◆大賞(16点)

(特)れいこ・由紀子(秀)政二・ちえみ

もう無性にキリン産みたくてたまらん

雨森 茂喜(大阪府)


 皆様ありがとうございます。とりわけ、私の川柳の勉強の場、ライン句会「パンの耳」のメンバーの皆様、日ごろの「叱咤激怒」に感謝申し上げます。
 今回はちょっと作戦を立てました。題が出された後すぐには作句作業に入らず、入選作品が、強烈な筆太の文字で書かれるあの憧れのページに、不遜にも私の句が書かれているのを毎日妄想し続けました。そして一週間ほどしてから、句作りを始めました。
 そんな、イメージ(妄想)作戦が功を奏したのではないかと、秘かに思っています。(知らんけど)


◆準賞(11点)

(秀)政二・由紀子・ちえみ(佳)棋人・むさし

摩周湖を産んだ記憶はございません  飯島章友(東京都)

【9点】
(特)むさし(佳)政二・れいこ・由紀子・ちえみ
ほがらかな朝を産みたくなりました 佐々木智恵子(秋田県)
  
【8点】  
(特)ちえみ(秀)棋人
出産に立ち会っているタンバリン みつ木もも花(福井県)
  
【7点】    
(秀)ちえみ・むさし(佳)政二
母さんを産んだらあたしどうしよう 尾崎良仁(千葉県)
(秀)れいこ(佳)由紀子・ちえみ・棋人・むさし
はいごめんやっしゃと島を産み落とす 峯裕見子(滋賀県)
  
【6点】    
(秀)政二・むさし
芒野に呼ばれて月を産みにゆく 徳長 怜(徳島県)
(秀)れいこ(佳)政二・由紀子・むさし
好きになる枇杷をきゅるんと産むように 北村幸子(滋賀県)
(秀)由紀子(佳)れいこ・ちえみ・むさし
産卵の途中なんども笑ったわ 柴田美都(福岡県)
(秀)むさし(佳)政二・由紀子・ちえみ
百年後もいちど産んでくれますか 野邊富優葉(埼玉県)
(佳)政二・れいこ・由紀子・ちえみ・棋人・むさし
これからは打楽器だけを産むつもり 小沢 史(東京都)
  
【5点】    
(特)棋人
国葬は早産わたしはニュートラル 大黒谷サチエ(青森県)
(特)政二
月光に輝く『ひなた』助産院 河村啓子(京都府)
(秀)ちえみ(佳)れいこ・むさし
どこ産の蜆か歌声で分かる 北村幸子(滋賀県)
(秀)ちえみ(佳)政二・れいこ
島二つ産んで戦い真っ最中 まきこ(青森県)
(秀)れいこ(佳)由紀子・ちえみ
羽毛布団わたしの家のウクライナ にじの真美(青森県)
(秀)由紀子(佳)れいこ・むさし
流星の産み方龍の捉え方 宮井いずみ(大阪府)
(秀)政二(佳)れいこ・由紀子
日本産林檎の山は静かなり 青砥和子(愛知県)
  
【4点】    
(秀)棋人(佳)ちえみ
そのあとを産んでおくれよ鉄塔よ 尾崎良仁(千葉県)
(秀)れいこ(佳)政二
賞状のように朝陽に干す肌着 滋野さち(青森県)
(秀)むさし(佳)由紀子
ジュピターをえくぼの端で産んでみる 落合魯忠(北海道)
(秀)由紀子(佳)むさし
難産に効くはずだったイルカショー 水城鉄茶(茨城県)
(秀)むさし(佳)政二
残照へ卵を一つ産み落とす 笠嶋恵美子(大阪府)
(佳)れいこ・ちえみ・棋人・むさし
むらさきはジャズの間合に産まれます ひとり静(奈良県)
(佳)政二・れいこ・由紀子・ちえみ
ラの音はとてもノルウェー産である 吉松澄子(愛媛県)
(佳)政二・ちえみ・棋人・むさし
むらさきを産みたかったのどうしても 妹尾 凛(秋田県)
(佳)政二・れいこ・由紀子・棋人
地産地消うちは大阪出られへん 岸井ふさゑ(大阪府)
(佳)政二・れいこ・ちえみ・むさし
身に覚えない産休を取らされる 村山浩吉(愛媛県)
(佳)れいこ・由紀子・ちえみ・棋人
ポポロンに産まれなさいと言われたの 市井美春(京都府)
(佳)政二・由紀子・ちえみ・むさし
産経新聞で包むほうれん草 中山恵子(愛知県)
  
【3点】    
(秀)棋人
産声を写真に撮って父になる 下村 修(神奈川県)
(秀)れいこ
お産婆の金歯眩しき聖五月 岩根彰子(京都府)
(秀)政二
産んだのは少女サクラは八分咲き 大黒谷サチエ(青森県)
(秀)棋人
犯人はいちじくの葉の落とし胤 奈良一艘(青森県)
(秀)由紀子
海馬にて黄色の産着畳んでる 岩根彰子(京都府)
(秀)棋人
ベルトコンベアに急かされイキんでる きさらぎ彼句吾(青森県)
(佳)政二・れいこ・棋人
朝ごとに産声あげる目玉焼 中島順子(滋賀県)
(佳)由紀子・ちえみ・棋人
産まれた意味もあたためますかコンビニで 小野善江(高知県)
(佳)政二・由紀子・ちえみ
蛇が蛇産むおかしくはないけれど 浅井ゆず(大阪府)
(佳)れいこ・ちえみ・棋人
ため息もおならも産んだことにする まみどり(青森県)
(佳)政二・由紀子・ちえみ
こんな子を産んだ記憶のない大豆 蟹口和枝(京都府)
(佳)政二・れいこ・棋人
やっぱりを何度も産んだ天の川 米山明日歌(静岡県)
(佳)由紀子・棋人・むさし
蝶を産む約束だけは守るから 米山明日歌(静岡県)
(佳)れいこ・由紀子・ちえみ
午前二時の予定ボクたちの産卵 大内せつ子(愛媛県)
(佳)由紀子・ちえみ・むさし
遠い日の朝マシュマロを産みました 斉尾くにこ(鳥取県)
(佳)政二・れいこ・むさし
灰色を産みつくし雨の灯台 八上桐子(兵庫県)
(佳)ちえみ・棋人・むさし
仙人掌はどうも孕んでいるようだ 蟹口和枝(京都府)
(佳)ちえみ・棋人・むさし
今温めてます2つ目の地球 和田洋子(京都府)
(佳)政二・由紀子・ちえみ
お静かにもうすぐ天使おりてくる 芝岡かんえもん(神奈川県)
(佳)ちえみ・棋人・むさし
セーター編むように星を産むように はるのあきこ(東京都)
(佳)由紀子・ちえみ・棋人
玉子ポッコン…お後がよろしいようで 奈良一艘(青森県)
  
