「素」は難しかったと思う。選をしていると、なんとか題をこなそうとする苦心が伝わってきた。「十佐一賞」の選の楽しみは、新しいと感じる句に出会えることである。今回もそんな句を選ぶことができよろこんでいる。

 新しい納得できる句はそう簡単にはできない。だが、そのような句はひろがりを持ち、川柳を一歩でも前へ進めることができる。

 批判があるかもしれないが、「おかじょうき」の誌面にそんな句が並ぶことは、今、とても大事なことだと思う。

 そして、ひろがりを持つ一つの方法として、ユーモアは欠かせないものである。

 消えそうなことばを素手でぎゅっとする

「消えそうなことば」は私になることばである。「ぎゅっとする」になぜか泣けてくる。

 スッピンでひょうたん島へ渡ります

 突然の「ひょうたん島」が楽しい。カタカナ表記もいい。その後のことはわからないが、覚悟が明るい。

 そそそそそすすすすすすす曼珠沙華

 「素」からの「そ」と「す」が並んでいるような「曼珠沙華」。この花を選んだことで味わい深いものになった。

 もういまは素っぴんのまま飛ぶやかん

 とにかく「やかん」がおもしろい。それが飛んでいるのである。なんだかこわい「やかん」でもある。

 重しをつけるとおもながになってゆく素

 へちまのような、ひょうたんのような「おもなが」が笑っている。あくまで「素」は自由自在である。

 「あなったて素ね」「そう わたしラが好きよ」

 選の途中、「あなたって」の間違いではないかを確認させていただいた。そして、あらためて「ラが好きよ」につなぐ話し言葉であると理解した。「素」からの展開にさわやかな風が吹いた。

なかはら れいこ 選(なかはられいこ・岐阜県・ねじまき句会所属)
佳作44 妥協などしない素焼きの飯茶椀 京都府 和田洋子
佳作43 素っ気ないひとのサンマを焼いている 兵庫県 田村ひろ子
佳作42 趣味のない素数のような人といる 愛知県 高田桂子
佳作41 私の素数に君をかけてみる 京都府 和田洋子
佳作40 こんがりと彼岸団子の素案かな 青森県 守田啓子
佳作39 素粒子になってあなたの胸の中 山形県 舟山智恵
佳作38 素手素足になったら鳥語はなせそう 青森県 中村誠子
佳作37 できたての素麺喉を通過中 青森県 アッコ
佳作36 父を素通りする朝昼夜朝 兵庫県 八上桐子
佳作35 夕焼けの元素記号も覚えたね 滋賀県 北村幸子
佳作34 素麺を独りで食べて夏終わる 高知県 大野 早苗
佳作33 もういまは素っぴんのまま飛ぶやかん 東京都 伊藤こうか
佳作32 君だけに素直になれぬガスレンジ 青森県 渡邊こあき
佳作31 素っぴんの朝日を買いにゆく夜明け 大阪府 平井美智子
佳作30 バラバラの鏡に映る素のわたし 神奈川県 青砥英規
佳作29 ボランティアで素うどんになっています 青森県 野沢省悟
佳作28 岬まで素足で月を踏みながら 愛知県 瀧村小奈生
佳作27 富士仰ぐ素行よからぬワタクシも 京都府 谷口 文
佳作26 素っぴんになってただ今発酵中 福井県 奥村美枝子
佳作25 素がいっぽん遠い顔して立つ秋野 京都府 西田雅子
佳作24 素っぴんは表へ別っぴんは奥へ 高知県 萩原良子
佳作23 飛び降りるときは素直な棒になる 滋賀県 重森恒雄
佳作22 五・七・五きみも誰かの素数です 長野県 川合大祐
佳作21 故郷の酸素ときどき出して嗅ぐ 愛媛県 松本宗和
佳作20 すりおろしりんごになってから 化ける 大阪府 赤松ますみ
佳作19 素顔です脱皮はたまにしますけど 青森県 真 美
佳作18 夕焼け小焼けめんどうだけど素に戻る 兵庫県 妹尾 凛
佳作17 笑って笑って笑って笑って素粒子 岩手県 はるひ
佳作16 重しをつけるとおもながになってゆく素 京都府 江口ちかる
佳作15 素朴だが銭の匂いも少しする 岡山県 福力明良
佳作14 素うどんを分解するとボクになる 愛媛県 松本宗和
佳作13 ふんわりとスーダラ節になる素足 兵庫県 河内谷恵
佳作12 アイロンで伸ばす素直な時間帯 青森県 辻井洋子
佳作11 お素麺らしく真っすぐ湯につかる 青森県 真 美
佳作10 デイケアの素数みたいなおじいさん 滋賀県 峯 裕見子
佳作9 水曜になると素顔がぐらぐらする 大阪府 小池正博
佳作8 素にもどる月の光をこぼしつつ 徳島県 徳長 怜
佳作7 きれいきれい言われましても素描中 滋賀県 竹内歌子
佳作6 とても素直な中央分離帯 福井県 天谷由紀子
佳作5 浅漬けの素で応急措置をする 北海道 浪越靖政
佳作4 素うどんを食って素敵なアホになる 北海道 松木 秀
佳作3 憲法を素読してから炊くごはん 愛知県 瀧村小奈生
佳作2 消えそうなことばを素手でぎゅっとする 京都府 山本知佳子
佳作1 十月にうふふの素をふりかける 京都府 江口ちかる
       
