第20回杉野十佐一賞
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【大賞(13点)】
(特)政二(秀)れいこ・由紀子(佳)ちえみ・裕子
くつ下の伝線 蛍でていった
米山明日歌(静岡県)

 受賞の一報をいただいた時は、夢かと思いました。

 何回か挑戦させて頂いたのですが、青森がどんどん遠くになっていくような気がしていました。

 「コツコツとずっと続ける」を信条としてきた私ですが、コツコツだけではダメなのではと思い始めていました。

 今回は女性の目線で、肩の力を抜いて応募してみました。

 最高のご褒美を頂くことができました。本当に幸せです。

 ありがとうございました。

【準賞(12点)】
(特)れいこ・由紀子(佳)裕子・むさし・
江戸城をもそっと蚊取り線香せよ       岩根彰子(京都府)
【10点】
(特)ちえみ(秀)れいこ(佳)政二・由紀子
あと二回使える光線をもらう 滋賀県 北村幸子
 
【7点】
(秀)政二・むさし(佳)ちえみ
もともとは直線だった気がします 京都府 河村啓子
(秀)政二・むさし(佳)ちえみ
一本の線です 文句ありますか 宮城県 須川柊子
 
【6点】
(特)裕子(佳)れいこ
太かった線も何やらところてん 滋賀県 重森恒雄
(特)むさし(佳)ちえみ
お静かにそろそろ線が唄い出す 愛媛県 能田勝利
(秀)由紀子・裕子
らんちゅうにつき目隠し線は極太で 青森県 濱山哲也
(秀)れいこ(佳)政二・由紀子・ちえみ
ま、いいんじゃねと水に書いた線 滋賀県 峯裕見子
(秀)由紀子(佳)政二・れいこ・ちえみ
脚線で分けるプリンセスとプリン 愛知県 猫田千恵子
(秀)政二(佳)由紀子・ちえみ・むさし
ストローで水平線を吸い上げる 長野県 興津幸代
(秀)ちえみ(佳)れいこ・由紀子・むさし
水平線見たら大阪弁になる 岡山県 福力明良
(秀)由紀子(佳)れいこ・ちえみ・裕子
不等辺三角形のおしるこ屋 青森県 鳴海賢治
 
【5点】
(秀)ちえみ(佳)政二・裕子
頬杖は線を集めている時間 東京都 柳本々々
(秀)むさし(佳)政二・ちえみ
乗りますか細くいびつな線ですが 石川県 岡本 聡
(秀)政二(佳)れいこ・ちえみ
線を引きました―夜になりました 愛知県 猫田千恵子
 
【4点】
(秀)由紀子(佳)ちえみ
小学校で習ったはずの線が無い 滋賀県 北村幸子
(秀)裕子(佳)むさし
鱗ポロポロエンドロールの地平線 愛媛県 西村寛子
(秀)ちえみ(佳)裕子
センターラインから海に出るオムライス 青森県 三浦蒼鬼
(秀)れいこ(佳)ちえみ
河馬の背の線やわらかに休園日 奈良県 清水すみれ
(秀)むさし(佳)由紀子
戦線を離脱したがる花ばさみ 神奈川県 加藤ゆみ子
(秀)ちえみ(佳)由紀子
線の右側 せんたく機動いてる 青森県 白戸まつ子
(佳)政二・れいこ・ちえみ・むさし
波だったことを静かに語る線 徳島県 徳長 怜
 
【3点】
(秀)政二
どの線を消せば水辺に出れますか 奈良県 岡谷 樹
(秀)ちえみ
輪郭は宇宙船です帽子です 大阪府 小川佳恵
(秀)れいこ
僕たちはほどけて線の一本に 愛知県 瀧村小奈生
(秀)裕子
生傷のひとつが喉にあるけしき 新潟県 新井笑葉
(秀)裕子
ほうれい線消えて三日月から 雫 大阪府 笠嶋恵美子
(秀)裕子
塩サンマ一匹塩サンマ二匹から破線 青森県 奈良一艘
(秀)むさし
破線からおっこちたのは私です 青森県 常田チャコ
(佳)ちえみ・裕子・むさし
唇からLINE耳朶からカノン 青森県 奈良一艘
(佳)れいこ・ちえみ・むさし
二重線どこもかしこも痛いのよ 青森県 笹田かなえ
(佳)政二・れいこ・むさし
生きてるよ線の通りに切ってみて 大阪府 竹井 紫乙
(佳)政二・由紀子・むさし
水平線は蝙蝠だった なんて知らない 兵庫県 江口 ちかる
(佳)れいこ・裕子・むさし
身悶えて水平線になる波線 鳥取県 藤原鬼桜
(佳)政二・れいこ・ちえみ
もうとうに線から足は出ていたの 滋賀県 高野久美子
(佳)政二・ちえみ・むさし
線だけになった大人しくなった 青森県 笹田かなえ
(佳)政二・れいこ・裕子
父はもうチョークの線を出てしまい 滋賀県 峯裕見子
(佳)政二・れいこ・むさし
雨の音いい曲線になっている 長野県 小池孝一
(佳)れいこ・ちえみ・裕子
G線上の都合でおにぎりにします 大阪府 谷口 義
(佳)ちえみ・裕子・むさし
境界線跨いだ方が勝ちですよ 青森県 渡邊こあき
 