【2点】    
(佳)ちえみ・棋人
パン粉つけ代理出産したらしい 村山浩吉(愛媛県)
(佳)政二・むさし
火を握る月を夜通し抱いた手で 須藤しんのすけ(青森県)
(佳)政二・由紀子
りんどうに産みつけたのはろばの耳 筏井加代子(兵庫県)
(佳)由紀子・ちえみ
玉虫厨子の産声ff 笹田かなえ(青森県)
(佳)れいこ・むさし
産声は回転ドアを出ていった 青砥和子(愛知県)
(佳)政二・むさし
産んでたらカラマーゾフは読んでない 達毘古(富山県)
(佳)棋人・むさし
あなたには産地偽装をした乳房 岡本 朧(千葉県)
(佳)由紀子・棋人
産だった馬鹿だった砂利道だった 田中 薫(青森県)
(佳)由紀子・棋人
二丁目のらくだまあるく産む らくだ 雨森茂喜(大阪府)
(佳)ちえみ・棋人
地産地消リンゴ旅に出たくなる 今村美根子(愛知県)
(佳)政二・ちえみ
レッスン1正しい卵の選び方 浪越靖政(北海道)
(佳)棋人・むさし
産道は花であふれているかしら 柴田美都(福岡県)
(佳)れいこ・由紀子
お産婆さんのおうちがあった村はずれ 熊谷冬鼓(青森県)
(佳)れいこ・ちえみ
連結をはずせば雪を産む合図 小沢史(東京都)
(佳)由紀子・むさし
九条の産毛を剃った理髪店 松木慎吾(愛媛県)
(佳)れいこ・ちえみ
ほんわかとボウフラ産んで黄昏る 酒井暁美(福井県)
(佳)由紀子・ちえみ
この次に産まれてくる時のリスト みつ木もも花(福井県)
(佳)れいこ・棋人
改札口今日も産んでるエキストラ 佐藤春子(秋田県)
(佳)政二・むさし
うれしくてかなしくて産む青い水 能登和子(大阪府)
(佳)由紀子・棋人
産立の祝いに香る蘭奢待 山内房子(愛媛県)
(佳)れいこ・由紀子
ツキサエル長き鶏舎に一万羽 柳本惠子(奈良県)
(佳)れいこ・ちえみ
モロッコで蛇を産んだという噂 黒田弥生(兵庫県)
(佳)由紀子・ちえみ
和牛ですから日本語がわかります 岡本 聡(石川県)
(佳)れいこ・ちえみ
産声はニホンオオカミだったのよ 守田啓子(青森県)
(佳)政二・むさし
白桃の産毛ほしがるサクランボ 加藤ゆみ子(神奈川県)
(佳)政二・由紀子
桃の産毛を語り合う時間給 笹重耕三(広島県)
(佳)れいこ・棋人
遡上するシシャモとラ・クンパルシータ 石橋芳山(島根県)
(佳)政二・棋人
産まれたくなかった 一度だけ言った 赤石ゆう(秋田県)
(佳)政二・れいこ
身じろぐ鶏 卵十円 旅 男(青森県)
(佳)政二・むさし
産業廃棄物だってえらそうに 𠮷田州花(青森県)
(佳)政二・ちえみ
そういえば産んだ覚えがあるような 吉松澄子(愛媛県)
(佳)政二・れいこ
産まれたい次も木蓮咲く家に 赤石ゆう(秋田県)
(佳)由紀子・ちえみ
産土をよろしく銀のすべり台 妹尾 凛(秋田県)
(佳)ちえみ・棋人
スペシャルを産んでみました  さぁどうぞ 能登和子(大阪府)
  
【1点】    
(佳)れいこ
カニカマに誘われている誕生日 中前棋人(静岡県)
(佳)棋人
産廃に問われる人間のど真ん中 川口利江(滋賀県)
(佳)政二
卵からしか産まれてこないゆで卵 西山竹里(京都府)
(佳)政二
人間でまた人間を産みたし 木戸利枝(京都府)
(佳)棋人
産道の出口でもらう星三つ 吉原美佐(愛媛県)
(佳)れいこ
さっちゃんは泳ぐみちびかれて光 中島順子(滋賀県)
(佳)むさし
寒いのよ早口ことば産んでから 宮井いずみ(大阪府)
(佳)ちえみ
好評につきホメコトバ増産中 佐々木智恵子(秋田県)
(佳)棋人
止めないで 産土神になるところ 吉田吹喜(青森県)
(佳)由紀子
ガチャガチャポン産まれて直ぐの名前ポン 三好光明(愛知県)
(佳)むさし
無事故無違反そのまま母になりました 斉尾くにこ(鳥取県)
(佳)むさし
You Win! You Win! 搾乳器のリズム 湊 圭伍(愛媛県)
(佳)政二
十三夜 娘は母になりました 日下部敦世(千葉県)
(佳)棋人
「ポイントを付与‼️」で産科に誘われる 三浦蒼鬼(青森県)
(佳)由紀子
名古屋産ういろうを、ああ丸かぶり 大山ありる(兵庫県)
(佳)政二
産神のしばらく涙止まらない 山口亜都子(三重県)
(佳)れいこ
ぶつぶつと産廃になるお仏壇 中川喜代子(愛知県)
(佳)由紀子
無産オタクはねるねるねるねのね 明名 蝶(愛知県)
(佳)むさし
産みたての卵に夢は語るまい 高杉 力(大阪府)
(佳)政二
老いた産声はだかの母抱けば 八上桐子(兵庫県)
(佳)れいこ
貝ボタンの産地たましひ在る処 笹田かなえ(青森県)
(佳)棋人
子供食堂明日の天才きっといる 村井規子(青森県)
(佳)棋人
エロチックに産毛我慢などしても 石橋芳山(島根県)
(佳)由紀子
あきらめたころに九月の声で産む はるのあきこ(東京都)
(佳)政二
何色に染めるか産着汽車が出る 安井紀代子(愛知県)
(佳)棋人
立て膝のママの産道から見る夕陽 大野美恵(高知県)
(佳)棋人
産神の足踏み麦を踏んでいる 山口亜都子(三重県)
(佳)れいこ
手土産の鎌倉殿がよく喋る 松木慎吾(愛媛県)
(佳)棋人
にわとりが産みにわとりを産む卵 西山竹里(京都府)
(佳)由紀子
持てあますアンティパストの生たまご 須藤しんのすけ(青森県)
(佳)むさし
ふわふわの夢を包んでいる産毛 竹尾佳代子(三重県)
(佳)むさし
産道を通った時に見えた宇宙(そら) 高木まあこ(青森県)
(佳)由紀子
PLEEASE 紅天女 REBOOORN 河野潤々(北海道)
(佳)れいこ
それぞれの産まれを持ちてひとつ家 長根睦夫(青森県)
(佳)むさし
産卵は満月深夜海の中 大西 進(愛媛県)
(佳)れいこ
オムレツに紛れ込ませる黒歴史 峯島 妙(大阪負)
(佳)棋人
産声は「おれにまかせておけ」だった 丸山 進(愛知県)
(佳)ちえみ
細胞は分裂のたびソをならす 四ツ屋いずみ(北海道)
(佳)政二
踏んじゃだめあなたの産んだ蟷螂を 峯裕見子(滋賀県)
(佳)むさし
緑から生まれた赤に阻まれる 葉 閑女(青森県)
(佳)れいこ
産みたてのたまごに諭されています 赤松ますみ(大阪府)
(佳)むさし
産んだ子のそれぞれにある∞ 石倉多美子(石川県)
(佳)棋人
出不精を産直市に出してみる 笹重耕三(広島県)
(佳)ちえみ
綿雲を産んでたっぷり添い寝する 今村美根子(愛知県)
(佳)れいこ
オタマジャクシ孵る孵る孵る蛙 小林康浩(大阪府)
(佳)政二
産み足りぬもののひとつに私自身 まみどり(青森県)
(佳)むさし
何一つ産めないがらんどうになる 平尾正人(鳥取県)
(佳)棋人
バーボンが産み落としたの薬指 大内せつ子(愛媛県)
(佳)れいこ
ABC土産話の選択肢 森乃 鈴(高知県)
(佳)由紀子
流氷りゅうひょう産科の人がやってくる 澤野優美子(北海道)
(佳)れいこ
風産まる深い緑を眠らせて 前中知栄(京都府)
(佳)むさし
ざらざらと十一月の夢精卵 日下部敦世(千葉県)
(佳)由紀子
産直でバカ売れしてる僕の嘘 ひとは(青森県)
(佳)棋人
海が波打つたび満月が産まれ 平尾正人(鳥取県)
(佳)れいこ
お借りします産休中の入道雲 中山恵子(愛知県)
(佳)政二
産まれ直すあたし湯船の仁王立ち 藤田めぐみ(東京都)
(佳)棋人
地球青くまあるく産んでくれたのに 滋野さち(青森県)
(佳)れいこ
東京も知らず産まれて死ぬ手はず 佐藤春子(秋田県)
(佳)政二
産もうって決めたあの日に戻りたい 林 操(滋賀県)
(佳)棋人
産道を抜けてくジェットコースター 山内房子(愛媛県)
(佳)ちえみ
行間に産んだ卵に聞いてみる 山本知佳子(京都府)
(佳)れいこ
キラキラの産声あげて朝だって ひとは(青森県)
(佳)ちえみ
ペラペラに生きる純国産の紙 藤井智史(岡山県)
(佳)むさし
産道は閉鎖しました靴一つ 酒井暁美(福井県)
(佳)政二
産まれ居るいつもの道のもみじ狩り 長根睦夫(青森県)
(佳)由紀子
鬣も産毛もなくてつつがなし いわさき楊子(熊本県)
(佳)むさし
戦場に座産土偶の息みかな 守田啓子(青森県)
(佳)むさし
男の子に産まれ女に脱皮する 佐藤雅秀(青森県)
(佳)棋人
たのしくてくるしくてなおペンをもつ 大谷のり子(滋賀県)
(佳)政二
だれにでもあった明日という産毛 谷口 文(京都府)
(佳)むさし
割り算の余りがわたくしの遺産 三浦蒼鬼(青森県)
(佳)由紀子
欠けているフクシマ産のチョコレート 西沢葉火(長野県)
(佳)政二
産直のリンゴは固いなんて言う 吉田吹喜(青森県)
(佳)むさし
満月に抱かれ人魚を産む海月 佐藤寿見子(青森県)
(佳)由紀子
彼岸花クローンクローンクローン 谷沢けい子(新潟県)
(佳)棋人
ハートから産み落としてた桜餅 芝岡かんえもん(神奈川県)
(佳)ちえみ
根っからの津軽人ですヤーヤドー 稲見則彦(青森県)
(佳)由紀子
産まない。産みます!産むとき%産めば?(産め) 早川柚香(岐阜県)
(佳)むさし
駄馬ばかり産んで柔らかい土 河村啓子(京都府)
(佳)れいこ
出生届の本籍の夜 湊 圭伍(愛媛県)