秀逸5 太陽もわたしも素足ひかりあう 長野県 丸山健三
秀逸4 三度目は素っ頓狂を前に出す 青森県 熊谷冬鼓
秀逸3 置いてきた弟味の素かけて 大阪府 久保田 紺
秀逸2 素うどんになるまで脱いでみましたが 大阪府 久保田 紺
秀逸1 こんにゃくの素質も少しおありです 京都府 竹内ゆみこ
       
特選 丁寧に素足をしまう格納庫 福島県 中野敦子

選評

 十佐一賞の選考をさせていただくたび、題詠について考えさせられる。今回の題は「素」である。「素顔」「素手」「素うどん」。「素数」や 「素粒子」なんてのもあった。そして詠込みも。題は作句のきっかけにすぎないかもしれない。だが、投句者全員が共有する縛りでもある。縛りの 中で、縛りなどどこにもないように書くにはどうするか。そこを考えることもまた、作句の楽しみのひとつだ。そう思えれば素敵なことだと思う。 特選及び秀句に選ばせて頂いた作品たちは、その点をなんなくクリアしているように思う。

秀句1:端からこんにゃくになりたいのかというツッコミが想定されているかように「おありです」と結ばれている。この慇懃無礼にも思える言い 回しは効果的だと思う。

秀句2:たくさんあった素うどんの中で一番に選んだ「素うどん」。最後の一語「が」に続く展開を想像する楽しさがある。

秀句3:中村冨二の「みんな去って 全身に降る味の素」を思い出す。「置いてきた弟」と「味の素」がノスタルジックで胸きゅんで、ヤラれた。

秀句4:この「素っ頓狂」には驚かされた。「素っ頓狂」一点にすべてが賭けられていてとても潔い句だと思う。

秀句5:解釈不要の句。自己肯定が気持ちよくて、その向日性にとても好感が持てた。

特選句について

 丁寧に素足をしまう格納庫

 生々しい「素足」と無味乾燥な「格納庫」の取合せが不思議な美しさを演出している。恭しく掲げられた二本の素足が、がらんとした格納庫に運 ばれてゆく様を想像した。パーツとなった素足がエロティック。映像があたまに浮かんだ瞬間、小川洋子の『沈黙博物館』を思い出した。この句の 持つ、ひんやりとした温度感や静寂に、かの小説世界と共通するものがあるように思う。「素足」という言葉の持つ、柔らかさや清しさ、あるいは 色っぽさがいかんなく生かされていて、とても魅力的な作品だと思う。