【2点】
(佳)裕子・むさし
雨三日切り取り線がむず痒い 青森県 熊谷冬鼓
(佳)由紀子・ちえみ
クレヨンの線正しいと思います 京都府 和田洋子
(佳)政二・由紀子
試し書きしてきた とも子 とも子 岩手県 徳田ひろ子
(佳)政二・由紀子
ステンレス製琴線に換えました 高知県 森乃 鈴
(佳)由紀子・ちえみ
切り取り線富士山側に席を取る 北海道 酒井麗水
(佳)れいこ・由紀子
こら二組白線踏むな歯はしまえ 愛知県 林泰行
(佳)政二・れいこ
細いっちゃ細いけれども一直線 青森県 盒鏡姥
(佳)政二・むさし
輪郭を軽くなるまで撫でている 青森県 熊谷冬鼓
(佳)政二・れいこ
どの線を引いても父は出てこない 愛知県 青砥和子
(佳)れいこ・むさし
もういいよねと直線はゴロ寝する 大阪府 浅井ゆず
(佳)由紀子・むさし
折り線のまるみ摩周湖ともいう 北海道 澤野優美子
(佳)れいこ・裕子
時間軸ずらせば々々々だらけの世 青森県 月波与生
(佳)由紀子・ちえみ
桃の線無期懲役を言い渡す 奈良県 板垣孝志
(佳)裕子・むさし
頃合いにあなたの線にまぎれこむ 奈良県 きむらまさこ
(佳)政二・れいこ
水平線にあふれる水を汲みに行く 大阪府 寺川弘一
(佳)ちえみ・むさし
一線を越えてくるかいかぐや姫 長野県 樹萄らき
(佳)由紀子・裕子
葉脈をほどいた線で結わえます 徳島県 徳長 怜
(佳)政二・裕子
針金アートを解きたくなる夕べ 神奈川県 加藤ゆみ子
(佳)れいこ・ちえみ
せんよりもひだりはぼくがうごかせる 沖縄県 森山文切
(佳)由紀子・裕子
土壇場でカレーライスの仕切り線 高知県 大野美恵
(佳)政二・むさし
線いっ本消したらわっと咲きました 青森県 中村誠子
(佳)れいこ・ちえみ
路線図と話し込んだり笑ったり 埼玉県 野邊富優葉
(佳)れいこ・ちえみ
向こうにも生活のあり地平線 茨城県 岡本 恵
(佳)れいこ・裕子
カーブする手前で海は振り返る 青森県 月波与生
(佳)由紀子・ちえみ
曲線よ他言無用で願います 福井県 酒井暁美
(佳)由紀子・裕子
唐草模様の線だけ盗まれた 京都府 森田律子
(佳)ちえみ・裕子
やわらかな線になったら僕が死ぬ 岩手県 熊谷岳朗
(佳)ちえみ・裕子
なみ線を吐きました私の大きさの 兵庫県 宮沢青
(佳)ちえみ・むさし
まなざしが背に刺さって抜けません 大坂府 山里はるえ
(佳)ちえみ・むさし
直線は笑いたくない 笑えない 大阪府 嶋澤喜八郎
(佳)れいこ・由紀子
哲学とは何ぞ ミルフィーユくずす 京都府 浜 純子
(佳)ちえみ・むさし
まっすぐな線になるまで待ちましょう 宮城県 須川柊子
(佳)政二・むさし
この線ははみ出すために引いてある 北海道 松木 秀
(佳)政二・ちえみ
五線譜に戻って来ない赤トンボ 宮城県 渡辺忠一
(佳)れいこ・むさし
はみ出して線は初めて息をつく 三重県 山口亜都子
(佳)れいこ・裕子
あんどぅとろわでルパンは線になる 東京都 飯島章友
(佳)裕子・むさし
谷折りの線に一先ず寝かす愚痴 青森県 鈴木みさを
(佳)れいこ・由紀子
点線の点・点・点・を食べている 島根県 石橋芳山
(佳)政二・むさし
一線を超える助走をつけている 愛媛県 柳田かおる
(佳)れいこ・裕子
運命線長いの逆まつげなの 福岡県 柴田美都
(佳)由紀子・むさし
眉を描く敗者復活戦のため 青森県 南山藤花
(佳)政二・由紀子
視線には視線で返す 混線す 京都府 中野六助
(佳)裕子・むさし
流線型にされる赤面性のまま 青森県 きさらぎ彼句吾
(佳)政二・由紀子
大好きな線は静かなひらがな 兵庫県 妹尾 凛
(佳)政二・むさし
あきらめてみーんな線にしてしまう 福井県 天谷 由紀子
(佳)由紀子・むさし
ていねいになぞる点線なんだから 静岡県 句ノ一
(佳)政二・れいこ
どの線もみんな海へと辿り着く 愛知県 今村美根子
(佳)政二・れいこ
川の字のままに流れてゆきました 兵庫県 八上桐子
(佳)政二・裕子
クレヨンの線一本を離さない 京都府 西田雅子
 
【1点】
(佳)ちえみ
コロッケが好きですか ハイ 合格 青森県 碾鸛石
(佳)由紀子
古里へ平行線で入る 大阪府 徳山泰子
(佳)由紀子
月の光はがんばらないと線になる 東京都 柳本々々
(佳)裕子
垣根ない宙を信じたのが不覚 福島県 坪内照光
(佳)政二
白線から下がってお生きください 神奈川県 岡田 弘子
(佳)由紀子
スペアの首が出てくる対角線 大阪府 平井美智子
(佳)れいこ
もがいてみても線を脱げない 京都府 岩田多佳子
(佳)裕子
透明になるまで正の字を刻む 静岡県 米山明日歌
(佳)むさし
ブランコが揺れる破線の中ほどで 福島県 中野敦子
(佳)むさし
線ふっと切れて三途の川にでる 石川県 表 よう子
(佳)由紀子
原爆ドームからのびる真っ直ぐな線 高知県 萩原良子
(佳)裕子
パロディーが毛細血管を巡る 神奈川県 杉山太郎
(佳)れいこ
線審と一夜を共にしてしまう 沖縄県 森山文切
(佳)ちえみ
一本の線で昇っていかはった 大阪府 川田由紀子
(佳)由紀子
陪審員たる線量器の美学 青森県 松山芳生
(佳)れいこ
うららかにほうれい線が咲いている 愛媛県 村山浩吉
(佳)むさし
薄墨で書く草書体の吐息 愛媛県 大内せつ子
(佳)ちえみ
点線に囲まれて弁護士を呼ぶ 愛知県 安藤なみ
(佳)裕子
紅玉をかじりゼロ線になった 北海道 伊藤寿子
(佳)由紀子
性愛の2ミリ浮いてるキリトリ線 東京都 藤田めぐみ
(佳)ちえみ
たどって行けばいいのですね この線 大阪府 雨森茂喜
(佳)れいこ
ほっといてほしいと線は引かれてる 奈良県 ひとり静
(佳)裕子
夢をみる消えない線は線として 青森県 中村誠子
(佳)れいこ
十全な線の淋しくありましょう 青森県 吉田州花
(佳)裕子
意味もなく直線なぞる 冬になる 奈良県 安土理恵
(佳)むさし
一本の線から君が生まれたよ 佐賀県 古賀由美子
(佳)れいこ
軽トラに恋したみたい山陰線 鳥取県 斉尾くにこ
(佳)裕子
K線に乗ると海軍カレー臭 大阪府 弘津秋の子
(佳)由紀子
北回帰線に立つぜひご一緒に 京都府 森田律子
(佳)政二
その先も一本線でいるススキ 長野県 小池孝一
(佳)裕子
子午線を越えると痛みだす海馬 大阪府 小林康浩
(佳)れいこ
一線を退きダンゴ虫となる 岡山県 吉原信子
(佳)政二
線と線重ね夫婦になりました 青森県 土田雅子
(佳)むさし
フリーハンド陽気でおしゃべりな線だ 岩手県 鷹觜閲雄
(佳)政二
ちがいます芳麗線と申します 愛媛県 高橋こう子
(佳)むさし
無視されて線から点になりました 福岡県 城後朱美
(佳)政二
ガタピシのガタの線から逃げなさい 福島県 中野敦子
(佳)由紀子
ゼムクリップ切ない線は完壁に 高知県 小野善江
(佳)裕子
一筆書きなぞるあいだに決めるから 京都府 山本知佳子
(佳)れいこ
白線の外が銀河になってゆく 大阪府 赤松ますみ
(佳)ちえみ
混み合っています感情2号線 愛媛県 吉松澄子
(佳)むさし
線跨ぐ 姥捨て山へ行くつもり 秋田県 斎藤泰子
(佳)裕子
生き様の線いっぽんが嘘くさい 石川県 表 よう子
(佳)むさし
尊厳が水平線にぶら下がる 北海道 浪越靖政
(佳)政二
夕焼けがグニャリと曲げる地平線 青森県 村上あつこ
(佳)由紀子
等高線に繋がれている雨の舟 京都府 内田真理子
(佳)ちえみ
私の白いチョークはここにある 青森県 にじの真美
(佳)由紀子
折れ線グラフでなければならない星座 青森県 則田 椿
(佳)由紀子
ふりむけば弓形(ゆみなり)の線 拗ねた線 京都府 山本早苗
(佳)むさし
切り取り線にじっと潜んでいるマグマ 広島県 笹重耕三
(佳)政二
広重の雨に私も濡れかかる 愛媛県 高橋こう子
(佳)ちえみ
破線には種を蒔くべし笑うべし 京都府 内田真理子
(佳)れいこ
一本の線を引っ張りどこまでゆこう 滋賀県 安井茂樹
(佳)裕子
地平線をたたむ父ははが匂う 石川県 藤村容子
(佳)政二
裸婦像の線むらさきにむらさきに 奈良県 きむらまさこ
(佳)裕子
横一線だった生煮えの肉だった 大阪府 上嶋幸雀
(佳)由紀子
ぶつ切りの水平線と縄のれん 愛知県 今村美根子
(佳)むさし
反論はしない縫い糸ピンと張る 青森県 辻井洋子
(佳)政二
輪郭を点線にする日曜日 愛知県 丹下 純
(佳)れいこ
ギザギザの線しか切れぬ鋏です 京都府 谷口 文
(佳)裕子
切取り線 そこからスタートするカオス 山形県 伊東マコ
(佳)由紀子
コードの中は訛の強い線ばかり 滋賀県 畑山美幸
(佳)由紀子
曲線の気まぐれ気忙しいあ行 石川県 藤村容子
(佳)政二
きっとそう明るい点線ですもの 東京都 伊藤こうか
(佳)政二
近頃わたし線が一本足りないの 大阪府 田口和代
(佳)裕子
焼きあがるまでの点線の回廊 宮城県 勝又明城
(佳)由紀子
「線」を引き「戦」が始まる儲かるぞ 京都府 与太郎
(佳)政二
点と線だけで遊ぶよ雨の日は 愛知県 丸山 進
(佳)むさし
切取線の真下に溜まるゴミその他 香川県 嶋村 幸
(佳)れいこ
五線譜にのってリバプールから来た子 北海道 悠 とし子
(佳)裕子
今日もまた境界線を泡立てる 愛媛県 郷田みや
(佳)裕子
棒線で片付けられる氏素性 青森県 まみどり
(佳)由紀子
不条理も真っ直ぐ今朝のアイライン 茨城県 岡本 恵
(佳)政二
混線が続く 母との糸電話 山形県 伊東マコ
(佳)れいこ
アンダーライン大した事は書かれてない 兵庫県 小林みちよ
(佳)むさし
真っすぐになろうなろうと曲がる線 北海道 小林碧水
(佳)裕子
密会の森に停滞する前線 青森県 佐藤雅秀
(佳)ちえみ
ほらごらんじっとみてたらとけていく 京都府 和田洋子
(佳)由紀子
一筆書の星が産み落したコント 愛媛県 能田勝利
(佳)れいこ
駅へ行く線しかなくてバスが来る 滋賀県 重森恒雄
(佳)ちえみ
老眼鏡かけて生命線を見る 熊本県 興呂木和朗
(佳)由紀子
丹田を立てて確かな線になる 奈良県 中村せつこ
(佳)ちえみ
二三本線を引いたら消えました 大阪府 谷口 義
(佳)由紀子
スリーサイズ鉋と鑿の一騎討ち 千葉県 老沼正一
(佳)裕子
走り過ぎです破線準備発令 神奈川県 岡田弘子
(佳)ちえみ
棒線の個所がただ今炎上中 北海道 岩間啓子
(佳)政二
いろいろあってこの線は黒いのよ 大阪府 小原由佳
(佳)れいこ
ラフランス身体の線は気にしない 宮城県 浮 千草
(佳)政二
水平線 色鉛筆がよく馴染む 青森県 松山芳生
(佳)由紀子
放物線描きもうじき着地点 福岡県 もりともみち
(佳)むさし
まっすぐに線が引けないまま老いる 長野県 興津幸代
(佳)裕子
罫線をはみ出す愛の字の気まま 奈良県 清水すみれ