 

 

第27回杉野十佐一賞
応募者ご芳名

【北海道(6)】

落合魯忠・鎌田 誠・河野潤々・澤野優美子・浪越靖政・四ツ屋いずみ

【青森県(32)】

石澤はる子・稲見則彦・井上健蔵・川嶋 翔・きさらぎ彼句吾・熊谷冬鼓・坂本清乃・笹田かなえ・笹田隆志・佐藤雅秀・佐藤寿見子・沢田百合子・滋野さち・須藤しんのすけ・大黒谷サチエ・高木まあこ・田中 薫・旅男・長根睦夫・奈良一艘・にじの真美・ひとは・まきこ・まみどり・三浦蒼鬼・村井規子・村上あつこ・守田啓子・葉 閑女・𠮷田州花・吉田吹喜・渡邊こあき

【宮城県(1)】

勝又明城

【秋田県(6)】

赤石ゆう・一帆・佐々木智恵子・佐藤春子・佐渡真紀子・妹尾 凛

【茨城県(1)】

水城鉄茶

【埼玉県(4)】

岡村水無月・織田和子 ・野邊富優葉・山田こいし

【千葉県(4)】

岡本 朧・尾崎良仁・日下部敦世・渡辺柳山

【東京都(6)】

飯島章友・小沢 史・辻述・はるのあきこ・藤田めぐみ・宮本彩太郎

【神奈川県(4)】

風生冬子・加藤ゆみ子・芝岡かんえもん・下村 修

【新潟県(1)】

谷沢けい子

【富山県(1)】

達毘古

【石川県(3)】

石倉多美子・岡本 聡・藤村容子

【福井県(2)】

酒井暁美・みつ木もも花

【長野県(2)】

西沢葉火・丸山健三

【岐阜県(1)】

早川柚香

【静岡県(4)】

句ノ一・佐野由利子・中前棋人・米山明日歌

【愛知県(14)】

青砥和子・明名 蝶・安藤なみ・今村美根子・位田仁美・長岡みゆき・中川喜代子・中山恵子・松長一歩・丸山 進・愛未知・三好光明・安井紀代子・瑠珂

【三重県(3)】

青砥たかこ・竹尾佳代子・山口亜都子

【滋賀県(9)】

大谷のり子・片山美津子・川口利江・北村幸子・重森恒雄・中島順子・林操・峯 裕見子・安井茂樹

【京都府(11)】

市井美春・岩根彰子・蟹口和枝・河村啓子・木戸利枝・谷口 文・西山竹里・藤本花枝・前中知栄・山本知佳子・和田洋子

【大阪府(14)】

赤松ますみ・浅井ゆず・雨森茂喜・小川佳恵・小原由佳・笠嶋恵美子・岸井ふさゑ・小林康浩・高杉 力・能登和子・弘津秋の子・まつりぺきん・峯島 妙・宮井いずみ

【兵庫県(5)】

筏井加代子・大山ありる・黒田弥生・妻木寿美代・八上桐子

【奈良県(2)】

ひとり静・柳本惠子

【鳥取県(2)】

斉尾くにこ・平尾正人

【島根県(1)】

石橋芳山

【岡山県(3)】

藤井きょう・藤井智史・山﨑三千代

【広島県(1)】

笹重耕三

【徳島県(1)】

徳長怜

【愛媛県(11)】

青野 舞・大内せつ子・大西 進・田中なお・土居新山・松木慎吾・湊 圭伍・村山浩吉・山内房子・吉原美佐・吉松澄子

【高知県(3)】

大野美恵・小野善江・森乃 鈴

【福岡県(2)】

柴田美都・もりともみち

【熊本県(1)】

いわさき楊子

計161名

 たくさんのご応募、ありがとうございました。

徳永政二 選(とくながせいじ・滋賀県・びわこ番傘川柳会所属)