樋口 由紀子 選(ひぐちゆきこ・兵庫県・MANO所属)
佳作44 そそそそそすすすすすすす曼珠沙華 愛媛県 中西 亜
佳作43 素っ気ない足で無花果をくれる 愛媛県 高橋こう子
佳作42 素数コロコロ寂しがり屋だと思う 青森県 岩崎雪洲
佳作41 描きかさね素描ますます匂い立つ 愛知県 岡嶋義幸
佳作40 素うどんを敵に回してから辛い 滋賀県 重森恒雄
佳作39 二十九の元素記号に阿弥陀経 奈良県 板垣孝志
佳作38 花びらを探す旅なのほら素足 青森県 坂本勝子
佳作37 混ぜないで素がゆっくりと浮いてくる 愛媛県 郷田みや
佳作36 憲法を素読してから炊くごはん 愛知県 瀧村小奈生
佳作35 ザラザラ凸凹ニョロニョロぼそり 俺 青森県 岩崎雪洲
佳作34 「あなったて素ね」「そう わたしラが好きよ」 愛知県 丸山 進
佳作33 脱原発素うどん食べている 北海道 田村あすか
佳作32 虫めがね探しあぐねてしまった素。 青森県 小田原千秋
佳作31 カメレオン素雑ミシンを買わされる 青森県 坂本トシ
佳作30 ニンニクの従弟は素揚げできません 愛知県 明名 蝶
佳作29 飛び降りるときは素直な棒になる 滋賀県 重森恒雄
佳作28 これがかの冥王という元素 愛知県 廣田千恵子
佳作27 ぴかぴかの一年生は皆素顔 滋賀県 遠山あきら
佳作26 笑って笑って笑って笑って素粒子 岩手県 はるひ
佳作25 お素麺らしく真っすぐ湯につかる 青森県 真 美
佳作24 素麺の姉と言い張るカペリーニ 京都府 高島啓子
佳作23 粛々と祝詞を聴いている素数 奈良県 板垣孝志
佳作22 秋のパレット レディ・ガガしてシャガールして 北海道 進藤一車
佳作21 気の向いた時は素顔のヒルの月 新潟県 星井五郎
佳作20 こんにゃくの素質も少しおありです 京都府 竹内ゆみこ
佳作19 くちびるはCO2を吸うところ 静岡県 句ノ一
佳作18 とても素直な中央分離帯 福井県 天谷由紀子
佳作17 すりおろしりんごになってから 化ける 大阪府 赤松ますみ
佳作16 えいやっとでんぐり返り素に戻る 滋賀県 大谷のり子
佳作15 髪なんか切ったりしないと立つ素足 岡山県 近藤朋子
佳作14 素手素足になったら鳥語はなせそう 青森県 中村誠子
佳作13 玉葱の芯に預けた私の素 神奈川県 加藤ゆみ子
佳作12 素揚げして蜂須賀小六は別冊 大阪府 谷口 義
佳作11 七日目の神素人のようですね 青森県 月波与生
佳作10 素には素のまたその先に素なる素が 愛知県 松長一歩
佳作9 夕焼けの元素記号も覚えたね 滋賀県 北村幸子
佳作8 九月産れの九月を素にもどす 兵庫県 前田芙巳代
佳作7 蒟蒻の素顔くす玉割れている 岡山県 畑佳余子
佳作6 止むを得ず素手で掬うた汚染水 岡山県 馬屋原弘万
佳作5 素うどんツルリ詫びたい人はみな芒 青森県 角田古錐
佳作4 素肌より白くなろうと思ったの 北海道 木暮健一
佳作3 素うどんになるまで脱いでみましたが 大阪府 久保田 紺
佳作2 素を良しとする全自動洗濯機 滋賀県 峯 裕見子
佳作1 三度目は素っ頓狂を前に出す 青森県 熊谷冬鼓
       
秀逸5 水曜になると素顔がぐらぐらする 大阪府 小池正博
秀逸4 素っぴんは表へ別っぴんは奥へ 高知県 萩原良子
秀逸3 雑貨屋にオペラの素が売れ残る 香川県 田岡 弘
秀逸2 スッピンでひょうたん島へ渡ります 愛知県 中川喜代子
秀逸1 素っぴんの月下美人の横で寝る 東京都 山田こいし
       