応募者ご芳名

【北海道】
伊藤寿子・伊藤寿子・岩間啓子・木暮健一・小林碧水・酒井麗水・澤野優美子・笑腹丸十佐・浪越靖政・松木秀・嶺岸柳舟・悠とし子
【青森】
赤平くみこ・阿部治幸・石澤はる子・稲見則彦・小野五郎・かほる・ きさらぎ彼句吾・草野力丸・工藤麦の芽・熊谷冬鼓・斎藤早苗・坂本勝子・坂本清乃・笹田かなえ・笹田隆志・佐藤雅秀・佐藤武・滋野さち・白戸まつ子・須郷井蛙・鈴木みさを・須藤しんのすけ・眇靖女・碾鸛石・盒兇擦せ辧盒鏡姥弌千葉風樹・月波与生・辻井洋子・土田雅子・常田チャコ・中道文子・中村誠子・中村みのり・夏草ふぶき・奈良一艘・成田我楽・鳴海賢治・にじの真美・則田椿・濱山哲也・林紫苑・ ひとは・福多あられ・前田厚兵・まきこ・松山芳生・まみどり・三浦蒼鬼・三上玉夫・南山藤花・村上あつこ・山野茶花子・吉田州花・吉田吹喜・渡邊こあき・渡邊寂隆
【岩手】
加差野静浪・熊谷岳朗・鷹觜閲雄・徳田ひろ子
【秋田】
一帆・斎藤泰子・田久保亜蘭
【宮城】
浮千草・勝又明城・須川柊子・武川影法師・渡辺忠一
【山形】
伊東マコ
【福島】
坪内照光・中野敦子
【茨城】
岡本恵
【埼玉】
野邊富優葉
【千葉】
老沼正一・潮田春雄・普川素床
【東京】
飯島章友・伊藤こうか・伊藤三十六・ 上原稔・幻住斎・等々力・中島かよ・藤田めぐみ・柳本々々・山田こいし
【神奈川】
岡田弘子・加藤ゆみ子・杉山太郎
【新潟】
新井笑葉・谷沢けい子・星井五郎
【石川】
石倉多美子・岡本聡・表よう子・藤村容子・松谷早苗
【福井】
天谷由紀子・酒井暁美・みつ木もも花
【長野】
興津幸代・小池孝一・樹萄らき・丸山健三
【岐阜】
早川由香
【静岡】
句ノ一・米山明日歌
【愛知】
青砥和子・安藤なみ・伊賀武久・稲垣康江・今村美根子・川崎敏明・瀧村小奈生・竹内美千代・丹下純・中川喜代子・猫田千恵子・林泰行・深谷江利子・松長一歩・丸山進・三好光明・安井紀代子
【三重】
小河柳女・山口亜都子
【滋賀】
大谷のり子・大橋啓子・片山美津子・北村幸子・重森恒雄・嶌清五郎・鈴木紀子・高野久美子・中村はるゑ・畑山美幸・峯裕見子・安井茂樹
【京都】
岩田多佳子・岩根彰子・内田真理子・奥山晴生・河村啓子・北原照子・ こうだひでお・谷口文・中野六助・西田雅子・浜純子・森田律子・山本早苗・山本知佳子・山本昌乃・与太郎・和田洋子
【大阪】
赤松ますみ・浅井ゆず・雨森茂喜・上嶋幸雀・オカダキキ・小川佳恵・荻野浩子・小原由佳・笠嶋恵美子・川田由紀子・神田良子・小林康浩・阪井一夫・佐藤美はる・嶋澤喜八郎・田口和代・竹井紫乙・谷口義・寺川弘一・徳山泰子・能登和子・平井美智子・弘津秋の子・山里はるえ・夕凪子
【兵庫】
猪塚廣海・江口ちかる・河内谷恵・小林みちよ・妹尾凛・田村ひろ子・坪井篤子・天藤秀子・豊福清月・濱邉稲佐嶽・東馬場美和子・前田芙巳代・宮沢青・八上桐子・柳口テルヨ・山元三恵子
【奈良】
安土理恵・板垣孝志・太田のりこ・岡谷樹・きむらまさこ・清水すみれ・中村せつこ・ひとり静・目黒友遊
【和歌山】
木本朱夏
【鳥取】
斉尾くにこ・藤原鬼桜
【島根】
石橋芳山
【岡山】
木下草風・小林茂子・朋子・永見心咲・福力明良・吉原信子
【広島】
笹重耕三
【徳島】
徳長怜
【香川】
佐々木ええ一・嶋村幸
【愛媛】
青野舞・大内せつ子・郷田みや・高橋こう子・土居新山・中西亜・西村寛子・能田勝利・村山浩吉・柳田かおる・山内房子・山之内さち枝・山本カヨ子・山本毅・吉原美佐・吉松澄子
【高知】
大野美恵・小野善江・鍵山佳代・竹内恵子・南條麗子・萩原良子・三谷千賀子・森乃鈴
【福岡】
柴田美都・城後朱美・もりともみち
【佐賀】
古賀由美子
【熊本】
いわさき楊子・興呂木和朗・阪本ちえこ
【宮崎】
稲毛寛・棧舜吉
【鹿児島】
石神紅雀
【沖縄】
渡嘉敷唯正・森山文切