佳作44 やっぱりを何度も産んだ天の川 米山明日歌(静岡県)
佳作43 産業廃棄物だってえらそうに 𠮷田州花(青森県)
佳作42 産直のリンゴは固いなんて言う 吉田吹喜(青森県)
佳作41 そういえば産んだ覚えがあるような 吉松澄子(愛媛県)
佳作40 だれにでもあった明日という産毛 谷口 文(京都府)
佳作39 百年後もいちど産んでくれますか 野邊富優葉(埼玉県)
佳作38 産まれたい次も木蓮咲く家に 赤石ゆう(秋田県)
佳作37 産まれ居るいつもの道のもみじ狩り 長根睦夫(青森県)
佳作36 うれしくてかなしくて産む青い水 能登和子(大阪府)
佳作35 産もうって決めたあの日に戻りたい 林 操(滋賀県)
佳作34 蛇が蛇産むおかしくはないけれど 浅井ゆず(大阪府)
佳作33 産まれ直すあたし湯船の仁王立ち 藤田めぐみ(東京都)
佳作32 ほがらかな朝を産みたくなりました 佐々木智恵子(秋田県)
佳作31 産まれたくなかった 一度だけ言った 赤石ゆう(秋田県)
佳作30 白桃の産毛ほしがるサクランボ 加藤ゆみ子(神奈川県)
佳作29 産み足りぬもののひとつに私自身 まみどり(青森県)
佳作28 地産地消うちは大阪出られへん 岸井ふさゑ(大阪府)
佳作27 レッスン1正しい卵の選び方 浪越靖政(北海道)
佳作26 身じろぐ鶏 卵十円 旅 男(青森県)
佳作25 踏んじゃだめあなたの産んだ蟷螂を 峯裕見子(滋賀県)
佳作24 桃の産毛を語り合う時間給 笹重耕三(広島県)
佳作23 身に覚えない産休を取らされる 村山浩吉(愛媛県)
佳作22 お静かにもうすぐ天使おりてくる 芝岡かんえもん(神奈川県)
佳作21 これからは打楽器だけを産むつもり 小沢 史(東京都)
佳作20 こんな子を産んだ記憶のない大豆 蟹口和枝(京都府)
佳作19 むらさきを産みたかったのどうしても 妹尾 凛(秋田県)
佳作18 島二つ産んで戦い真っ最中 まきこ(青森県)
佳作17 産んでたらカラマーゾフは読んでない 達毘古(富山県)
佳作16 産経新聞で包むほうれん草 中山恵子(愛知県)
佳作15 何色に染めるか産着汽車が出る 安井紀代子(愛知県)
佳作14 灰色を産みつくし雨の灯台 八上桐子(兵庫県)
佳作13 残照へ卵を一つ産み落とす 笠嶋恵美子(大阪府)
佳作12 老いた産声はだかの母抱けば 八上桐子(兵庫県)
佳作11 産神のしばらく涙止まらない 山口亜都子(三重県)
佳作10 十三夜 娘は母になりました 日下部敦世(千葉県)
佳作09 りんどうに産みつけたのはろばの耳 筏井加代子(兵庫県)
佳作08 火を握る月を夜通し抱いた手で 須藤しんのすけ(青森県)
佳作07 朝ごとに産声あげる目玉焼 中島順子(滋賀県)
佳作06 好きになる枇杷をきゅるんと産むように 北村幸子(滋賀県)
佳作05 母さんを産んだらあたしどうしよう 尾崎良仁(千葉県)
佳作04 ラの音はとてもノルウェー産である 吉松澄子(愛媛県)
佳作03 賞状のように朝陽に干す肌着 滋野さち(青森県)
佳作02 人間でまた人間を産みたし 木戸利枝(京都府)
佳作01 卵からしか産まれてこないゆで卵 西山竹里(京都府)
   
秀逸5 日本産林檎の山は静かなり 青砥和子(愛知県)
秀逸4 産んだのは少女サクラは八分咲き 大黒谷サチエ(青森県)
秀逸3 摩周湖を産んだ記憶はございません 飯島章友(東京都)
秀逸2 芒野に呼ばれて月を産みにゆく 徳長 怜(徳島県)
秀逸1 もう無性にキリン産みたくてたまらん 雨森茂喜(大阪府)
   
特選 月光に輝く『ひなた』助産院 河村啓子(京都府)

選 評

 今回も課題「産」により、土佐一賞ならではの迫力が感じられる句がたくさん集まった。
 一層、「雑詠」でもと思ったりするが、ここは競い合いの場、このままでいいと思う。ただ、毎年課題を考える大変さがある。

【秀逸】
  日本産林檎の山は静かなり

 「静かなり」がいい。平和な日本の林檎の山である。おいしい林檎をいただくことができるのも、この平和があってのこと。

  産んだのは少女サクラは八分咲き

 「少女」だから、染井吉野ではなく山桜だろうか。満開の花の下で、お父さん、お母さんと一緒に笑っている小学一年生の春。空は青い。

  摩周湖を産んだ記憶はございません

 若い頃、一度だけ摩周湖を訪れたことがある。霧がかかっていて神秘的な湖だった。「記憶はございません」がぴったりの湖。

  芒野に呼ばれて月を産みにゆく

 「産みにゆく」がおもしろい。広く知られた日本の美しい風景である。
 満月を眺めながらしばらく芒と揺れている。

  もう無性にキリン産みたくてたまらん

 動物園でも子どもたちに人気のある「キリン」。そんな個性的な表現を試みたいと思う気持ちが「たまらん」から強く伝わる。

【特選】
  月光に輝く『ひなた』助産院


 助産院につながる『ひなた』がすべてである。この名称が現実に存在しなくてもいい。創作でもかまわない。
 月光に輝く赤ちゃんの元気な声が聞こえてくる。

なかはられいこ 選(なかはられいこ/岐阜県・「ねじまき句会」所属)

佳作44 出生届の本籍の夜 湊 圭伍(愛媛県)
佳作43 身じろぐ鶏 卵十円 旅 男(青森県)
佳作42 産声はニホンオオカミだったのよ 守田啓子(青森県)
佳作41 改札口今日も産んでるエキストラ 佐藤春子(秋田県)
佳作40 遡上するシシャモとラ・クンパルシータ 石橋芳山(島根県)
佳作39 産まれたい次も木蓮咲く家に 赤石ゆう(秋田県)
佳作38 二丁目のらくだまあるく産む らくだ 雨森茂喜(大阪府)
佳作37 キラキラの産声あげて朝だって ひとは(青森県)
佳作36 午前二時の予定ボクたちの産卵 大内せつ子(愛媛県)
佳作35 島二つ産んで戦い真っ最中 まきこ(青森県)
佳作34 東京も知らず産まれて死ぬ手はず 佐藤春子(秋田県)
佳作33 お産婆さんのおうちがあった村はずれ 熊谷冬鼓(青森県)
佳作32 お借りします産休中の入道雲 中山恵子(愛知県)
佳作31 風産まる深い緑を眠らせて 前中知栄(京都府)
佳作30 ABC土産話の選択肢 森乃 鈴(高知県)
佳作29 オタマジャクシ孵る孵る孵る蛙 小林康浩(大阪府)
佳作28 ほんわかとボウフラ産んで黄昏る 酒井暁美(福井県)
佳作27 産みたてのたまごに諭されています 赤松ますみ(大阪府)
佳作26 モロッコで蛇を産んだという噂 黒田弥生(兵庫県)
佳作25 オムレツに紛れ込ませる黒歴史 峯島 妙(大阪負)
佳作24 それぞれの産まれを持ちてひとつ家 長根睦夫(青森県)
佳作23 日本産林檎の山は静かなり 青砥和子(愛知県)
佳作22 むらさきはジャズの間合に産まれます ひとり静(奈良県)
佳作21 ポポロンに産まれなさいと言われたの 市井美春(京都府)
佳作20 ツキサエル長き鶏舎に一万羽 柳本惠子(奈良県)
佳作19 手土産の鎌倉殿がよく喋る 松木慎吾(愛媛県)
佳作18 身に覚えない産休を取らされる 村山浩吉(愛媛県)
佳作17 産声は回転ドアを出ていった 青砥和子(愛知県)
佳作16 ほがらかな朝を産みたくなりました 佐々木智恵子(秋田県)
佳作15 どこ産の蜆か歌声で分かる 北村幸子(滋賀県)
佳作14 貝ボタンの産地たましひ在る処 笹田かなえ(青森県)
佳作13 灰色を産みつくし雨の灯台 八上桐子(兵庫県)
佳作12 ぶつぶつと産廃になるお仏壇 中川喜代子(愛知県)
佳作11 ため息もおならも産んだことにする まみどり(青森県)
佳作10 地産地消うちは大阪出られへん 岸井ふさゑ(大阪府)
佳作09 産卵の途中なんども笑ったわ 柴田美都(福岡県)
佳作08 朝ごとに産声あげる目玉焼 中島順子(滋賀県)
佳作07 これからは打楽器だけを産むつもり 小沢 史(東京都)
佳作06 さっちゃんは泳ぐみちびかれて光 中島順子(滋賀県)
佳作05 連結をはずせば雪を産む合図 小沢 史(東京都)
佳作04 流星の産み方龍の捉え方 宮井いずみ(大阪府)
佳作03 ラの音はとてもノルウェー産である 吉松澄子(愛媛県)
佳作02 やっぱりを何度も産んだ天の川 米山明日歌(静岡県)
佳作01 カニカマに誘われている誕生日 中前棋人(静岡県)
   