特選 重しをつけるとおもながになってゆく素 京都府 江口ちかる

選評

 あれっ、「素」って、こんな言葉しかなかったのかなというのが集句を読んだ、最初の感想。「素顔」「素っぴん」「素うどん」「素直」。それらを説明したり、状況設定であったり、あるいはこれらに付随したコトや感情のオンパレード。わかりきっていることをありのままに詠むのではあまりにも「素」過ぎる。それではどうも範囲が狭すぎるように思う。「素」にもたれていないものを探し、「素」から拡がるもの選んだ。

 私は一読明解な句よりも、あれこれを想像できる句が好きである。いろいろと想像を膨らませることができる句には総じて言葉に力がある。

 特選にいただいた<重しをつけるとおもながになってゆく素>の「重し」と「おもなが」の取り合わせに立ち止まった。生きているとどうしてもついてくる数々の重し。それはしかたのないことであって、そう思うとちょっとセンチメンタルになる。センチメンタルの方向にもっていくと共感を得やすい。が、安易にそちらには行かないで、「おもなが」とくるりと転じて、ユーモアを醸し出している。そういわれると救われる感がある。重しをつけたら、ぎゅっとひっぱられて、形が変わっていく。それまでの「素」はどんな形だったのだろうか、まんまる?ましかく?さんかっけい?視覚的描写をする。

 「おもなが」とは顔が長めなことである。「面長の美人」といわれるように美人の代名詞でもある。その程度は知っていた。しかし、辞書で引くと、「好人物であること。まがぬけていること。おめでたいこと」とあった。意外であったが、ますます想像が拡がっていく。ちょっと理に叶いすぎるともいえるのだが、それにあまりあるものがある。

 秀逸にいただいた五句に共通しているのは作者独自の「ばかげた思い」を提示しているところである。「月下美人の横で寝る」のも「ひょうたん島に渡」るのも「オペラの素が売れ残る」「表へ」「奥へ」「素顔がぐらぐらする」のが、まさしくそう、楽しそうである。

広瀬 ちえみ 選(ひろせちえみ・宮城県・杜人 所属)
佳作44 素っけない返事ばかりをする鏡 静岡県 米山明日歌
佳作43 もっともっと素になれ野ざらしのオブジェ 滋賀県 徳田孝子
佳作42 お素麺らしく真っすぐ湯につかる 青森県 真 美
佳作41 月の夜ああ素粒子になってゆく 青森県 小野五郎
佳作40 素うどんという温かいおもてなし 茨城県 岡本 恵
佳作39 恥数多ぼくの色素は赤らしい 青森県 濱山哲也
佳作38 アリバイは無い茹で卵むいていた 青森県 小野五郎
佳作37 デイケアの素数みたいなおじいさん 滋賀県 峯 裕見子
佳作36 浅漬けの素で応急措置をする 北海道 浪越靖政
佳作35 素っ気ない足で無花果をくれる 愛媛県 高橋こう子
佳作34 素うどんになるまで脱いでみましたが 大阪府 久保田 紺
佳作33 横断歩道すっくと立っている素直 青森県 まきこ
佳作32 素うどん一杯分の男ですが 秋田県 田久保亜蘭
佳作31 脱原発素うどん食べている 北海道 田村あすか
佳作30 すりおろしりんごになってから 化ける 大阪府 赤松ますみ
佳作29 声上げるまでをひたすら泡立てる 北海道 酒井麗水
佳作28 極上の愛と泪で出来てます 私 石川県 藤村容子
佳作27 混ぜないで素がゆっくりと浮いてくる 愛媛県 郷田みや
佳作26 木箱入り素麺秘密っぽくないか 青森県 笹田かなえ
佳作25 三枚に下ろし素直にしてしまう 京都府 高島啓子
佳作24 水曜になると素顔がぐらぐらする 大阪府 小池正博
佳作23 今日というカード差し出す太い素手 大阪府 街中 悠
佳作22 素数コロコロ寂しがり屋だと思う 青森県 岩崎雪洲
佳作21 憲法を素読してから炊くごはん 愛知県 瀧村小奈生
佳作20 泣きごとは言うな素麺ツルツルと 宮城県 須川柊子
佳作19 素手二本たぶん翼になるのでしょ 福島県 中野敦子
佳作18 素っ気ないひとのサンマを焼いている 兵庫県 田村ひろ子
佳作17 ふっと死と思ういっぽんの素麺 兵庫県 八上桐子
佳作16 ふんわりとスーダラ節になる素足 兵庫県 河内谷恵
佳作15 素通りの花屋魚屋明日がくる 青森県 吉田州花
佳作14 とても素直な中央分離帯 福井県 天谷由紀子
佳作13 素直になれたしグラジオラスららら 東京都 伊藤こうか
佳作12 アイロンで伸ばす素直な時間帯 青森県 辻井洋子
佳作11 スッピンでひょうたん島へ渡ります 愛知県 中川喜代子
佳作10 泣かへんで素の俺なんか見せへんで 島根県 石橋芳山
佳作9 月光の照らすところが人の肌 東京都 飯島章友
佳作8 呼び止める澱は素通りすることに 青森県 熊谷冬鼓
佳作7 声を眠らせて素っけない木の箱 京都府 辻嬉久子
佳作6 丁寧に素足をしまう格納庫 福島県 中野敦子
佳作5 三度目は素っ頓狂を前に出す 青森県 熊谷冬鼓
佳作4 そそそそそすすすすすすす曼珠沙華 愛媛県 中西 亜
佳作3 素姓ならきゃりーぱみゅぱみゅの流れです 北海道 進藤一車
佳作2 もういまは素っぴんのまま飛ぶやかん 東京都 伊藤こうか
佳作1 そうですね素数のようなひとかしら 愛媛県 吉松澄子
       