計267名

徳永 政二 選(とくながせいじ・滋賀県・びわこ番傘川柳会所属)
佳作44 クレヨンの線一本を離さない 京都府 西田雅子
佳作43 水平線 色鉛筆がよく馴染む 青森県 松山芳生
佳作42 いろいろあってこの線は黒いのよ 大阪府 小原由佳
佳作41 大好きな線は静かなひらがな 兵庫県 妹尾凛
佳作40 一線を超える助走をつけている 愛媛県 柳田かおる
佳作39 川の字のままに流れてゆきました 兵庫県 八上桐子
佳作38 どの線もみんな海へと辿り着く 愛知県 今村美根子
佳作37 混線が続く 母との糸電話 山形県 伊東マコ
佳作36 雨の音いい曲線になっている 長野県 小池孝一
佳作35 あきらめてみーんな線にしてしまう 福井県 天谷 由紀子
佳作34 点と線だけで遊ぶよ雨の日は 愛知県 丸山 進
佳作33 父はもうチョークの線を出てしまい 滋賀県 峯裕見子
佳作32 近頃わたし線が一本足りないの 大阪府 田口和代
佳作31 きっとそう明るい点線ですもの 東京都 伊藤こうか
佳作30 乗りますか細くいびつな線ですが 石川県 岡本聡
佳作29 輪郭を点線にする日曜日 愛知県 丹下 純
佳作28 裸婦像の線むらさきにむらさきに 奈良県 きむらまさこ
佳作27 広重の雨に私も濡れかかる 愛媛県 高橋こう子
佳作26 五線譜に戻って来ない赤トンボ 宮城県 渡辺忠一
佳作25 視線には視線で返す 混線す 京都府 中野六助
佳作24 夕焼けがグニャリと曲げる地平線 青森県 村上あつこ
佳作23 水平線は蝙蝠だった なんて知らない 兵庫県 江口 ちかる
佳作22 この線ははみ出すために引いてある 北海道 松木 秀
佳作21 ガタピシのガタの線から逃げなさい 福島県 中野敦子
佳作20 ちがいます芳麗線と申します 愛媛県 高橋こう子
佳作19 線と線重ね夫婦になりました 青森県 土田雅子
佳作18 脚線で分けるプリンセスとプリン 愛知県 猫田 千恵子
佳作17 その先も一本線でいるススキ 長野県 小池孝一
佳作16 針金アートを解きたくなる夕べ 神奈川県 加藤ゆみ子
佳作15 線だけになった 大人しくなった 青森県 笹田かなえ
佳作14 細いっちゃ細いけれども一直線 青森県 盒鏡姥
佳作13 頬杖は線を集めている時間 東京都 柳本々々
佳作12 輪郭を軽くなるまで撫でている 青森県 熊谷冬鼓
佳作11 あと二回使える光線をもらう 滋賀県 北村幸子
佳作10 どの線を引いても父は出てこない 愛知県 青砥和子
佳作9 線いっ本消したらわっと咲きました 青森県 中村誠子
佳作8 ま、いいんじゃねと水に書いた線 滋賀県 峯裕見子
佳作7 試し書きしてきた  とも子  とも子 岩手県 徳田ひろ子
佳作6 生きてるよ線の通りに切ってみて 大阪府 竹井 紫乙
佳作5 白線から下がってお生きください 神奈川県 岡田 弘子
佳作4 水平線にあふれる水を汲みに行く 大阪府 寺川弘一
佳作3 もうとうに線から足は出ていたの 滋賀県 高野久美子
佳作2 ステンレス製琴線に換えました 高知県 森乃鈴
佳作1 波だったことを静かに語る線 徳島県 徳長 怜
       
秀逸5 線を引きました―夜になりました 愛知県 猫田 千恵子
秀逸4 一本の線です 文句ありますか 宮城県 須川柊子
秀逸3 ストローで水平線を吸い上げる 長野県 興津幸代
秀逸2 もともとは直線だった気がします 京都府 河村啓子
秀逸1 どの線を消せば水辺に出れますか 奈良県 岡谷 樹
       
特選 くつ下の伝線 蛍でていった 静岡県 米山明日歌

選評

 選考基準がいつからか、わかるわからないから感じる感じないに移っていったように思う。
 そしてそこに、味わいがあるか、言葉 が生きているか、新しいか、おもしろいがあるかどうかである。
 十佐一賞には、それらに答えてくれる 作品が多く集まっている。ありがたいことである。

【秀逸】
線を引きましたー夜になりました

 ここは罫線が生きている。
 どんな日常を送っても、夜の大きさにはかなわない。そしてまた、かなわない朝がくる。

一本の線です 文句ありますか

  線はいろいろである。たとえその線が滲んでいようがかすれていようが、その人の線であれば、個性、持ち味であれば、それはもう誰も文句は言えない。

ストローで水平線を吸い上げる

 シュールな絵が浮かぶ「吸い上げる」がおもしろい。水平線を眺めながらのひとときであれば、コップの中のストローはこんなこともする。

もともとは直線だった気がします

 仕方なくゆがんでしまったように伝わる「気がします」がなんともいい。生きるとはこういうことかもしれないと思いながら、まっすぐだった頃をふり返る。

どの線を消せば水辺に出れますか

 毎日が絡みに絡んでわからなくなってしまった。もっと自由でありたい、解放されたいと「水辺」を思う。なんとかしてくれそうな「水辺」を探す。

【特選】
くつ下の伝線 蛍でていった

 「蛍」が見事である。
 黒いストッキングの穴を眺めながら現実を思う。そして、私の中から消えていった「蛍」を思う。暗闇の中でゆらゆらしていた夢のような「蛍」。そんな「蛍」を、もうひとりの私を追っている。