秀逸5 はいごめんやっしゃと島を産み落とす 峯裕見子(滋賀県)
秀逸4 羽毛布団わたしの家のウクライナ にじの真美(青森県)
秀逸3 お産婆の金歯眩しき聖五月 岩根彰子(京都府)
秀逸2 賞状のように朝陽に干す肌着 滋野さち(青森県)
秀逸1 好きになる枇杷をきゅるんと産むように 北村幸子(滋賀県)
   
特選 もう無性にキリン産みたくてたまらん 雨森茂喜(大阪府)

選後感

 特選
  もう無性にキリン産みたくてたまらん


なんだ、それ。と思うとともに頭の中で「猫なげるくらいが何よ本気出して怒りゃハミガキチューブしぼりきるわよ」という穂村弘の短歌が再生された。恋人どうしの喧嘩の場面であろう、この穂村の歌は相手に対する抵抗というか、攻撃が大きく的を外れていて、その弱っちさゆえに、女の子(たぶん)の渾身の怒りが伝わってきて、切ない。掲句と共通するのはわけはわからないが、過剰な何か強烈に伝わるところ。前者から伝わるものが渾身の怒りだとすれば、この句から伝わるのは圧倒的な万能感だ。感情があふれて「たまらん」ときに「産みたく」なるのもわからないし、産むにしても「キリン」なのもわからない。キリンが麒麟であれば伝説にもとづく解釈もできるけど、これはどうみても動物園にいるキリンだ。しかも象でもライオンでもない。あの首は圧倒的に産みにくそうではないか。などといかにもわかったふうな口で書いているけど、乱暴に言ってしまえば解釈なんてどうでもいい。読み手のこころを動かすのは意味じゃない。もっと圧倒的な何かだ。と、もう無性に言いたくてたまらん。

 好きになる枇杷をきゅるんと産むように

「きゅるん」のかわいらしさにやられた。枇杷はたしかにきゅるんとしてて産みやすそう。種はとくに。「胸きゅん」からきた「きゅるん」かもしれないけど、ともかくカワイイは最強なのだ。

 賞状のように朝陽に干す肌着

この「肌着」は赤ちゃんのそれだと思う。「賞状」も「朝陽」も晴れがましくて、誇らしげで、ひかりに包まれるような読後感一句だった。

 お産婆の金歯眩しき聖五月

「緑陰に三人の老婆笑へりき/西東三鬼」を想起した。ことほどさように婆と五月はよく似合う。「お産婆」と「金歯」と「聖五月」の繋がりに詩的な美しさを感じた。

 羽毛布団わたしの家のウクライナ

自分の生活のささやかなものからでも、争い事の救いがたさを訴えることはできる。日々暮らしのなかから、世界をみることができる。微力ではあるけれど無力ではないと思わされる。

 はいごめんやっしゃと島を産み落とす

関西弁のいいかげんさ(ごめんなさい)が「島を産み落とす」の大げささに負けていない。大阪のおばちゃんってこんなですよね(ごめんなさい)

樋口由紀子 選(ひぐちゆきこ/兵庫県・「晴」編集発行人)

佳作44 産まない。産みます!産むとき%産めば?(産め) 早川柚香(岐阜県)
佳作43 彼岸花クローンクローンクローン 谷沢けい子(新潟県)
佳作42 欠けているフクシマ産のチョコレート 西沢葉火(長野県)
佳作41 桃の産毛を語り合う時間給 笹重耕三(広島県)
佳作40 和牛ですから日本語がわかります 岡本 聡(石川県)
佳作39 産土をよろしく銀のすべり台 妹尾 凛(秋田県)
佳作38 鬣も産毛もなくてつつがなし いわさき楊子(熊本県)
佳作37 産経新聞で包むほうれん草 中山恵子(愛知県)
佳作36 ツキサエル長き鶏舎に一万羽 柳本惠子(奈良県)
佳作35 遠い日の朝マシュマロを産みました 斉尾くにこ(鳥取県)
佳作34 日本産林檎の山は静かなり 青砥和子(愛知県)
佳作33 九条の産毛を剃った理髪店 松木慎吾(愛媛県)
佳作32 お静かにもうすぐ天使おりてくる 芝岡かんえもん(神奈川県)
佳作31 産直でバカ売れしてる僕の嘘 ひとは(青森県)
佳作30 流氷りゅうひょう産科の人がやってくる 澤野優美子(北海道)
佳作29 玉子ポッコン…お後がよろしいようで 奈良一艘(青森県)
佳作28 これからは打楽器だけを産むつもり 小沢 史(東京都)
佳作27 羽毛布団わたしの家のウクライナ にじの真美(青森県)
佳作26 はいごめんやっしゃと島を産み落とす 峯裕見子(滋賀県)
佳作25 この次に産まれてくる時のリスト みつ木もも花(福井県)
佳作24 ほがらかな朝を産みたくなりました 佐々木智恵子(秋田県)
佳作23 PLEEASE 紅天女 REBOOORN 河野潤々(北海道)
佳作22 産立の祝いに香る蘭奢待 山内房子(愛媛県)
佳作21 持てあますアンティパストの生たまご 須藤しんのすけ(青森県)
佳作20 ラの音はとてもノルウェー産である 吉松澄子(愛媛県)
佳作19 玉虫厨子の産声ff 笹田かなえ(青森県)
佳作18 百年後もいちど産んでくれますか 野邊富優葉(埼玉県)
佳作17 ジュピターをえくぼの端で産んでみる 落合魯忠(北海道)
佳作16 蛇が蛇産むおかしくはないけれど 浅井ゆず(大阪府)
佳作15 あきらめたころに九月の声で産む はるのあきこ(東京都)
佳作14 好きになる枇杷をきゅるんと産むように 北村幸子(滋賀県)
佳作13 地産地消うちは大阪出られへん 岸井ふさゑ(大阪府)
佳作12 無産オタクはねるねるねるねのね 明名 蝶(愛知県)
佳作11 名古屋産ういろうを、ああ丸かぶり 大山ありる(兵庫県)
佳作10 午前二時の予定ボクたちの産卵 大内せつ子(愛媛県)
佳作09 産だった馬鹿だった砂利道だった 田中 薫(青森県)
佳作08 ガチャガチャポン産まれて直ぐの名前ポン 三好光明(愛知県)
佳作07 二丁目のらくだまあるく産む らくだ 雨森茂喜(大阪府)
佳作06 りんどうに産みつけたのはろばの耳 筏井加代子(兵庫県)
佳作05 蝶を産む約束だけは守るから 米山明日歌(静岡県)
佳作04 産まれた意味もあたためますかコンビニで 小野善江(高知県)
佳作03 ポポロンに産まれなさいと言われたの 市井美春(京都府)
佳作02 こんな子を産んだ記憶のない大豆 蟹口和枝(京都府)
佳作01 お産婆さんのおうちがあった村はずれ 熊谷冬鼓(青森県)
   