秀逸5 素顔には礼儀正しくお辞儀する 兵庫県 河内谷恵
秀逸4 夕焼けの元素記号も覚えたね 滋賀県 北村幸子
秀逸3 笑って笑って笑って笑って素粒子 岩手県 はるひ
秀逸2 すっぴんでミサイルだってはねかえす 北海道 木暮健一
秀逸1 こんにゃくの素質も少しおありです 京都府 竹内ゆみこ
       
特選 みてごらん増殖中のボクたちを 岩手県 徳田ひろ子

選評

 今回ほど選に苦しんだことはありません。特選は大抵、作品の方から飛び込んできますが、これがなかなか決まらず苦しみました。また「素うどん」「素麺」「すっぴん」等のことばばを使った作品がたくさんあり、そういうごく日常的なことばが飛躍したおもしろい世界を生み出すにはかなりのエネルギー(創造力)を使わなければならないことを思い知らされました。

 秀句の「こんにゃく」「すっぴん」という生活臭のすることばが作る世界に笑わされました。非常に真面目な方の中にあるこんにゃく的一面の発見。このこんにゃく的素質とはいったいどんなのでしょう。煮物でも鍋でも主役ではないけれど、なければならない存在。くにゃくにゃしてとらえようもないが、いないと寂しい。

 「すっぴん」と「ミサイル」の大げさともいえる組み合わせには驚きます。北から飛んでくるミサイルにも武器ではなく「すっぴん」になるしか方法はありませんね。

 特選の「増殖中のボクたち」には「発展は私たちに何をもたらしたのだろうか」と考えさせられました。もちろんこれを必要としている人々も恩恵を受けている人々もたくさんいることを承知のうえだが、たとえば生殖医療の研究が進み、「ボクたち」は生まれる。「ボクたち」は冷凍保存される。たとえばほんの少しの細胞から臓器という「ボクたち」が簡単に作られる。まさに試験管やシャーレー、ビーカー等のあのガラスの容器の中で増殖していく「ボクたち」。これはすでに近未来の映画の話ではなくなりました。

 また、原発や核や化学兵器のことなども思い起こさせます。増殖しはじめたら凶暴な手の付けられない「ボクたち」になってしまう。いままさにその「ボクたち」におろおろしているではないか。

 理科の時間、ガラスの容器でした幼く楽しい実験を思い出します。シャーレーいっぱいにカビを作って素直に驚いていた私たちは、いま、最先端という矛盾の世界に生きています。