なかはら れいこ 選(なかはられいこ・岐阜県・ねじまき句会所属)
佳作44 もうとうに線から足は出ていたの 滋賀県 高野久美子
佳作43 川の字のままに流れてゆきました 兵庫県 八上桐子
佳作42 ラフランス身体の線は気にしない 宮城県 浮 千草
佳作41 不等辺三角形のおしるこ屋 青森県 鳴海賢治
佳作40 身悶えて水平線になる波線 鳥取県 藤原鬼桜
佳作39 どの線もみんな海へと辿り着く 愛知県 今村美根子
佳作38 駅へ行く線しかなくてバスが来る 滋賀県 重森恒雄
佳作37 アンダーライン大した事は書かれてない 兵庫県 小林みちよ
佳作36 哲学とは何ぞ ミルフィーユくずす 京都府 浜 純子
佳作35 路線図と話し込んだり笑ったり 埼玉県 野邊富優葉
佳作34 五線譜にのってリバプールから来た子 北海道 悠 とし子
佳作33 雨の音いい曲線になっている 長野県 小池孝一
佳作32 はみ出して線は初めて息をつく 三重県 山口亜都子
佳作31 運命線長いの逆まつげなの 福岡県 柴田美都
佳作30 ギザギザの線しか切れぬ鋏です 京都府 谷口 文
佳作29 水平線にあふれる水を汲みに行く 大阪府 寺川弘一
佳作28 一本の線を引っ張りどこまでゆこう 滋賀県 安井茂樹
佳作27 点線の点・点・点・を食べている 島根県 石橋芳山
佳作26 G線上の都合でおにぎりにします 大阪府 谷口 義
佳作25 父はもうチョークの線を出てしまい 滋賀県 峯裕見子
佳作24 もういいよねと直線はゴロ寝する 大阪府 浅井ゆず
佳作23 白線の外が銀河になってゆく 大阪府 赤松ますみ
佳作22 時間軸ずらせば々々々だらけの世 青森県 月波与生
佳作21 線を引きました―夜になりました 愛知県 猫田千恵子
佳作20 あんどぅとろわでルパンは線になる 東京都 飯島章友
佳作19 水平線見たら大阪弁になる 岡山県 福力明良
佳作18 一線を退きダンゴ虫となる 岡山県 吉原信子
佳作17 向こうにも生活のあり地平線 茨城県 岡本 恵
佳作16 軽トラに恋したみたい山陰線 鳥取県 斉尾くにこ
佳作15 十全な線の淋しくありましょう 青森県 吉田州花
佳作14 どの線を引いても父は出てこない 愛知県 青砥和子
佳作13 ほっといてほしいと線は引かれてる 奈良県 ひとり静
佳作12 二重線どこもかしこも痛いのよ 青森県 笹田かなえ
佳作11 生きてるよ線の通りに切ってみて 大阪府 竹井紫乙
佳作10 うららかにほうれい線が咲いている 愛媛県 村山浩吉
佳作9 線審と一夜を共にしてしまう 沖縄県 森山文切
佳作8 波だったことを静かに語る線 徳島県 徳長 怜
佳作7 もがいてみても線を脱げない 京都府 岩田多佳子
佳作6 細いっちゃ細いけれども一直線 青森県 盒鏡姥
佳作5 太かった線も何やらところてん 滋賀県 重森恒雄
佳作4 カーブする手前で海は振り返る 青森県 月波与生
佳作3 脚線で分けるプリンセスとプリン 愛知県 猫田千恵子
佳作2 せんよりもひだりはぼくがうごかせる 沖縄県 森山文切
佳作1 こら二組白線踏むな歯はしまえ 愛知県 林 泰行
       
秀逸5 あと二回使える光線をもらう 滋賀県 北村幸子
秀逸4 くつ下の伝線 蛍でていった 静岡県 米山明日歌
秀逸3 河馬の背の線やわらかに休園日 奈良県 清水すみれ
秀逸2 僕たちはほどけて線の一本に 愛知県 瀧村小奈生
秀逸1 ま、いいんじゃねと水に書いた線 滋賀県 峯裕見子
       
特選 江戸城をもそっと蚊取り線香せよ 京都府 岩根彰子

選評

江戸城をもそっと蚊取り線香せよ

 困ったなあと思いながら、どうしても特選から外せなかった。実に困る。どこがどのように良いと思うのかうまく説明できない。「江戸城を」で(へ?)と思い、「もそっと」でくすっと笑い「蚊取り線香せよ」で(なんじゃ、そりゃ?)と思った。映像として浮かぶのは髷を結って裃を着た殿さまが、老中かなんかに下知をする図である。戸惑いつつも「御意!」と答える老中。彼の戸惑いは私の戸惑いでもある。「蚊取り線香する」とはなんぞや? もしかしたら殿さま自身にもうまく説明ができないのではないだろうか。「もそっと、こう、もそっと。 ええい、なんとかせい!」と。そう、蚊取り線香に意味なんかないのだ。もっといえば比喩ですらない。それでも、目下のものは無意味で理不尽な要望に応えねばならない。江戸時代だろうが、現代だろうが、そういうことは、ある。ともあれ、誰かと何かを語り合いたくなるような一句であった。

ま、いいんじゃねと水に書いた線

 若者言葉を無理して使うと、ちょっとイタい作品になりがち。この句の自然さは、主体の所作が目に浮かぶからかもしれない。「ま、いいんじゃね」の「ま」一音がこの句の肝だと思う。