秀逸5 流星の産み方龍の捉え方 宮井いずみ(大阪府)
秀逸4 海馬にて黄色の産着畳んでる 岩根彰子(京都府)
秀逸3 産卵の途中なんども笑ったわ 柴田美都(福岡県)
秀逸2 難産に効くはずだったイルカショー 水城鉄茶(茨城県)
秀逸1 摩周湖を産んだ記憶はございません 飯島章友(東京都)
   
特選 もう無性にキリン産みたくてたまらん 雨森茂喜(大阪府)

選 評


 もう無性にキリン産みたくてたまらん

キリンを産みたくてたまらないというはどういう心のありようなのだろうか。まさか、あんなに首の長い大人のキリンだったらたいへんなのに、と余計な想像をして心配をする。少なくても赤ちゃんのキリンだろうとまた勝手に安心する。それでも、わかるとはとうてい言いがたい。しかし、自分の中にも自分で理解できないものがいっぱいある。人はそれぞれに、いつでも、ときどき、たまたま、そういうわけのわからないものを抱えながら生きている。そんな心情を「たまらん」と一気に畳みかけているのが魅力だった。

 摩周湖を産んだ記憶はございません

「記憶はございません」は古今東西の政治家や官僚がよくもまあ言えるものだと思う常套セリフである。大事なことをうやむやにして、隠している。もちろん、私にも記憶にないことはあるが、そんなものは微々たるもの体制に影響は与えない。それにしても、「摩周湖を産んだ記憶」とは大きく出たものである。大胆に不敵に誰にも迷惑をかけずにおかしなことを言っている。

 難産に効くはずだったイルカショー

「効くはずだった」がポイント。効いたとは言っていない。効かなかっただろう。なにに効くのかが謎である。

 産卵の途中何度も笑ったわ
 海馬にて黄色の産着畳んでる
 流星の産み方龍の捉え方


「産」という題は難しいと思った。日常にがっちり根ざしている言葉をどこへどこまで連れ出していけるのか、腕の見せどころである。常識からすっかりとしっかりと外れて、あたりまえじゃないものをさもあたりまえのような顔をして、しらっと差し出す。その手つきのあっけらかんさ、語りのナンセンスさが際立った川柳を選んだ。

広瀬ちえみ 選(ひろせちえみ/宮城県/「What's」編集発行人)

佳作44 根っからの津軽人ですヤーヤドー 稲見則彦(青森県)
佳作43 ポポロンに産まれなさいと言われたの 市井美春(京都府)
佳作42 スペシャルを産んでみました  さぁどうぞ 能登和子(大阪府)
佳作41 産土をよろしく銀のすべり台 妹尾 凛(秋田県)
佳作40 産経新聞で包むほうれん草 中山恵子(愛知県)
佳作39 玉子ポッコン…お後がよろしいようで 奈良一艘(青森県)
佳作38 これからは打楽器だけを産むつもり 小沢 史(東京都)
佳作37 ペラペラに生きる純国産の紙 藤井智史(岡山県)
佳作36 行間に産んだ卵に聞いてみる 山本知佳子(京都府)
佳作35 そういえば産んだ覚えがあるような 吉松澄子(愛媛県)
佳作34 こんな子を産んだ記憶のない大豆 蟹口和枝(京都府)
佳作33 モロッコで蛇を産んだという噂 黒田弥生(兵庫県)
佳作32 産卵の途中なんども笑ったわ 柴田美都(福岡県)
佳作31 羽毛布団わたしの家のウクライナ にじの真美(青森県)
佳作30 連結をはずせば雪を産む合図 小沢 史(東京都)
佳作29 むらさきを産みたかったのどうしても 妹尾 凛(秋田県)
佳作28 綿雲を産んでたっぷり添い寝する 今村美根子(愛知県)
佳作27 お静かにもうすぐ天使おりてくる 芝岡かんえもん(神奈川県)
佳作26 地産地消リンゴ旅に出たくなる 今村美根子(愛知県)
佳作25 細胞は分裂のたびソをならす 四ツ屋いずみ(北海道)
佳作24 ため息もおならも産んだことにする まみどり(青森県)
佳作23 今温めてます2つ目の地球 和田洋子(京都府)
佳作22 和牛ですから日本語がわかります 岡本 聡(石川県)
佳作21 遠い日の朝マシュマロを産みました 斉尾くにこ(鳥取県)
佳作20 産声はニホンオオカミだったのよ 守田啓子(青森県)
佳作19 午前二時の予定ボクたちの産卵 大内せつ子(愛媛県)
佳作18 ラの音はとてもノルウェー産である 吉松澄子(愛媛県)
佳作17 セーター編むように星を産むように はるのあきこ(東京都)
佳作16 この次に産まれてくる時のリスト みつ木もも花(福井県)
佳作15 そのあとを産んでおくれよ鉄塔よ 尾崎良仁(千葉県)
佳作14 はいごめんやっしゃと島を産み落とす 峯裕見子(滋賀県)
佳作13 今温めてます2つ目の地球 和田洋子(京都府)
佳作12 ほんわかとボウフラ産んで黄昏る 酒井暁美(福井県)
佳作11 身に覚えない産休を取らされる 村山浩吉(愛媛県)
佳作10 仙人掌はどうも孕んでいるようだ 蟹口和枝(京都府)
佳作09 産まれた意味もあたためますかコンビニで 小野善江(高知県)
佳作08 むらさきはジャズの間合に産まれます ひとり静(奈良県)
佳作07 好評につきホメコトバ増産中 佐々木智恵子(秋田県)
佳作06 レッスン1正しい卵の選び方 浪越靖政(北海道)
佳作05 百年後もいちど産んでくれますか 野邊富優葉(埼玉県)
佳作04 玉虫厨子の産声ff 笹田かなえ(青森県)
佳作03 蛇が蛇産むおかしくはないけれど 浅井ゆず(大阪府)
佳作02 ほがらかな朝を産みたくなりました 佐々木智恵子(秋田県)
佳作01 パン粉つけ代理出産したらしい 村山浩吉(愛媛県)
   