榊 陽子 選(さかき ようこ・兵庫県・第17回杉野十佐一賞受賞)
佳作44 重しをつけるとおもながになってゆく素 京都府 江口ちかる
佳作43 曼珠沙華走ってきたか素手素足 高知県 桑名知華子
佳作42 素直には伸びてくれない足の爪 青森県 中道文子
佳作41 浅漬けの素で応急措置をする 北海道 浪越靖政
佳作40 とても素直な中央分離帯 福井県 天谷由紀子
佳作39 素っぴんのきゅうりもなすも原始人 北海道 新井笑葉
佳作38 素手二本たぶん翼になるのでしょ 福島県 中野敦子
佳作37 指折って素数かぞえる弥勒菩薩 高知県 小野善江
佳作36 木箱入り素麺秘密っぽくないか 青森県 笹田かなえ
佳作35 丁寧に素足をしまう格納庫 福島県 中野敦子
佳作34 夕焼けの元素記号も覚えたね 滋賀県 北村幸子
佳作33 そそそそそすすすすすすす曼珠沙華 愛媛県 中西 亜
佳作32 素うどんのスープは疲れ切っている 愛媛県 中西 亜
佳作31 素麺と散歩できない%(ぱーせんと) 高知県 小野善江
佳作30 素っ気ない臍のあたりにローン組む 愛知県 川崎敏明
佳作29 鱧素麺は骨粗鬆になりました 大阪府 谷口 義
佳作28 二の腕のプツプツ今日は玉子の特売日 青森県 奈良一艘
佳作27 くちびるのあたりを素潜りで探る 島根県 石橋芳山
佳作26 素っぴんは表へ別っぴんは奥へ 高知県 萩原良子
佳作25 アリバイは無い茹で卵むいていた 青森県 小野五郎
佳作24 三枚に下ろし素直にしてしまう 京都府 高島啓子
佳作23 すっぴんのさてどの辺り見せようか 青森県 辻井洋子
佳作22 そうですね素数のようなひとかしら 愛媛県 吉松澄子
佳作21 いい意味で質素と言われ壊れだす 愛知県 丸山 進
佳作20 食欲のないタコだから明石焼き 愛知県 明名 蝶
佳作19 素顔なら素顔良品店で選る 徳島県 徳長 怜
佳作18 素うどんを敵に回してから辛い 滋賀県 重森恒雄
佳作17 素肌より白くなろうと思ったの 北海道 木暮健一
佳作16 素っ気ないひとのサンマを焼いている 兵庫県 田村ひろ子
佳作15 水曜になると素顔がぐらぐらする 大阪府 小池正博
佳作14 父を素通りする朝昼夜朝 兵庫県 八上桐子
佳作13 お素麺らしく真っすぐ湯につかる 青森県 真 美
佳作12 ジャンケンポン何て素直なパーなんだ  滋賀県 徳田孝子
佳作11 素麺の姉と言い張るカペリーニ 京都府 高島啓子
佳作10 ニンニクの従弟は素揚げできません 愛知県 明名 蝶
佳作9 素朴でもいいさ鳩には胸がある 長野県 丸山健三
佳作8 素っぴんを恥らうのっぺらぼーである 岡山県 木下草風
佳作7 素粒子がどうのこうのと言う胎児 和歌山県 三宅保州
佳作6 ボランティアで素うどんになっています 青森県 野沢省悟
佳作5 素うどんになるまで脱いでみましたが 大阪府 久保田 紺
佳作4 こんにゃくの素質も少しおありです 京都府 竹内ゆみこ
佳作3 耳貸してもう素数には房れない 奈良県 ひとり静
佳作2 置いてきた弟味の素かけて 大阪府 久保田 紺
佳作1 三度目は素っ頓狂を前に出す 青森県 熊谷冬鼓
       
秀逸5 飛び降りるときは素直な棒になる 滋賀県 重森恒雄
秀逸4 素人が一人おぎゃあと名乗り出る 東京都 山田こいし
秀逸3 素うどんを食って素敵なアホになる 北海道 松木 秀
秀逸2 素朴だが銭の匂いも少しする 岡山県 福力明良
秀逸1 素揚げして蜂須賀小六は別冊 大阪府 谷口 義
       