僕たちはほどけて線の一本に

 繭とかセーターとかの身になって作ってみました、的な一句。マンガチックでありながら、ほどよい抒情もただよう。題に真っ向から立ち向かったところが潔いとも思った。

河馬の背の線やわらかに休園日

 河馬の背中にあたるやわらかな日差しが見えるような。指先で背をなぞるかのような、繊細さが魅力的だった。

くつ下の伝線 蛍でていった

 まっさきに和泉式部の歌を思った。エロティックになだれ込むところを「伝線」という現実がぎりぎり救っているのではないかと思う。

あと二回使える光線をもらう

 数字のおもしろさを再認識させてもらった。「あと二回」の二は、あらかじめ失われている「一」を読者に想像させてくれる。

樋口 由紀子 選(ひぐちゆきこ・兵庫県・川柳カード 代表)
佳作44 ストローで水平線を吸い上げる 長野県 興津幸代
佳作43 放物線描きもうじき着地点 福岡県 もりともみち
佳作42 視線には視線で返す 混線す 京都府 中野六助
佳作41 スリーサイズ鉋と鑿の一騎討ち 千葉県 老沼正一
佳作40 丹田を立てて確かな線になる 奈良県 中村せつこ
佳作39 水平線は蝙蝠だった なんて知らない 兵庫県 江口ちかる
佳作38 一筆書の星が産み落したコント 愛媛県 能田勝利
佳作37 戦線を離脱したがる花ばさみ 神奈川県 加藤ゆみ子
佳作36 不条理も真っ直ぐ今朝のアイライン 茨城県 岡本 恵
佳作35 点線の点・点・点・を食べている 島根県 石橋芳山
佳作34 ていねいになぞる点線なんだから 静岡県 句ノ一
佳作33 「線」を引き「戦」が始まる儲かるぞ 京都府 与太郎
佳作32 大好きな線は静かなひらがな 兵庫県 妹尾 凛
佳作31 曲線の気まぐれ気忙しいあ行 石川県 藤村容子
佳作30 コードの中は訛の強い線ばかり 滋賀県 畑山美幸
佳作29 ぶつ切りの水平線と縄のれん 愛知県 今村美根子
佳作28 土壇場でカレーライスの仕切り線 高知県 大野美恵
佳作27 ふりむけば弓形(ゆみなり)の線 拗ねた線 京都府 山本早苗
佳作26 折れ線グラフでなければならない星座 青森県 則田 椿
佳作25 等高線に繋がれている雨の舟 京都府 内田真理子
佳作24 桃の線無期懲役を言い渡す 奈良県 板垣孝志
佳作23 眉を描く敗者復活戦のため 青森県 南山藤花
佳作22 ゼムクリップ切ない線は完壁に 高知県 小野善江
佳作21 折り線のまるみ摩周湖ともいう 北海道 澤野優美子
佳作20 唐草模様の線だけ盗まれた 京都府 森田律子
佳作19 こら二組白線踏むな歯はしまえ 愛知県 林 泰行
佳作18 哲学とは何ぞ ミルフィーユくずす 京都府 浜 純子
佳作17 北回帰線に立つぜひご一緒に 京都府 森田律子
佳作16 葉脈をほどいた線で結わえます 徳島県 徳長 怜
佳作15 水平線見たら大阪弁になる 岡山県 福力明良
佳作14 あと二回使える光線をもらう 滋賀県 北村幸子
佳作13 ステンレス製琴線に換えました 高知県 森乃 鈴
佳作12 性愛の2ミリ浮いてるキリトリ線 東京都 藤田めぐみ
佳作11 切り取り線富士山側に席を取る 北海道 酒井麗水
佳作10 陪審員たる線量器の美学 青森県 松山芳生
佳作9 曲線よ他言無用で願います 福井県 酒井暁美
佳作8 原爆ドームからのびる真っ直ぐな線 高知県 萩原良子
佳作7 ま、いいんじゃねと水に書いた線 滋賀県 峯裕見子
佳作6 スペアの首が出てくる対角線 大阪府 平井美智子
佳作5 試し書きしてきた  とも子  とも子 岩手県 徳田ひろ子
佳作4 クレヨンの線正しいと思います 京都府 和田洋子
佳作3 月の光はがんばらないと線になる 東京都 柳本々々
佳作2 古里へ平行線で入る 大阪府 徳山泰子
佳作1 線の右側 せんたく機動いてる 青森県 白戸まつ子
       
秀逸5 不等辺三角形のおしるこ屋 青森県 鳴海賢治
秀逸4 らんちゅうにつき目隠し線は極太で 青森県 濱山哲也
秀逸3 くつ下の伝線 蛍でていった 静岡県 米山明日歌
秀逸2 脚線で分けるプリンセスとプリン 愛知県 猫田千恵子
秀逸1 小学校で習ったはずの線が無い 滋賀県 北村幸子
       
特選 江戸城をもそっと蚊取り線香せよ 京都府 岩根彰子

選評

 特選にいただいた< 江戸城をもそっと蚊取り線香せよ>は、実は一回目の選も二回目の選のときも素通りしていた。それが三回目の見直しのときにびびっときた。気になるとどんどん気になる度が増幅し、没句から特選になった。アニメ的印象があり、私とは全く違う作者の目を感じた。家庭で使用する小さな蚊取り線香ではなく、巨大は渦巻き状の蚊取り線香で江戸城を燻煙する映像が思い浮かんだ。それがなぜ、なんのために、どうしたという説明はいらない。「もそっと」がなにやら妖しくキュートで確かに「もう少し」と思った。
 川柳とはこういうものだという、暗黙の見解のようなものが私の中にある。たぶん、その見解が一回目二回目の選では幅をきかしていた。だから、受け入れがたいものがあったのだろう。「線」という題を与えられると「線」をどう捉えるか、「線」からどれだけ飛躍しているか、などをつい考えて選をしてしまう。しかし、「線」をいかに使っても自由なのである。そんな肝心なことを忘れていた。特選句は作者独自の「線」の作品である。安易に共感も、簡単に一体化もできない。それは集句の中で異質であり、際立っていた。

 <小学校で習ったはずの線が無い>は「あれっ」とか「おやっ」と思うことが多くなった昨今の実感を上手く引き出している。「線」の題詠として見事である。 <パチンコ屋オヤ貴方にも影がない  中村冨二>を思い出した。たぶん冨二の句も当時としては異質で飛び抜けた句であっただろう。しかし、現在は川柳としてその範疇にすっぽりと入っている。川柳は動いている。もっともっと動いてほしいと思った。

広瀬 ちえみ 選(ひろせちえみ・宮城県・杜人 所属)
佳作44 乗りますか細くいびつな線ですが 石川県 岡本 聡
佳作43 ま、いいんじゃねと水に書いた線 滋賀県 峯裕見子
佳作42 棒線の個所がただ今炎上中 北海道 岩間啓子
佳作41 やわらかな線になったら僕が死ぬ 岩手県 熊谷岳朗
佳作40 二三本線を引いたら消えました 大阪府 谷口 義
佳作39 老眼鏡かけて生命線を見る 熊本県 興呂木和朗
佳作38 直線は笑いたくない 笑えない 大阪府 嶋澤喜八郎
佳作37 ほらごらんじっとみてたらとけていく 京都府 和田洋子
佳作36 せんよりもひだりはぼくがうごかせる 沖縄県 森山文切
佳作35 曲線よ他言無用で願います 福井県 酒井暁美
佳作34 二重線どこもかしこも痛いのよ 青森県 笹田かなえ
佳作33 境界線跨いだ方が勝ちですよ 青森県 渡邊こあき
佳作32 河馬の背の線やわらかに休園日 奈良県 清水すみれ
佳作31 五線譜に戻って来ない赤トンボ 宮城県 渡辺忠一
佳作30 波だったことを静かに語る線 徳島県 徳長 怜
佳作29 小学校で習ったはずの線が無い 滋賀県 北村幸子
佳作28 もうとうに線から足は出ていたの 滋賀県 高野久美子
佳作27 破線には種を蒔くべし笑うべし 京都府 内田真理子
佳作26 唇からLINE 耳朶からカノン 青森県 奈良一艘
佳作25 私の白いチョークはここにある 青森県 にじの真美
佳作24 向こうにも生活のあり地平線 茨城県 岡本 恵
佳作23 混み合っています感情2号線 愛媛県 吉松澄子
佳作22 まなざしが背に刺さって抜けません 大坂府 山里はるえ
佳作21 線だけになった 大人しくなった 青森県 笹田かなえ
佳作20 もともとは直線だった気がします 京都府 河村啓子
佳作19 線を引きました―夜になりました 愛知県 猫田 千恵子
佳作18 まっすぐな線になるまで待ちましょう 宮城県 須川柊子
佳作17 一本の線です 文句ありますか 宮城県 須川柊子
佳作16 なみ線を吐きました私の大きさの 兵庫県 宮沢 青
佳作15 脚線で分けるプリンセスとプリン 愛知県 猫田千恵子
佳作14 G線上の都合でおにぎりにします 大阪府 谷口義
佳作13 たどって行けばいいのですね この線 大阪府 雨森茂喜
佳作12 お静かにそろそろ線が唄い出す 愛媛県 能田勝利
佳作11 点線に囲まれて弁護士を呼ぶ 愛知県 安藤なみ
佳作10 くつ下の伝線 蛍でていった 静岡県 米山明日歌
佳作9 一本の線で昇っていかはった 大阪府 川田由紀子
佳作8 クレヨンの線正しいと思います 京都府 和田洋子
佳作7 切り取り線富士山側に席を取る 北海道 酒井麗水
佳作6 路線図と話し込んだり笑ったり 埼玉県 野邊富優葉
佳作5 不等辺三角形のおしるこ屋 青森県 鳴海賢治
佳作4 ストローで水平線を吸い上げる 長野県 興津幸代
佳作3 桃の線無期懲役を言い渡す 奈良県 板垣孝志
佳作2 一線を越えてくるかいかぐや姫 長野県 樹萄らき
佳作1 コロッケが好きですか ハイ 合格 青森県 碾鸛石
       