秀逸5 母さんを産んだらあたしどうしよう 尾崎良仁(千葉県)
秀逸4 島二つ産んで戦い真っ最中 まきこ(青森県)
秀逸3 どこ産の蜆か歌声で分かる 北村幸子(滋賀県)
秀逸2 もう無性にキリン産みたくてたまらん 雨森茂喜(大阪府)
秀逸1 摩周湖を産んだ記憶はございません 飯島章友(東京都)
   
特選 出産に立ち会っているタンバリン みつ木もも花(福井県)

 

選 評

 選んだ作品のなかに何だろうと不思議な感覚にさせられた言葉があった。「むらさき」がふたつ。それから「ソ」と「ラ」の音。

 むらさきを産みたかったのどうしても
 むらさきはジャズの間合に産まれます


 「むらさき」が産まれるとはどんなイメージなんだろう。ジャズには不案内だが、音楽を聴いていて、ある瞬間えも言われぬメロディーに出会うことがある。それが「むらさき」。
 このふたつに共通するのは「やさしさ」というか、産まれるときの「根源」のようなものだと思った。産むということは決心することであり、それは掛けでもある。その心情が「むらさき」という言葉で表現された。

 細胞は分裂のたびソをならす
 ラの音はとてもノルウェー産である


 これらもまた不思議な作品だ。「ソ」は「ソソソ」。一方「ラ」は「ラー」とのびる音だと思った。だからなに?だ。だけど選ばせてしまう魅力があった。

 秀逸4の〈もう無性にキリン産みたくてたまらん〉の「キリン」、秀逸5の〈摩周湖を産んだ記憶はございません〉の「摩周湖」、特選の〈出産に立ち会っているタンバリン〉の「タンバリン」、これら一語だけの斡旋で世界をひろげていると感じた。一語の力をあなどってはいけないと思いしらされた。この三作品でどれを特選にするか非常に迷った。
 「キリン」と「摩周湖」は抽象的で、読み手を遊ばせてくれるが、先に進めない一線がある。それに比べて「タンバリン」は抽象的でもあるが伝達力をも持っている。出産の喜びと不安を抱えながら待ちこがれているタンバリン。やがて鳴り響くであろうベルの音をまでも想像させてくれた。

中前棋人 選(なかまえ きじん/静岡県・第26回杉野十佐一賞受賞)

佳作44 ハートから産み落としてた桜餅 芝岡かんえもん(神奈川県)
佳作43 セーター編むように星を産むように はるのあきこ(東京都)
佳作42 玉子ポッコン…お後がよろしいようで 奈良一艘(青森県)
佳作41 仙人掌はどうも孕んでいるようだ 蟹口和枝(京都府)
佳作40 たのしくてくるしくてなおペンをもつ 大谷のり子(滋賀県)
佳作39 スペシャルを産んでみました  さぁどうぞ 能登和子(大阪府)
佳作38 これからは打楽器だけを産むつもり 小沢 史(東京都)
佳作37 産まれたくなかった 一度だけ言った 赤石ゆう(秋田県)
佳作36 産道を抜けてくジェットコースター 山内房子(愛媛県)
佳作35 ポポロンに産まれなさいと言われたの 市井美春(京都府)
佳作34 地球青くまあるく産んでくれたのに 滋野さち(青森県)
佳作33 産立の祝いに香る蘭奢待 山内房子(愛媛県)
佳作32 海が波打つたび満月が産まれ 平尾正人(鳥取県)
佳作31 産道は花であふれているかしら 柴田美都(福岡県)
佳作30 バーボンが産み落としたの薬指 大内せつ子(愛媛県)
佳作29 産まれた意味もあたためますかコンビニで 小野善江(高知県)
佳作28 出不精を産直市に出してみる 笹重耕三(広島県)
佳作27 遡上するシシャモとラ・クンパルシータ 石橋芳山(島根県)
佳作26 摩周湖を産んだ記憶はございません 飯島章友(東京都)
佳作25 産声は「おれにまかせておけ」だった 丸山 進(愛知県)
佳作24 二丁目のらくだまあるく産む らくだ 雨森茂喜(大阪府)
佳作23 今温めてます2つ目の地球 和田洋子(京都府)
佳作22 蝶を産む約束だけは守るから 米山明日歌(静岡県)
佳作21 ため息もおならも産んだことにする まみどり(青森県)
佳作20 にわとりが産みにわとりを産む卵 西山竹里(京都府)
佳作19 産だった馬鹿だった砂利道だった 田中 薫(青森県)
佳作18 産神の足踏み麦を踏んでいる 山口亜都子(三重県)
佳作17 はいごめんやっしゃと島を産み落とす 峯裕見子(滋賀県)
佳作16 立て膝のママの産道から見る夕陽 大野美恵(高知県)
佳作15 エロチックに産毛我慢などしても 石橋芳山(島根県)
佳作14 子供食堂明日の天才きっといる 村井規子(青森県)
佳作13 朝ごとに産声あげる目玉焼 中島順子(滋賀県)
佳作12 地産地消うちは大阪出られへん 岸井ふさゑ(大阪府)
佳作11 やっぱりを何度も産んだ天の川 米山明日歌(静岡県)
佳作10 「ポイントを付与!!」で産科に誘われる 三浦蒼鬼(青森県)
佳作09 むらさきはジャズの間合に産まれます ひとり静(奈良県)
佳作08 あなたには産地偽装をした乳房 岡本 朧(千葉県)
佳作07 止めないで 産土神になるところ 吉田吹喜(青森県)
佳作06 むらさきを産みたかったのどうしても 妹尾 凛(秋田県)
佳作05 地産地消リンゴ旅に出たくなる 今村美根子(愛知県)
佳作04 産道の出口でもらう星三つ 吉原美佐(愛媛県)
佳作03 パン粉つけ代理出産したらしい 村山浩吉(愛媛県)
佳作02 改札口今日も産んでるエキストラ 佐藤春子(秋田県)
佳作01 産廃に問われる人間のど真ん中 川口利江(滋賀県)
 
秀逸5 ベルトコンベアに急かされイキんでる きさらぎ彼句吾(青森県)
秀逸4 犯人はいちじくの葉の落とし胤 奈良一艘(青森県)
秀逸3 産声を写真に撮って父になる 下村修(神奈川県)
秀逸2 出産に立ち会っているタンバリン みつ木もも花(福井県)
秀逸1 そのあとを産んでおくれよ鉄塔よ 尾崎良仁(千葉県)
 
特選 国葬は早産わたしはニュートラル 大黒谷サチエ(青森県)

 

選 評

 当たり前の句を作ろうと思って作る人は誰もいない。
 ただ、それを回避しようとして、川柳をことさらややこしくする必要はないと思っている。
 一般から離れていくのが川柳ではないから。
 そこを踏まえた意欲的な作品に圧倒されました。刺激を受けました。
 まさか、十佐一賞の選をすることになるとは・・・。
 頭をコツンコツンと叩きながら、みなさんの渾身の一句と向き合いました。