特選 素っ気ない足で無花果をくれる 愛媛県 高橋こう子

選評

素っ気ない足で無花果をくれる

 わたしは何かを足でもらったことがない。しかもそれが食べ物であり、どことなく淫靡でいかがわしい果物ならなおさらである。なぜ足なのか。だれの足なのか。そしてその足で「くれる」ときた。こちらの都合にお構いなしで容赦なく差し出されるわけだ。わたしは、足で?手で?そしてどんな顔をして受け取ればいいのだ。無花果を差し出す側と受け取る側のなんとも言えない気持ちのズレがこの句の吸引力なのだと思う。たとえば今の世の一方的であらがうことのできないモノゴトに対する嫌悪感と読み取ることもできるが、それで終わりにしたくないもっとずるずると引きずり回したい(引きずり回されたい?)魅力がこの句にはあった。ただ、題としての「素」で考えると少し弱いのかなという気がした。もともと足は手に比べ割かし素っ気ないものだと思うからである。と軽くダメ出ししながらもどうしても気になってしかたがない句として特選にいただいた。

 

素揚げして蜂須賀小六は別冊

 シャリの上にちょいとわさび乗っけてネタはあんこにしてみましたみたいな。斬新な言葉のコラボレーション。想像の域を超えるためにはちょっと食べてみよかとついつい手が伸びる。すごいのかすごくないのかよく分からない蜂須賀小六という人の素揚げはマニアックな味にちがいないし、そこから立ち上がってくる別冊感が読み手の心をわしづかみにする。一方でしてやられた感が残るのもこころにくい。あらためて17音という川柳の振り幅はまだまだ広がるんだと思わせてくれた一句。

 そして素直だからまともな句しか書けないのではなく、素直だからこそいじわるな句が書けるのだなあと思わせてくれた句を秀逸、佳作の上位にニヤニヤしながらいただいた。

む さ し 選(むさし・青森県・おかじょうき川柳社代表)
佳作44 歳ですと味も素気もない答 岡山県 藏内明子
佳作43 すっぴんでミサイルだってはねかえす 北海道 木暮健一
佳作42 御用だ御用だ因幡の素兎 長野県 樹萄らき
佳作41 母ちゃんの素顔どんどこ鼓笛隊 青森県 坂本勝子
佳作40 素っぴんになってただ今発酵中 福井県 奥村美枝子
佳作39 素麺を独りで食べて夏終わる 高知県 大野早苗
佳作38 泣きごとは言うな素麺ツルツルと 宮城県 須川柊子
佳作37 十月にうふふの素をふりかける 京都府 江口ちかる
佳作36 マスクからはみ出てしまう氏素性 青森県 石澤はる子
佳作35 素っぴんを恥らうのっぺらぼーである 岡山県 木下草風
佳作34 いい月だねえと毒素をふりかける 愛媛県 井上せい子
佳作33 素肌より白くなろうと思ったの 北海道 木暮健一
佳作32 すっぴんのさてどの辺り見せようか 青森県 辻井洋子
佳作31 ごめんねが上手になったのね素顔 愛媛県 郷田みや
佳作30 ふらんすを素焼きのままで凍らせる 北海道 澤野優美子
佳作29 わたくしの元素はきっとかさぶただ 青森県 村井規子
佳作28 わたくしがぽろぽろはがれおちてゆく 滋賀県 大谷のり子
佳作27 すりおろしりんごになってから 化ける 大阪府 赤松ますみ
佳作26 素っ気ない臍のあたりにローン組む 愛知県 川崎敏明
佳作25 クチビルはちょっと素直じゃない果実 東京都 長峯福太郎
佳作24 九月産れの九月を素にもどす 兵庫県 前田芙巳代
佳作23 素っ気ない男に渡すスペアキー 愛知県 今村美根子
佳作22 そうですね素数のようなひとかしら 愛媛県 吉松澄子
佳作21 素顔には礼儀正しくお辞儀する 兵庫県 河内谷恵
佳作20 耳貸してもう素数には房れない 奈良県 ひとり静
佳作19 素っ気ない足で無花果をくれる 愛媛県 高橋こう子
佳作18 ポロポロと落ちる素顔という仮面 青森県 須藤しんのすけ
佳作17 故郷の酸素ときどき出して嗅ぐ 愛媛県 松本宗和
佳作16 素数コロコロ寂しがり屋だと思う 青森県 岩崎雪洲
佳作15 素うどんに溶かすワタシの濃いところ 青森県 須藤しんのすけ
佳作14 素うどんになるまで脱いでみましたが 大阪府 久保田 紺
佳作13 えいやっとでんぐり返り素に戻る 滋賀県 大谷のり子
佳作12 夕焼け小焼けめんどうだけど素に戻る 兵庫県 妹尾 凛
佳作11 素うどんを敵に回してから辛い 滋賀県 重森恒雄
佳作10 飛び降りるときは素直な棒になる 滋賀県 重森恒雄
佳作9 素人が一人おぎゃあと名乗り出る 東京都 山田こいし
佳作8 夕焼けの元素記号も覚えたね 滋賀県 北村幸子
佳作7 素手素足になったら鳥語はなせそう 青森県 中村誠子
佳作6 あのキズもこのキズも良い出汁が出る 青森県 きさらぎ彼句吾
佳作5 ニンニクの従弟は素揚げできません 愛知県 明名 蝶
佳作4 カラスが山へ帰って素足はひとりぼっち 愛媛県 村山浩吉
佳作3 泣かへんで素の俺なんか見せへんで 島根県 石橋芳山
佳作2 三枚に下ろし素直にしてしまう 京都府 高島啓子
佳作1 混ぜないで素がゆっくりと浮いてくる 愛媛県 郷田みや
       