秀逸5 線の右側 せんたく機動いてる 青森県 白戸まつ子
秀逸4 水平線見たら大阪弁になる 岡山県 福力明良
秀逸3 センターラインから海に出るオムライス 青森県 三浦蒼鬼
秀逸2 頬杖は線を集めている時間 東京都 柳本々々
秀逸1 輪郭は宇宙船です帽子です 大阪府 小川佳恵
       
特選 あと二回使える光線をもらう 滋賀県 北村幸子

選評

  応募数533句という膨大な数の作品に向き合ったが、今回は突きつける短剣のような作品が少なかった。前回指摘した固有名詞があまりなかった(笑)からだろうか? そのため特選に悩んだ。

特選
あと二回使える光線をもらう

 どんな光線で、何をするためのものなのか読み手は想像するしかない。数詞はどれでも当てはまる作品だったり、あるいはことばの音数を合わせるためのものだったりするが、この作品の「二回」は動かないと思った。一回ならせっぱつまっている。三回なら余裕がありすぎる。二回だから、一度失敗すれば崖っぷち。たぶん何かをしとめるための光線なのだろう。拳銃に弾が二発しか入っていないようなスリル感もある。そして作者は崖っぷちに立たされるだろうことを察知している。

秀逸 
輪郭は宇宙船です帽子です

 空に浮かぶ物体を描いたシュールな絵のような作品だ。ただそれだけで意味をたどることを読み手に禁じているような気がする。それでもどこかに行こうとしている(どこかは不明だが)ことが、感じられる。

秀逸 
頬杖は線を集めている時間

 物体は線の集まりだと理解できるが、思考も線の集まりだと気づかされたことの驚きが新鮮だった。線が形になり、決心させたり、問題の解決に導いたりするまでの時間。一句になるまでの時間かもしれない。

秀逸 
センターラインから海に出るオムライス

 海に向かって飛んでいくオムライス(日常の象徴として)を想像した。もしかしたらこの作品のことばの取り合わせは、策略的と捉えられるかもしれない。読み手にインパクトを与えるには、取り合わせが重要だが、解らなすぎても、解りすぎてもいけない。そんな「線」があることを提示している作品だ。

秀逸 
水平線見たら大阪弁になる

 肩の力を抜いた、それでいて技巧を感じさせない技巧を軽く出している。ほっとしたときに出てくる大阪弁。では、大阪弁の他にはないだろうかとも考えた。

秀逸 
線の右側 せんたく機動いてる

 では左側はどうなんだろうと想像させる作品だ。左側は空想の場所だと私は考えた。体半分はせんたく機を気にしているが、もう半分は日常からすこし浮いている。せんたく機だからいいのだ。なぜならせんたく機は黙って仕事をしてくれる、手を貸さなくていいのだから。掃除機でも鍋でもだめなのである。私にはいちばん好きな句でした。

佐久間裕子 選(さくまゆうこ・滋賀県・第20回杉野十佐一賞受賞)
佳作44 罫線をはみ出す愛の字の気まま 奈良県 清水すみれ
佳作43 クレヨンの線一本を離さない 京都府 西田雅子
佳作42 境界線跨いだ方が勝ちですよ 青森県 渡邊こあき
佳作41 走り過ぎです破線準備発令 神奈川県 岡田弘子
佳作40 あんどぅとろわでルパンは線になる 東京都 飯島章友
佳作39 G線上の都合でおにぎりにします 大阪府 谷口 義
佳作38 カーブする手前で海は振り返る 青森県 月波与生
佳作37 密会の森に停滞する前線 青森県 佐藤雅秀
佳作36 棒線で片付けられる氏素性 青森県 まみどり
佳作35 今日もまた境界線を泡立てる 愛媛県 郷田みや
佳作34 なみ線を吐きました私の大きさの 兵庫県 宮沢 青
佳作33 焼きあがるまでの点線の回廊 宮城県 勝又明城
佳作32 流線型にされる赤面性のまま 青森県 きさらぎ彼句吾
佳作31 運命線長いの逆まつげなの 福岡県 柴田美都
佳作30 切取り線 そこからスタートするカオス 山形県 伊東マコ
佳作29 横一線だった生煮えの肉だった 大阪府 上嶋幸雀
佳作28 地平線をたたむ父ははが匂う 石川県 藤村容子
佳作27 唐草模様の線だけ盗まれた 京都府 森田律子
佳作26 谷折りの線に一先ず寝かす愚痴 青森県 鈴木みさを
佳作25 身悶えて水平線になる波線 鳥取県 藤原鬼桜
佳作24 生き様の線いっぽんが嘘くさい 石川県 表よう子
佳作23 頬杖は線を集めている時間 東京都 柳本々々
佳作22 一筆書きなぞるあいだに決めるから 京都府 山本知佳子
佳作21 針金アートを解きたくなる夕べ 神奈川県 加藤ゆみ子
佳作20 父はもうチョークの線を出てしまい 滋賀県 峯裕見子
佳作19 葉脈をほどいた線で結わえます 徳島県 徳長 怜
佳作18 センターラインから海に出るオムライス 青森県 三浦蒼鬼
佳作17 子午線を越えると痛みだす海馬 大阪府 小林康浩
佳作16 K線に乗ると海軍カレー臭 大阪府 弘津秋の子
佳作15 意味もなく直線なぞる 冬になる 奈良県 安土理恵
佳作14 夢をみる消えない線は線として 青森県 中村誠子
佳作13 頃合いにあなたの線にまぎれこむ 奈良県 きむらまさこ
佳作12 紅玉をかじりゼロ線になった 北海道 伊藤寿子
佳作11 土壇場でカレーライスの仕切り線 高知県 大野美恵
佳作10 江戸城をもそっと蚊取り線香せよ 京都府 岩根彰子
佳作9 パロディーが毛細血管を巡る 神奈川県 杉山太郎
佳作8 不等辺三角形のおしるこ屋 青森県 鳴海賢治
佳作7 透明になるまで正の字を刻む 静岡県 米山明日歌
佳作6 やわらかな線になったら僕が死ぬ 岩手県 熊谷岳朗
佳作5 雨三日切り取り線がむず痒い 青森県 熊谷冬鼓
佳作4 時間軸ずらせば々々々だらけの世 青森県 月波与生
佳作3 垣根ない宙を信じたのが不覚 福島県 坪内照光
佳作2 唇からLINE 耳朶からカノン 青森県 奈良一艘
佳作1 くつ下の伝線 蛍でていった 静岡県 米山明日歌
       
秀逸5 塩サンマ一匹塩サンマ二匹から破線 青森県 奈良一艘
秀逸4 ほうれい線消えて三日月から 雫 大阪府 笠嶋恵美子
秀逸3 生傷のひとつが喉にあるけしき 新潟県 新井笑葉
秀逸2 鱗ポロポロエンドロールの地平線 愛媛県 西村寛子
秀逸1 らんちゅうにつき目隠し線は極太で 青森県 濱山哲也
       
特選 太かった線も何やらところてん 滋賀県 重森恒雄

選評

 何日も何日も迷いながら見直して、私の心に沈殿し何かの拍子にふっと浮かんでくる句を選ばせて頂きました。

特選 
太かった線も何やらところてん

 選の初めは迷ったが、途中から私の中で特選の地位を確固たるものにした句。作者にとって第一印象は「太かった」ものが「ところてん」という発見に辿り着く。「何やら」に作者の気持ちが見えて、いい。天突きと一本のところてんでできたこの句は、簡潔さとおかしさが魅力だ。
 初めはこうだと思っていたものが、実は違っていた。良きにも悪しきにも通じる。物事の本質をみるのがむずかしいことを上手く読み込んでいる。