 秀逸1
  ベルトコンベアに急かされイキんでる


 果てどんな商品が産まれてくるのでしょうか。ポポロンかな。
 なんともリアリティーのある作品になったと思います。

 秀逸2
  犯人はいちじくの葉の落とし胤


 事は、人間のその物語は、ここから始まった。
 いちじくの葉っぱを登場させたのはお手柄だと思います。

 秀逸3
  産声を写真に撮って父になる


 男はこういう行動を通して、その実感を高めることになりますね。
 父親になって、一回り大きくなったその顔が、その絵が見えてきます。

 秀逸4
  出産に立ち会ってるタンバリン


 出産というのは大事業だと思います。
 力強い応援を得て安産は間違いありません。
 そこに立ち会えるのはそれは光栄なことだと思います。

 秀逸5
  そのあとを産んでおくれよ鉄塔よ


 少子化が止まらない。少子化が少子化を産んでいる。
 その詮索はあれこれしない。この句は、男としてもっと動け!励めという一喝と受け止めていただきました。

 特選
  国葬は早産わたしはニュートラル


 国葬は政治的なその思惑があって産まれた。あまりにも事を急いで英雄を作ってしまった。右にシフトして日本の体力を落とすことになるこの路線は、これからも問われ続けることになる。
 そのギヤをニュートラルに戻したほうがいい。
 耳を傾ける相手を、言う事を聞く相手を間違えてはいけない。

むさし 選(むさし/青森県・おかじょうき川柳社代表)

佳作44 駄馬ばかり産んで柔らかい土 河村啓子(京都府)
佳作43 灰色を産みつくし雨の灯台 八上桐子(兵庫県)
佳作42 満月に抱かれ人魚を産む海月 佐藤寿見子(青森県)
佳作41 割り算の余りがわたくしの遺産 三浦蒼鬼(青森県)
佳作40 身に覚えない産休を取らされる 村山浩吉(愛媛県)
佳作39 男の子に産まれ女に脱皮する 佐藤雅秀(青森県)
佳作38 戦場に座産土偶の息みかな 守田啓子(青森県)
佳作37 産道は閉鎖しました靴一つ 酒井暁美(福井県)
佳作36 好きになる枇杷をきゅるんと産むように 北村幸子(滋賀県)
佳作35 蝶を産む約束だけは守るから 米山明日歌(静岡県)
佳作34 白桃の産毛ほしがるサクランボ 加藤ゆみ子(神奈川県)
佳作33 今温めてます2つ目の地球 和田洋子(京都府)
佳作32 産業廃棄物だってえらそうに 𠮷田州花(青森県)
佳作31 ざらざらと十一月の夢精卵 日下部敦世(千葉県)
佳作30 何一つ産めないがらんどうになる 平尾正人(鳥取県)
佳作29 これからは打楽器だけを産むつもり 小沢 史(東京都)
佳作28 産んだ子のそれぞれにある∞ 石倉多美子(石川県)
佳作27 緑から生まれた赤に阻まれる 葉 閑女(青森県)
佳作26 仙人掌はどうも孕んでいるようだ 蟹口和枝(京都府)
佳作25 セーター編むように星を産むように はるのあきこ(東京都)
佳作24 産卵は満月深夜海の中 大西 進(愛媛県)
佳作23 産道を通った時に見えた宇宙(そら) 高木まあこ(青森県)
佳作22 はいごめんやっしゃと島を産み落とす 峯裕見子(滋賀県)
佳作21 ふわふわの夢を包んでいる産毛 竹尾佳代子(三重県)
佳作20 流星の産み方龍の捉え方 宮井いずみ(大阪府)
佳作19 難産に効くはずだったイルカショー 水城鉄茶(茨城県)
佳作18 あなたには産地偽装をした乳房 岡本 朧(千葉県)
佳作17 うれしくてかなしくて産む青い水 能登和子(大阪府)
佳作16 摩周湖を産んだ記憶はございません 飯島章友(東京都)
佳作15 産経新聞で包むほうれん草 中山恵子(愛知県)
佳作14 どこ産の蜆か歌声で分かる 北村幸子(滋賀県)
佳作13 産卵の途中なんども笑ったわ 柴田美都(福岡県)
佳作12 産みたての卵に夢は語るまい 高杉 力(大阪府)
佳作11 遠い日の朝マシュマロを産みました 斉尾くにこ(鳥取県)
佳作10 You Win! You Win! 搾乳器のリズム 湊 圭伍(愛媛県)
佳作09 無事故無違反そのまま母になりました 斉尾くにこ(鳥取県)
佳作08 産んでたらカラマーゾフは読んでない 達毘古(富山県)
佳作07 産声は回転ドアを出ていった 青砥和子(愛知県)
佳作06 寒いのよ早口ことば産んでから 宮井いずみ(大阪府)
佳作05 九条の産毛を剃った理髪店 松木慎吾(愛媛県)
佳作04 むらさきはジャズの間合に産まれます ひとり静(奈良県)
佳作03 産道は花であふれているかしら 柴田美都(福岡県)
佳作02 火を握る月を夜通し抱いた手で 須藤しんのすけ(青森県)
佳作01 むらさきを産みたかったのどうしても 妹尾 凛(秋田県)
 
秀逸5 残照へ卵を一つ産み落とす 笠嶋恵美子(大阪府)
秀逸4 百年後もいちど産んでくれますか 野邊富優葉(埼玉県)
秀逸3 芒野に呼ばれて月を産みにゆく 徳長怜(徳島県)
秀逸2 ジュピターをえくぼの端で産んでみる 落合魯忠(北海道)
秀逸1 母さんを産んだらあたしどうしよう 尾崎良仁(千葉県)
 
特選 ほがらかな朝を産みたくなりました 佐々木智恵子(秋田県)

 

選 評

 第27回杉野十佐一賞にたくさんのご応募をいただきました。
 前回の応募数は320句でしたが、お陰様で、今回はそれを2句超え322句になりました(笑)
 応募者が1人増えたのです。
 若者がスマホのゲームに夢中で川柳を振り向きもしない今の世の中、応募者が1人でも増えてくれることは主催者にとって誠にありがたく、うれしいことです。
 この場をお借りし深く感謝申しあげます。

 選句をしているうちに、新型コロナウイルス感染が第8波に入ったようです。
 おかじょうき川柳社を応援して下さっている方々にも感染者がいるのではないでしょうか。
 コロナウイルスが川柳界にどんな影響を及ぼすのか配です。
 いい方への影響であれば大歓迎なのですが…。

 さて、今回の題「産」ですが、柳社のメンバー数人が集まって議論をしながら決めて、その中に私もいたのですが、どうして「産」になったのか今はもう思い出せません。
 ではありますが、結果としていろんなタイプの刺激的な「産」が集まってよかったと思います。
 桜餅や、星や打楽器など思いがけないいろんなものを産んだり、何かが生まれたり、産めなかったりで、楽しみながら1句ずつ対面しました。
 ではありますが、いざ入選にするか落選にするかとなると悩みます。
 結果、最終段階で次の6句が上位に残り、今度はどの句を特選にするかで悩みました。

 ①百年後もいちど産んでくれますか
 ②芒野に呼ばれて月を産みにゆく
 ③ほがらかな朝を産みたくなりました
 ④母さんを産んだらあたしどうしよう
 ⑤ジュピターをえくぼの端で産んでみる
 ⑥残照へ卵を一つ産み落とす

 そしてついに③を特選とすることにしたのです。
 新型コロナウイルスの感染拡大、いつまでも終わらないロシアのウクライナ侵攻、度重なる北朝鮮のミサイル発射など、あっちを見てもこっちを見ても暗い世界で、「ほがらかな朝を産みたくなりました」はシンプルで明るく、作者の積極的な生き方が見えてホッとする句で、多くの読者に感動を与えるものと思います。
 川柳は世の中を写す鏡です。
 ありがとうございました。