秀逸5 こんにゃくの素質も少しおありです 京都府 竹内ゆみこ
秀逸4 素揚げして蜂須賀小六は別冊 大阪府 谷口 義
秀逸3 ザラザラ凸凹ニョロニョロぼそり 俺 青森県 岩崎雪洲
秀逸2 消えかけたドキドキ色にきっとなる 青森県 林 紫苑
秀逸1 アリバイは無い茹で卵むいていた 青森県 小野五郎
       
特選 二の腕のプツプツ今日は玉子の特売日 青森県 奈良一艘

選評

特選 
二の腕のプツプツ今日は玉子の特売日

 最初この句を読んだとき題の「素」とは関係がない、 上5が9音の重過ぎる姿は何だ!と落選句グループへ思い切りよく捨てたのを覚えている。

 その後何度も応募全句を読んだ。

 何故か、読むたびに変なデザインのこの句が心に引っかかった。

 何回目かに何で引っかかるのか相変わらず分からなかったがとりあえず入選句グループの一番下に置いた。

 この時点で入選句グループはおよそ80句。

 その後、更に選び直しが続いた。

 だが…、この句はそれから落選句グループへ席を移すことはなかった。

 それどころか読む度に順位が上がり、ついに特選へ上り詰めた。

 何てことだ!と思った。

 そうは思ったが、そうしたのは誰でもない、私であり、この句である。

 形は変だが私に働きかける底知れない力を持っている。

 頭をニュートラルにしようと辞書を引いた。

 題の「素」は「す」であり「そ」であり「もと」である。

 広辞苑を引くと「もと」のところに「物事の主要な部分。根幹。基礎。」などとある。

 なるほど!だった。

 誰もそう思わなくても「二の腕のプツプツ」は作者にとってとんでもなく重要なもので「今日は玉子の特売日」であることは生活の大事な情報であり 基礎なのだ。

 人間なんてそんなもの、でもある。

 だとしても「二の腕のプツプツ」と「今日は玉子の特売日」という異様なものどうしのドッキングとは…、と悩んだ。

 でもでも、自分の「素」の部分をやにわに素手で掴みだしドンとテーブルに並べて見せた勇気と決断を思えば脱帽である。

 いびつな形ではあるが、この場合その方がよりパワーを持ちスピード感もある。

 すっきりしていいじゃないかと思うようになった。

 ここは素直にこの句へ頭を下げてしまおう!