秀1 
らんちゅうにつき目隠し線は極太で

 楽しい句。「につき」が効いている。この語と「極太で」の止め方がこの句を勢いのあるものにしている。金魚に目隠し線なんてばかばかしいが、人や物の特性に対応することを含んでいる。

秀2 
鱗ポロポロエンドロールの地平線

 一読して綺麗で大きな情景が見え、胸のすく思いがした。鱗雲がポロポロ、と映画のエンドロールに喩えた感性が素敵。

秀3
生傷のひとつが喉にあるけしき

 「けしき」に脱帽。喉の生傷には怖い印象を持つが、「けしき」には冷静さがある。何らかの致命傷ほどのこと(幅広く想像できるが)を客観視している。この句によって様々な考えを巡らされた。深い句。

秀4 
ほうれい線消えて三日月から 雫

 ありふれたほうれい線を中七以降につなげた所が見事。一マスあけたことで、月の繊細な先端から落ちる“ポタッ”という音が聞こえ、見えてくる。

秀5 
塩サンマ一匹塩サンマ二匹から破線

 文字も着想も実にインパクトがある。面白い。今では何百ものさんまが私の脳裏にすみついた。日常の習慣をうまく表現している句。

む さ し 選(むさし・青森県・おかじょうき川柳社代表)
佳作44 まっすぐに線が引けないまま老いる 長野県 興津幸代
佳作43 眉を描く敗者復活戦のため 青森県 南山藤花
佳作42 ていねいになぞる点線なんだから 静岡県 句ノ一
佳作41 線だけになった 大人しくなった 青森県 笹田かなえ
佳作40 生きてるよ線の通りに切ってみて 大阪府 竹井紫乙
佳作39 あきらめてみーんな線にしてしまう 福井県 天谷由紀子
佳作38 流線型にされる赤面性のまま 青森県 きさらぎ彼句吾
佳作37 真っすぐになろうなろうと曲がる線 北海道 小林碧水
佳作36 まっすぐな線になるまで待ちましょう 宮城県 須川柊子
佳作35 谷折りの線に一先ず寝かす愚痴 青森県 鈴木みさを
佳作34 切取線の真下に溜まるゴミその他 香川県 嶋村 幸
佳作33 この線ははみ出すために引いてある 北海道 松木 秀
佳作32 一線を越えてくるかいかぐや姫 長野県 樹萄らき
佳作31 線いっ本消したらわっと咲きました 青森県 中村誠子
佳作30 まなざしが背に刺さって抜けません 大坂府 山里はるえ
佳作29 反論はしない縫い糸ピンと張る 青森県 辻井洋子
佳作28 はみ出して線は初めて息をつく 三重県 山口亜都子
佳作27 切り取り線にじっと潜んでいるマグマ 広島県 笹重耕三
佳作26 ストローで水平線を吸い上げる 長野県 興津幸代
佳作25 江戸城をもそっと蚊取り線香せよ 京都府 岩根彰子
佳作24 尊厳が水平線にぶら下がる 北海道 浪越靖政
佳作23 線跨ぐ 姥捨て山へ行くつもり 秋田県 斎藤泰子
佳作22 一線を超える助走をつけている 愛媛県 柳田かおる
佳作21 境界線跨いだ方が勝ちですよ 青森県 渡邊こあき
佳作20 無視されて線から点になりました 福岡県 城後朱美
佳作19 フリーハンド陽気でおしゃべりな線だ 岩手県 鷹觜閲雄
佳作18 波だったことを静かに語る線 徳島県 徳長 怜
佳作17 鱗ポロポロエンドロールの地平線 愛媛県 西村寛子
佳作16 一本の線から君が生まれたよ 佐賀県 古賀由美子
佳作15 直線は笑いたくない 笑えない 大阪府 嶋澤喜八郎
佳作14 頃合いにあなたの線にまぎれこむ 奈良県 きむらまさこ
佳作13 唇からLINE 耳朶からカノン 青森県 奈良一艘
佳作12 水平線見たら大阪弁になる 岡山県 福力明良
佳作11 輪郭を軽くなるまで撫でている 青森県 熊谷冬鼓
佳作10 薄墨で書く草書体の吐息 愛媛県 大内せつ子
佳作9 雨の音いい曲線になっている 長野県 小池孝一
佳作8 線ふっと切れて三途の川にでる 石川県 表よう子
佳作7 ブランコが揺れる破線の中ほどで 福島県 中野敦子
佳作6 二重線どこもかしこも痛いのよ 青森県 笹田かなえ
佳作5 水平線は蝙蝠だった なんて知らない 兵庫県 江口ちかる
佳作4 折り線のまるみ摩周湖ともいう 北海道 澤野優美子
佳作3 雨三日切り取り線がむず痒い 青森県 熊谷冬鼓
佳作2 身悶えて水平線になる波線 鳥取県 藤原鬼桜
佳作1 もういいよねと直線はゴロ寝する 大阪府 浅井ゆず
       
秀逸5 破線からおっこちたのは私です 青森県 常田チャコ
秀逸4 乗りますか細くいびつな線ですが 石川県 岡本 聡
秀逸3 戦線を離脱したがる花ばさみ 神奈川県 加藤ゆみ子
秀逸2 一本の線です 文句ありますか 宮城県 須川柊子
秀逸1 もともとは直線だった気がします 京都府 河村啓子
       
特選 お静かにそろそろ線が唄い出す 愛媛県 能田勝利

選評

 第21回杉野十佐一賞に533作品のご応募をいただきました。
 およそ260人の方々が応募してくださったことになります。
 前回より応募者が約10人増え、主催者としてまことにありがたく思っています。
 みなさま、今後ともよろしくお願い申し上げます。

特選 
お静かにそろそろ線が唄い出す

 この句を最初見たとき「そんなに珍しい句ではないなあ」と思った記憶があります。そして、何となく既視感もあるような気がしました。
 ということで、この句は上位に来る作品ではなかったのです。
 ところが何回か選をやり直している内に上へ上へと上り、ついには特選になっていました。
 では、何故特選になったのでしょうか。
 それは、作者の目です。
 この句の作者は鉛筆やペンを持って紙に線を描いているのでしょう。自分の心の奥にある線をなぞるように…。なるべく意味のない線を何回も何回も…。そうしている内に「線が唄い出す」ことを知っているからです。
 ということで、私はこの句の「自分の内側を見つめる目」に惹かれたのです。
 それから、平易な言葉で平易でないことを書いているところにも好感を持ちました。

 題詠の場合ですが、例えば今回の題は「線」なので、自分が「線」そのものになってしまったり、あるいは「線」に何かをさせる句を作るのが一般的な作句法だと思います。
 そして、誌上大会にしろ大会にしろほかの応募者が考えないような句を作らないと入選できません。
 応募作を何回か読み返し、「歌(唄)う」という句が意外と少ないことに気づきました。
 選を終わってから、今回の応募作の中に「歌(唄)わせる」あるいは「歌(唄)う」という句がどれだけあるか調べたところ、「歌」が使われている句は2句、「唄」の句は1句だけでした。
 ここでもこの作品の作者の目が生きていたのでした。